共感性羞恥心とは? 原因と感じやすい人の特徴&克服方法
共感性羞恥とは、他人が恥をかいたり失敗したりする姿を見て、自分まで恥ずかしくなること。そんな共感性羞恥心のチェックリスト例を紹介。原因や克服法について心理カウンセラーの高見綾さんが解説します。
他人の言動を見て恥ずかしいと感じることってありませんか?
近年、『マツコ&有吉の怒りの新党』というテレビ番組で「共感性羞恥」が取り上げられて話題になりました。
また最近では、女子高生シンガーAdoさんの楽曲『うっせぇわ』の歌詞を見て、何だか恥ずかしい気持ちになる現象を「共感性羞恥」であると捉える動きもありましたよね。
今回は、そんな共感性羞恥について、その原因と克服方法を紹介します。
共感性羞恥心とは?
共感性羞恥心とは、他人が恥をかいたり、非難されたりするなど、恥ずかしいと思う行動をしているのを見た時に、まるで自分のことのように恥ずかしくなってしまう心理を言います。読み方は「きょうかんせいしゅうちしん」です。
そもそも「恥ずかしい」とは、誰かに見られているという人目を意識した感情です。失敗や過失、自分の欠点など、体裁が悪いと感じることや、自分の思う「普通」とは異なることに対して湧き上がってきます。
心理学的には、1987年にMillerが発表した論文で、このような心理現象を英語で「empathic embarrassment」(日本語訳:共感性羞恥)と定義したことから始まりました。近年になり日本でもいくつか論文が発表されており、羞恥感情と共感性の関係などについてさまざまな研究がなされています。
なお、共感性羞恥は、心理的距離の近い人(特に家族)に対して最もよく感じるものであるとされています。
共感性羞恥の具体例
日常の具体例から、共感性羞恥のことをもう少し理解していきましょう。
例えば、お笑い番組で、芸人がすべってしまった時、いたたまれない気持ちになってしまうことが分かりやすい例です。
他にも、アニメや映画、ドラマを見ていて、登場人物が恥ずかしいセリフを言いそうだ、恥をかきそうだというシーンが「そろそろ来る……」と感じた時、逃げたい気持ちになってチャンネルを変えてしまうなども共感性羞恥に該当します。
他にもこんな例があります。自身も経験がないか、チェックしてみましょう。
1.ハラハラドキドキしてしまうドッキリ番組が苦手
2.友達が怒られている場面を見て逃げたくなった
3.ドラマの告白シーンを見ると恥ずかしくなる
4.作品の登場人物が恥をかきそうなシーンがあると、目を背けてしまう
5.素人が歌番組で歌っているのを見るとそわそわする
6.芸人がスベッてしまったのを見て、いたたまれない気持ちになった
7.混雑している道で派手に転んだ人を見かけたら逃げ出したくなった
8.同僚のプレゼンを見ていると自分のことのようにドキドキしてしまう
9.誰かの失敗に対して、周りは笑っていても自分は全く笑えない時がある
10.レジで財布を忘れたことに気付いた人を見た時、かわいそうで目を背けてしまった
共感性羞恥を感じるメリットはある?
他人の恥や失敗を見て一緒に恥ずかしくなるなんて、デメリットの多そうな感情にも思えますよね。ですが、共感性羞恥にはこんなメリットもあります。
共感性羞恥を受けがちな人は、共感力が高く相手の気持ちを汲み取れる長所を持っています。性格的に穏やかで優しい面があり、どのようなことでも繊細に感じ取れる感性の持ち主です。
また、恥ずかしいという感情を抱くことによって、望ましくない行動を選択せずに済むというメリットもあります。
したがって、この感情を抱くのは、必ずしも悪いことではないのです。
共感性羞恥の原因
では、自分のことではないのに、なぜ恥ずかしくていたたまれない気持ちになるのでしょうか。その原因を深堀りしていきましょう。
(1)つい恥を想定してしまう
恥に対する感受性が豊かなタイプだと、さまざまな状況から、「恥」を想定してしまうことが原因の1つです。
劣等感が強いと、恥ずかしいと感じることも増える傾向にあります。自分の考える「普通」の枠外に出てしまっている時に、特に恥ずかしいと感じてしまうのです。
(2)共感力が高い
共感力が高いため、他人に起きた出来事であっても、あたかも自分事のように感じてしまう人もいます。
「もし自分があの立場だったら……」と感情移入し、自分を関係付けて考えるため、共感性羞恥を抱きやすくなるのです。
(3)過去に同じシーンで恥をかいた経験がある
過去に恥ずかしい思いをしたことがあると、その経験が心の傷になっているケースがあります。
すると、他人が同じ失敗をしそうなシーンを見た時に、過去の経験が思い出され、当時感じた嫌な感覚と結び付いてしまうのです。
共感性羞恥を受けやすい人の特徴
以上、共感性羞恥を抱く原因について挙げてきました。
共感性が高いなど、中でもこの共感性羞恥を受けやすい人がいます。あなたもそんなタイプでしょうか? 続いて、共感性羞恥を抱きやすい人の特徴をひも解いていきます。
(1)「失敗したくない」という気持ちが強い人
失敗して恥をかくことに、強い嫌悪感と拒否感を抱くタイプの人です。
失敗することで傷付きたくないと思っており、悪い評価を受けることを恐れています。
(2)人目を気にする人
他者の目を意識している人は、恥ずかしいという感情を抱きやすくなります。自分がどう思うかよりも、人からどう見られるかに敏感です。
(3)繊細な感性を持っている人
感受性が強く、さまざまことを感じやすい特徴がある人もこれに該当します。傷付きやすく、繊細な感性の持ち主です。
(4)自分と他人との境界線が薄い人
他人は他人、自分は自分という感覚が薄く、他人の気持ちに敏感で、強く影響を受ける傾向がある人です。
共感力も高いため、思いやりの気持ちがあり優しい性格が多いでしょう。

あなたの共感性羞恥心の強さを診断します。
共感性羞恥を抱きやすい人の克服法
共感性羞恥には、いくつかのメリットがあると言われても、その感情をうまく扱えず悩む人もいることでしょう。
他人の行動に対してまでどうしようもない恥ずかしさを感じてしまう場合、どう克服すればいいのでしょうか。
(1)自分の感じ方を受け入れる
自分だけ共感性羞恥を抱いているのかと思うと、「自分が変なのかな?」と思ってしまうかもしれませんが、感じ方には個人差があるものと理解しましょう。
「自分はこういうことに対して恥ずかしいと感じるんだな」と受け入れてみるだけでも、気持ちが軽くなりますよ。
(2)他人と自分の間に境界線を引く
共感性羞恥が過度に起きないよう、他人との間に適切な距離を取るようにすると良いですね。
イメージの中で、他人と自分との間にピッと境界線を引くことで、「これは自分に起きた話ではない」と言い聞かせてみましょう。
(3)過去の恥ずかしい体験を受け入れる
過去に恥ずかしい体験をしたことが影響を及ぼしているケースもあります。
その場合は、当時の自分を思い出してみて、「恥ずかしいって感じたよね、でも大丈夫だよ」と語りかけて受け入れてみてください。
(4)ちょっとした失敗は笑い話にする
忘れ物をしたなど、ちょっとした失敗があれば、「今日財布忘れちゃった! やだぁ~」と笑い話にして、周りに打ち明けてみましょう。
失敗談をオープンにしてみると、案外恥ずかしいことでもないかもしれないと感じられるはずです。
このように、失敗を「恥ずかしいフォルダ」ではなく、「笑い話のフォルダ」に振り分けられれば、同様の失敗をする他人に対しても共感性羞恥は感じづらくなるでしょう。
共感性羞恥はまだまだ研究途中の心理
共感性羞恥はまだまだ研究途中の心理です。
他人を見て恥ずかしくなってしまう心理を感じている人は、案外たくさんいるのではないでしょうか。
恥ずかしさの感じ方には個人差があるので、「私はこういう場面では恥ずかしいって思うんだな」と冷静に受け入れてみましょう。失敗を受け入れてオープンにしていくことができれば、少しずつ感じ方や向き合い方が変わってくるかもしれません。
(高見綾)
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