ハムと生ハムとベーコンは、何が違う?「生ハムとベーコンは似ている」「ハムは全く違う」
高級食材として知られる生ハム。食べ放題の朝食ビュッフェには連日長蛇の列ができるというから、日本人は生ハムが大好きなようだ。
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生ハムとハムは、何が違うのか? 似たようなものと思われがちだが、作り方は大きく違い、生ハムはハムよりベーコンに近い。高価な生ハムは、庶民の味ベーコンの兄弟とも呼べる食材だったのだ。
ハムはくん製じゃない?
ハムやベーコンの基準は国によって異なるので、ここでは日本製を中心に紹介しよう。農林水産省が定める「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」、通称JAS法では、ハムは大別して
骨付きハム
ボンレス、ロース、ショルダーハム
ラックスハム
の3種類に分かれ、生ハムはラックスハムを指す。「豚肉」「塩漬け」「牛の腸などで包装」「くん煙(煙でいぶす)」「ボイルする」がハムの基本だが、ラックスハムだけは「ボイル」の工程がない。これが「生」と呼ばれる理由だ。
ハムと生ハムの違いはもう一つあり、くん煙する場合の温度が異なる。煙の温度と呼び名、いぶす時間の目安は、
冷くん法 … 15~30℃ / 1~3週間
温くん法 … 30~80℃ / 1~3日1日5時間
熱くん法 … 90~140℃ / 1時間
で、冷くんは生ハムやベーコン、その他のハムは温くんが一般的だ。
ただし、ハム/生ハムどちらも「くん煙」しなくてもOKなので、煙の温度は決定的な違いにはならない。ハム=くん製だと思われがちだが、JAS法にのっとるとくん煙しなくてもハムを名乗れるので、
1. ボイルする + くん煙しない → ハム
2. ボイルしない + くん煙する → 生ハム
3. ボイルしない + くん煙しない → 生ハム
のどれも反則ではない。3.は干しただけの塩漬け肉にしか思えないのだが、これでも立派な生ハムなのだ。
生ハムとベーコンの違いは「袋」だけ?
ベーコンの基本は豚ばら肉で、ほかの部位を使ったものはロースベーコン/ショルダーベーコンのように名前が変わる。どちらも5日以上塩漬けすると「熟成~」と呼ばれ、ハムよりも複雑だ。
作り方の基本は「豚肉」「塩漬け」「くん煙」で、牛の腸などで包むケーシングと、ボイルの工程がないのがハムとの違いだ。本場ドイツでも、加熱していないものはベーコン、加熱するとハムに分類されることからも「塩漬け肉のくん製」と考えるべきだろう。
ハム、生ハム、ベーコンの特徴を整理しよう。
ハムと生ハム
共通点 … ケーシングされている
相違点 … 生ハムは非加熱、生ハムは冷くん
生ハムとベーコン
共通点 … どちらも非加熱で冷くん
相違点 … 生ハムはケーシングされている
製造方法を比較すると、生ハムとハムの共通点はケーシングだけで、味や食感を左右する調理方法は、まったく別物と言えよう。
ハム特有のケーシングは、形を整え、肉を塩漬けするための袋に過ぎず、現在は植物繊維から人工的に作ったセルロース系ケーシングが使われることが多い。これは食べられないので、調理後にはがされ、あらためて包装されてから市場に出回るので、ケーシングの有無が食品としての特徴を大きく左右するとは考えにくい。
つまり生ハムは、ハムとは別物で、部位は違うがベーコンと「ほぼ」同じなのだ。
まとめ
ハムはボイルするが、生ハムは非加熱
くん煙しなくても、ハムと名乗れる
生ハムもベーコンも、非加熱+冷くん
ベーコンは庶民的、生ハムは高級だと思っていたが、作り方は「ほぼ」同じと知り、ちょっと損した気分だ。
これから朝食のベーコンエッグは、「焼き生ハム」だと思って食べることにしよう。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年05月25日に公開されたものです