女性器には、敏感な性感帯が複数あるといわれています。クリトリス、Gスポット、そして最も謎めいているのがポルチオでしょう。
言葉は聞いたことがあっても、どこに存在しているどんなものなのかを説明できる人は少ないのではないでしょうか。
そこで産婦人科医の高橋怜奈さんに、ポルチオとは何か、本当に中イキできるものなのかを聞いてみました。
■ポルチオとは
体の表面に露出している男性器と違い、女性の内性器は目で見て確認できません。その見えない部分、腟の最も奥に位置すると言われるのがポルチオです。
「本当にあるのかどうかも分からない」と思っている人も少なくないようですが、実は産婦人科医にとっては「おなじみ」の場所なのです。
◇ポルチオって何? どこにあるの?
ポルチオは、医学的には^「子宮腟部(しきゅうちつぶ)」^と言われる場所です(図の赤丸の部分)。子宮の最も下のほうにあり、腟内に露出した部分を言います。
女性には、^子宮頸がん検診の時に、器具が触れ、細胞をこすり取られる場所^という説明が分かりやすいのではないでしょうか。
◇ポルチオの形
産婦人科医は検診や診察の時、クスコという道具を使って腟を広げてポルチオを目で確認します。^見た目はピンポン玉のように見えます。^
Gスポットはその実態がまだ明らかでないのに比べ、ポルチオは「存在する」と断言できる部位です。
◇位置や大きさ
^ポルチオがある位置には個人差があります。^それは腟の長さが人それぞれ違うからです。
先述のクスコという道具をごく浅くしか挿れていないのにポルチオが見える人もいれば、深く挿入して初めて確認できる人もいます。^大きさも人によってまちまち^です。
さらに、子宮は本来ならおなか側に向かって軽く傾斜していますが、それが後ろに傾いている「子宮後屈」という状態の人もいます。それによってポルチオの向きも変わります。
■ポルチオは自分で確認できる?
先述した通り、^腟の長さによってポルチオの位置が変わるため一概には言えませんが、自分で指を挿入して確認することは可能^です。
実際に、自身やパートナーの指でポルチオと知らずタッチし、「できものがある?」と不安になって病院に来られる人もいます。
腟が長い人は、指ではすぐには届かないこともありますが、触れるために無理をする必要はありません。
◇ポルチオは触っても大丈夫?
ポルチオを触っても特に問題はありません。^この部位には痛覚があまりないため、直接触れても痛みはほぼない^でしょう。
しかし痛みがないからといって、いきなり強く触れていいわけではありません。
^たとえポルチオで痛みを感じなかったとしても、そこに到達するまでの間に腟の中で摩擦が起きると、それが不快感につながります。^
また、ポルチオを強く押し上げると子宮が動くため、子宮内膜症などの病気がある人は痛みを感じることもあります。
上記の理由から、もし触るのであれば慎重に触れるようにしてください。
■ポルチオは性感帯? 触ると中イキするって本当?
適切な刺激によって、ポルチオでオーガズムに達することができる人もいると言われています。実際、強い快感を得たことがあるという話はよく聞きます。
しかしポルチオは腟の最も奥のほうにあるため、そこにアプローチするということは腟全体を刺激することになります。
産婦人科でもポルチオを触診するためにはクスコという専用の道具を使用しています。それほど奥深いところにある部位なので、性行為の際にポルチオのみを刺激することはほぼ不可能でしょう。
ゆえに、本当にポルチオでのオーガズムなのか、Gスポットでのオーガズムなのか。はたまた体をすり合わせることでクリトリスが刺激されオーガズムを得ているのか、区別をつけることは難しく^「ポルチオだけを刺激することで中イキした」とは言い切れません。^
■他の性感帯とのオーガズムの違いはある?
クリトリスで得るオーガズムを「外イキ」、ポルチオ含め腟でのオーガズムをまとめて「中イキ」と俗に言います。中イキは外イキよりも強烈でめくるめく快感があると言われていますが、本当でしょうか。
◇外イキと中イキの快感の違い
クリトリスは、外陰や会陰、膣壁下部に分布する陰部神経に支配されているため、オーガズムに達した際(外イキした際)は、^膣の入り口あたりから外陰部全体にかけて快感が広がるような感覚^になります。
一方、ポルチオは子宮の一部であり、子宮・腟・膀胱・直腸に分布する下腹神経と骨盤内蔵神経に支配されています。これらはあまり痛みを感じる神経ではないため、ポルチオへの刺激はクリトリスのようにピンポイントで分かるものではありません。
よって、ポルチオでのオーガズム(中イキ)はクリトリスとは違い、^全身が解放されるような、ふわっとした気持ち良さ^と表現できるかもしれません。
◇クリトリスとポルチオ、どっちのオーガズムの方がすごい?
クリトリスでのオーガズムははっきりとそこでイッたと分かりますが、ポルチオについては先述したように、本当にそこでオーガズムに達したのか、はたまた他の部位でイッたのか、厳密に区別するのは難しいものです。
なので、^クリトリスとポルチオ、どちらの快感の方が強いか比べること自体ができない^でしょう。
そもそも、快感の度合いというのは身体的なものだけでなく、その日の体調や環境、相手への気持ちによっても左右されるので、比べるものでもないと思います。
部位によるオーガズムの強さにこだわるよりも、その時々の自分の満足感を大事にしたほうがいいでしょう。
■ポルチオの開発ってできる? やり方とは?
「開発」=「感じやすい体になること」だと仮定するのであれば、^「開発できるか?」の答えはイエス^です。
そして、その「開発」のためには、^どのように刺激すれば感じるかを、女性に聞くのが最も早い^と思います。女性もそれを相手に伝えられるよう、^セルフプレジャーで自分の気持ち良いポイントを把握しておくといい^でしょう。
まず、女性が自分の指やグッズでポルチオを刺激してみましょう(詳しい触り方は後述します)。
次に、パートナーへどのように刺激したら気持ちよくなれたのかを教えます。
そうして、2人で気持ちいいと感じる経験を重ねていくことで、快感を得やすくなっていくでしょう。それが「開発」につながるのではないでしょうか。
■ポルチオの触り方と注意点
ポルチオを刺激する上で、注意点があります。
ポルチオは腟の最も奥にあるため、指や男性器、あるいはプレジャーグッズを挿入する時には、女性の受け入れ体制が整っていないと苦痛を生じます。
◇(1)膣内が「濡れている」状態にする
^まずは全身へのタッチやクリトリスを愛撫して「濡れている」状態にしておく^必要があります。
それでも潤いが少なく、^入口で引っかかるような感じがあったり奥までの挿入に違和感があったりする人は、潤滑ジェルを使いましょう。^
◇(2)いきなり動かさず馴染むまで待つ
AVなどでは性器による激しいピストン運動や、指などをがしゃがしゃと出し入れすることで、ポルチオの刺激を表現することがあるようです。
演出としてオーバーにしているだけで、^現実で同じことをしてしまうと腟口が切れたり、摩擦によって腟壁に炎症を起こしたりします。^
まずは^慎重に挿入し、ゆっくり奥まで進んでから、しばらくじっとして^お互いの体が馴染むまで待ちましょう。
^いきなり動かすのではなく、性器や指の先端をポルチオに押しつけるようにして、女性が大丈夫そうであれば徐々に動きを大きくしていく^のがいいでしょう。
◇(3)どう刺激するのか声を掛ける
腟に挿れられた後の性器や指は、女性にとってどんな動きをするか予想がつかないものでもあります。それによって女性が緊張してしまうと快感は遠ざかります。
子宮頸がん検診の時も私は、「これからこんな器具が入りますよ」と女性の肌に触れ、あらかじめ伝えた上で挿入します。
^一言あるとないとでは、女性の受け入れ具合は大きく変わる^と思います。セックスの時にも、^「これからこうやって動かすね」という声掛け^をすると、女性も比較的リラックスして受け入れられるでしょう。
◇(4)女性が痛みや不快感を訴えたらすぐやめる
腟壁は神経がたくさん通っている、とてもデリケートな器官です。先述したとおりポルチオ自体には痛覚があまりありませんが、^乱暴な刺激によって周辺の腟壁で痛みを感じる可能性があります。^
また、ポルチオは刺激しすぎると気持ち悪くなることもあります。
^刺激している途中で痛みや気持ち悪さを感じたら、すぐにパートナーに伝える^こと。また、パートナー側も、^女性が痛がっていないかを確認しながら愛撫すること^を忘れないようにしましょう。
女性の中にはなかなか自分から言い出せない人がいるため、言いやすい雰囲気をつくることも大事です。
◇(5)ポルチオでオーガズムを得ることにこだわらない
ポルチオを、「刺激するとオーガズムに達する究極の性感帯」だと思っている人もいるようですが、そんなことはありません。
^時間をかけて女性が感じる刺激の仕方を探っていくと、オーガズムに達することがある「かもしれない」^ぐらいに考えておきましょう。
中イキを経験したことがあるのは、女性のなかでも少数派だと言われています。イケなくてもおかしなことではありません。
たとえポルチオでのオーガズムを得られなかったとしても、それを残念に思いながらセックスを終えるのではなく、2人で触れ合えたことに重きを置くほうが良いでしょう。
□複雑で奥深い女性の器官「ポルチオ」
高橋怜奈先生のお話をうかがうと、ポルチオはアプローチが簡単ではないため、体のことをよく知り、パートナーと一緒にコミュニケーションを重ねる必要があることが分かります。
女性のオーガズム、特に腟でのオーガズムは、複雑でとても多様。探り甲斐があるでしょう。実はそのアプローチの過程にこそ、価値があるのかもしれません。
(監修:高橋怜奈、取材・文:三浦ゆえ)
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