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産後の“抜け毛”がとまらない! 産後、薄毛になる原因と髪を戻す方法

加世田国与士

産後の薄毛対策

「産後の薄毛が心配」「出産してから髪のボリュームが減った」など、産後の薄毛に悩んでいる女性は多いのではないでしょうか? 女性にとって産後の薄毛問題は深刻ですよね。

そこで今回は、世界最大の毛髪学会で受賞歴をもつ、サラヴィオ中央研究所所長、加世田国与士博士に、産後に薄毛になる原因と、予防・対処法をお聞きしました。

産後に毛が抜ける2つの理由

―そもそもなぜ、産後に毛が抜けやすくなるのでしょうか?

加世田博士:
産後の脱毛や薄毛の主要な要因として、女性ホルモンのバランスの変化による「ヘアサイクルの乱れ」や毛根への「栄養の供給不足」があげられます。

まず、ヘアサイクルとは毛髪が約3~7年の周期で生まれ変わることで、成長期・退行期・休止期を繰り返しています。成長期が短くなったり、退行期が早まったり、休止期が長くなると、髪にハリやコシがなくなったり、脱毛や薄毛になってしまいます。

女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があり、両者とも妊娠により増加します。しかし、これらのホルモンは出産後急激に減少し、普段の量を下回ってしまうことさえあるのです。特に、エストロゲンにはヘアサイクルの成長期を保つ作用、血流を促進する作用、健康な頭皮を支えるコラーゲンの合成を促す働きがあり、髪の健康にも密接に関与しています。そのため、髪の成長にも不調が現れやすくなります。

次に、栄養供給についてです。毛髪の成長は身体の中で最も盛んで、常にたくさんの栄養を必要としています。ここで重要なのは、「栄養自体がきちんと摂れているか」と「栄養素がきちんと行き届いているか」ということ。妊娠や出産は肉体的にも精神的にも大きなストレスが生じ、食欲不振になったり、栄養バランスも偏ってしまいがち。そのうえ大きなストレスや疲れ、睡眠不足、運動不足、生活リズムの乱れが、血流を妨げてしまいます。細い毛細血管の血流が悪くなると、十分に栄養素が毛根に届かず髪の成長が妨げられるので、成長が活発な毛髪に影響が出てしまうのです。

出産前からできる「薄毛対策ケア」

産後に薄毛にならないよう、出産前からできる薄毛対策のポイントを3つ教えてもらいました。

●食事

赤ちゃんのためにもご自分のためにも栄養をしっかりと摂取する必要があります。バランスのとれた食事をとるように気を付けましょう。時には外食するなどの気分転換も良いと思います。
ティータイムを習慣に取り入れるのもリラックスできていいでしょう。

●シャンプー、リンスの選び方

シャンプーリンスの選び方

今は髪が健康でも安心せずに、予防しておくことは重要です。優しくて使用感がいいシャンプーを使う、洗髪後はしっかりとすすぐ、頭皮環境を整えるアイテムを使用するなど心がけましょう。なるべく髪への刺激を与えないよう帽子や日傘を使い、紫外線対策もお忘れなく。

●睡眠

肌の健康に睡眠が重要なことは有名ですが、頭皮は皮膚の一部なので髪の成長にとっても全く同じことが言えます。そこで意識してとりたいのが「質の高い睡眠」です。心身ともにリラックスした状態で睡眠に入るには、消化の悪いものを控えたり、安眠効果がある食材(じゃがいも、オートミール、カモミールティーなど)をとったり、就寝3時間前までに食事を済ませるなどの点に気をつけましょう。

また、就寝に向けて自律神経を整えるため、就寝前はできるだけテレビ、パソコン、スマートフォンの使用を控え部屋を暗めにしましょう。そのほか就寝1~2時間前に入浴し、徐々に体温を低くして眠りにつくなど、交感神経の働きを休めて副交感神経の働きを高めましょう。これらの行動により、睡眠ホルモン「メラトニン」が分泌され、自然な眠りが誘導されます。ちなみに、質のよい睡眠をとるには朝起きて日光を浴び、体内時計をリセットしておくことも重要なので忘れずに。

●呼吸法

呼吸法

副交感神経の働きを高めるのに「深呼吸」も有効です。そこで妊婦さんは、生まれてくる赤ちゃんのことを考えて、ゆっくり深く呼吸してみてください。自律神経が整うと消化が促進され血流も良くなるので、髪の健康はもとより、美容と健康の維持につながります。また出産前に心の準備をすることで、安心感が生まれ自律神経も整います。

薄毛になってしまったときの対処法

―予防によってある程度薄毛になるのは防げるものの、それでも薄毛になってしまった場合はどうしたらいいのでしょうか。 加世田博士にアドバイスいただきました。

加世田博士:
産後は赤ちゃん中心の生活になりますので、栄養バランスのとれた食事をとること、ストレスをためないことなどが大切です。その上で、血流促進、頭皮環境の改善、ホルモンバランスの改善に焦点を当てた産後の脱毛・薄毛の対策をご紹介します。

●血流促進

ストレスや疲労により、自律神経のバランスが崩れると、腸の働きが衰え、腸内環境が悪化します。その結果として、老廃物や毒素が血液に入り込んで血液がドロドロになったり、血管が細くなって、髪に栄養が行き渡りにくくなると言われています。

腸内環境を改善して血流を促進するためには、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を多く含むヨーグルト、味噌や納豆等の発酵食品を摂取するとよいでしょう。善玉菌を活発化させるオリゴ糖、水溶性食物繊維が豊富なハチミツ、玉ねぎ、キウイフルーツ、大根、山芋等は効果的だと言われています。不溶性食物繊維(オクラ、カボチャ、たけのこ、エリンギ、えのき、いんげん豆、あずき、アーモンドなど)も腸をキレイにしてくれるので積極的に取り入れましょう。
さらに、頭皮マッサージや入浴、適度なストレッチやエクササイズを行うことで、血行を促すとともに、ストレスをためないように心がけましょう。

●頭皮環境の改善

頭皮環境を改善し、健康な髪の成長を促す良質タンパク質、ビタミンC、鉄分等の栄養素を摂取するとよいでしょう。良質タンパク質を多く含む食品としては、魚、卵、大豆、鶏肉など。
ビタミンCを多く含むものは、かんきつ類、アセロラ、柿、イチゴ等の果物やピーマン、ブロッコリー、ゴーヤ等の野菜があります。鉄分を豊富に含むレバー、貝類、ひじき、青のり等をとることも心がけましょう。また、食べるタイミングや回数も大事です。大切な赤ちゃんのためにも、規則正しくしっかりと食事をとりましょう。

●ホルモンバランスの改善

ホルモンバランスの改善には、イソフラボンの摂取が良いと言われています。イソフラボンは女性ホルモンと同じような働きをするため、イソフラボンを多く含む豆由来の食品を適度にとることでホルモンバランスの急激な変化を抑えて、脱毛の軽減が期待できます。ただし、とりすぎは禁物です。内閣府のガイドラインによると、イソフラボンの1日の摂取量には上限が設けられています(大豆イソフラボンアグリコンとして70~75mg/日)。豆腐では約350g、納豆では約100g、豆乳では約280gを一日の目安として摂取しましょう。
※イソフラボンの含有量はメーカーによって異なるので食べる前にチェックしましょう

●頭皮にやさしいヘアケア商品の活用

積極的に改善を行いたい場合は、頭皮に負担をかけないシャンプーを用いた洗髪や頭皮環境を改善し、発毛・育毛を促進するアイテムを活用するといいでしょう。ただし、ヘアケア商品の中には独特の香りやアルコール、防腐剤など、刺激が強い化学薬品を含むものがあるので、注意が必要です。特に頭皮が敏感な妊娠前後には、天然由来成分の製品など優しくて安全な商品を使用することが重要です。脱毛の度合いがひどい場合には、頭皮疾患の疑いもあるので、医師の助言を受けるとよいでしょう。

●赤ちゃんとの触れ合い

赤ちゃんとのスキンシップは、オキシトシンの分泌を促します。オキシトシンは、ストレスを軽減したり、癒やしや心の充実感をもたらす効果があり、「ハッピーホルモン」「愛情ホルモン」と呼ばれています。出産・育児は大変ですが、その時にしか得られない喜びもあると思います。パートナーや家族にも積極的に手伝ってもらって、大切な赤ちゃんとたくさん触れ合い、ハッピーホルモンで満たされましょう。

薄毛はほっといても治る? 髪の毛が戻るまでの期間は?

―薄毛になってしまったら気になるのが、髪の毛が元に戻るまでの期間です。上記の対策やケアをおこなった場合、どのくらいで髪の毛が戻るのでしょうか?

加世田博士:
個人差はありますが、刺激がないアイテムを用いるなど適切なケアができていれば、数カ月で髪の健康が戻ることが多いようです。そこで、まずは頭皮の状態を整えましょう。頭皮環境に改善が感じられれば、薄毛改善の成功はもう目の前です。

まとめ

おしゃれが楽しめないだけでなく、一気に老けた外見にしてしまう、「産後の薄毛問題」。予防したにも関わらず、薄毛になってしまった方、出産を終えて薄毛に悩まれているママさんたちは、ぜひ今回のアドバイスを実践してみてはいかがでしょうか? 薄毛になったからといって悲観するのはもう終わり! 適切な頭皮ケアを行えば数カ月で髪の健康が戻るそうなので、あきらめる前に実践あるのみですよ。

(取材協力:加世田国与士、文:梅津千晶/マイナビウーマン編集部)

※画像はイメージです

※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.08.09)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

※この記事は2016年07月24日に公開されたものです

加世田国与士

温泉藻類研究者の第一人者。分子モータータンパク質、分子生物学、細胞生物学などの知識と技術を生かし、イギリスのマリーキュリー研究所を経て、別府のサラヴィオ中央研究所に就任。特許取得成分の温泉藻類(R)RG92をはじめ、温泉酵母、酵素の研究、ミトコンドリア研究を行う。世界最大の毛髪学会での受賞歴や国際科学雑誌での論文トップ掲載、世界で最も活躍が期待される20名の博士の1人として国際学会での招待講演を行うなど、多くの実績をもつ。

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