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case1 谷川靖子 〜社会人3年目

わたしは仕事をしている時間が好きだ。「経理部」という
地味なポジションで、地味に数字と向かい合う。
きっとこのまま地味に年をとって、地味にお局と呼ばれ、
「あの人は経理のプロだったね」と地味に語り継がれるんだ。
仕事が好きなら、毎日会社に行くのが楽しいだろうと
思うかもしれないけれど、それはちがう。

「ちょっと今日見た? あのグリーンの爪っ!」
「亜衣でしょ? いくら流行ってるからって、会社ではどうよ?」
……また始ったよ。入社5年目のアヤコ先輩とユキ先輩と
食べる昼休みには、必ず誰かの嫌な話題が出る。
わたしはこの時間が嫌いだ。
亜衣はわたしの同期で、結構仲もいい。
先輩たちもそれは知ってるはずなのに。
話題に出るのは亜衣だけではなく、隣の部長、新人の女の子、
ヤクルトの叔母ちゃんまで広がる。
でも当人の前では、仲良しっぽく会話ができる
彼女たちを見ていると「女って怖いなぁ」とつくづく感じる。

「で、あんたはどうするの?」
ユキ先輩につつかれて、はっと我に返る。
「はぁ……」
「聞いてなかったんでしょう? コンパよ! コンパ!!」
月に一度はこの話題が出るが、
いつもわたしの答えは決まっている。
「そういうの、苦手なんで……」
アヤコ先輩がすかさず突っ込んでくる。
「却下。今回は25歳の娘が来るって、男釣ったんだから、
あんたは絶対に来なきゃダメ」
「でも……」
「でも何? わたしたちを納得させる理由があるの?」
アヤコ先輩は自信満々に聞いてくる。
「苦手で……」わたしは言う。
「苦手かどうかはコンパ未経験じゃわかんないでしょ?」
はいっ! アヤコ先輩は正しい!!
……じつは理由は他にもある。

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