お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

妊娠を意識したら知りたい、生理と基礎体温のキケンは?

妊娠・出産というと、まだ遠い先の話かもしれませんが、産む産まないに関係なく「産むのに必要なカラダ」について知っておいて損はないはず! “そのとき”が来たら、はたして自分は産めるカラダなの? そもそも、妊娠・出産ってどういうもの? 自覚症状がないまま進むカラダの異常って!? 知らないことだらけの「いつかそのとき」のために、ぜひ女子のみなさんに見ていただければと思います。

これまで6回にわたって、「将来の妊娠を意識したとき気になる生理と基礎体温」にまつわるギモンと悩みにお答えしてきました。

記事の中で「黄体機能不全」というキーワードがたくさん出てきましたよね? これは、高温期と切っても切り離せない関係にある黄体ホルモン。それが不足してたり、分泌されにくいというのが、黄体機能不全らしいです。でもそれってコワいことなの? そこで生殖医療が専門の片桐由起子医師(東邦大学医学部准教授)に聞きました。

◆「高温期が10日未満でグラフ波形のガタつきが大きい。低温期との温度差が少ないのは黄体機能不全と聞いたことがあるが、治すためにはどうしたらいいか?」

黄体ホルモンとは、排卵後に分泌されるホルモンであり、これが出ると体温は上がります。黄体ホルモンの分泌をよくするには、生活習慣を改めるとか、カラダを温めるといった、医学から離れたあいまいな答えになってしまいます。

しかし、質問を見る限り、質問された方が本当に期待されている回答とは、「妊娠にまつわるトラブルや不妊治療などが自分の身に起きたら、それをどう治したらいいのか?」や「不妊治療の必要ないカラダにはどうしたらなれるのか?」ということではないでしょうか。

私ども医療者からすると、じつは「世間の方が想像している不妊治療」と「実際に行われる不妊治療」との間に大きなズレがあると感じています。

質問者さんは、不妊治療とは「原因を治して自然に妊娠できるカラダにするもの」と思っていらっしゃるでしょうが、じつはそのようにいかないことがたくさんあります。

・まず、原因を知る
・原因があったらその原因がより悪化するのを防ぐ
・原因があっても妊娠できるよう、医療の力で、少しだけ妊娠力を補ってあげる

というのが実際の不妊治療です。

質問に話を戻すと、「黄体機能不全があるなら、そうでないカラダになりたい」と言い換えられると思いますが、そうするための有効で具体的な医学的な治療法は、残念ながらありません。不足しているホルモンを補充したり、卵巣からホルモンの分泌が増すような薬を使用したりする治療は行われていますが、これらは「自然に分泌が改善する治療」では残念ながらありません。

ですが、今すぐに妊娠を希望する方に行われる不妊状態を改善する治療では、黄体機能不全はそれほど解決が難しい症状ではありません。黄体機能がよくないなら、これはホルモンが足りていないわけですから、投薬で補えばいいのです。足りないものは補えばいい、これで妊娠しにくさは解消されます。

つまり、

・今ある妊娠力やカラダのコンディションを治療で治すことはできなくても、
・妊娠するために黄体ホルモンを足してあげて、妊娠しやすくすることはできる

というのが質問への答えになります。

なお、この黄体ホルモンを補う治療を、今すぐに妊娠を希望しない方に行うことは、無月経や不正性器出血などの診断、治療として使用することはあっても、黄体機能不全そのものの治療として投与することはないですね。

※マイナビウーマン調べ。2014年4月有効回答数205件

(取材協力:片桐由起子、文:小池直穂、イラスト:macco)

産婦人科医 片桐由起子(かたぎりゆきこ)先生

1992(平成 4 )年 3月 東邦大学医学部医学科卒業
1992(平成 4 )年 4月 東邦大学大学院医学研究科入学
1996(平成 8 )年 3月 東邦大学大学院医学研究科修了
1996(平成 8 )年 4月 東京都立荏原病院(現:財団法人東京都保健医療公社荏原病院)勤務
1998(平成10)年 7月 東邦大学医学部産科婦人科学講座研究生
1999(平成11)年 3月  東邦大学医学部産科婦人科学講座助手
2001(平成13)年 7月  Center for Reproductive Medicine and Infertility
Weil Medical College, Cornell University 留学
2005(平成17)年 4月  東邦大学医学部産科婦人科学講座助手復職
2007(平成19)年 7月  東邦大学医学部医学科産科婦人科学講座講師
2010(平成22)年 7月 東邦大学医学部医学科産科婦人科学講座准教授
2010(平成22)年12月 東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター副センター長
2010(平成22)年12月 東邦大学医療センター大森病院臨床遺伝診療室室長 兼任
現在に至る

日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会 生殖医療専門医
日本人類遺伝学会、日本遺伝カウンセリング学会 臨床遺伝専門医
日本周産期新生児医学会周産期(母体胎児)専門医
日本内分泌学会 専門医

※この記事は2015年02月21日に公開されたものです

SHARE