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法人税が下がるとなぜ消費税が上がるの?「法人税を納めている日本の企業は、3割未満」

連日メディアで報じられている法人税の引き下げ。消費増税の直後だけに「なぜ減税?」と思われるかもしれないが、実体は真逆で、法人減税のために消費税が引き上げられたのだ。

歴史をひもとくと、消費税が導入/増税されるたびに、法人税は連動して引き下げられている。この4月の消費増税は、法人税引き下げのプロローグに過ぎないのだ。

消費税が企業を救う?

法人税とは企業の利益にかかる税金を指す。ほかに法人事業税や法人住民税も課税され、すべて合計した税率は実効税率と呼ばれる。現在は、10%の復興特別法人税も加算され実行税率=38.01%と複雑なので、ここでは基本税率の推移を紹介しよう。

1989年の消費税導入以来、法人税は下がり続けている。主要な年の消費/法人税率をあげると、

・1989年 … 3% / 40.0%

・1990年 … 3% / 37.5%

・1997年 … 5% / 37.5%

・1998年 … 5% / 34.5%

・1999年 … 5% / 30.0%

・2012年 … 5% / 25.5%

・2014年 … 8% / 25.5%

と、消費増税の前後1~2年には、必ず法人税が引き下げられている。1988年の法人税は42.0%もあり、それまでは増減を繰り返していたのだが、消費税が導入されてからは、特例的な復興特別法人税を除き減税続きなのだ。

国民よりも企業を優先するのか!とご立腹の方も多いだろう。だが、まさにその通りで、今日までの税率の推移をみれば、法人税を下げるために消費税が導入された、と言っても過言ではないのだ。

日本の会社は7割が赤字?

法人税引き下げの背景には、税収の減少が存在する。2009年以降、法人税が極端に減っているからだ。

冒頭で説明したように、利益が出なかった企業は法人税が免除される。海外での現地生産の増加や、各種の優遇措置が減収につながるのも確かだが、欠損法人(=赤字)が多いことも意味している。財務省の資料から、1989~2012年の法人税/消費税収を平均すると、法人税が12.2兆円、消費税は8.4兆円で、およそ59:41のバランスを保っている。

ところが2009年以降の法人税は平均8兆円と極端に減っているのに対し、消費税は10兆円前後にまで増え、比率が逆転している。平成24年度にいたっては、日本の企業の70.3%が欠損法人になっているため、このままでは法人税収が期待できないのだ。

法人税と消費税のバーター取引は、本当に成功するのか? 消費税が3%から5%に上がり、法人税が引き下げられた1996~1999年の4年間の法人税、消費税、合計額をみると、

・1996年 … 法人税(37.5%)・14.5兆円 / 消費税(3%)・6.1兆円 / 20.6兆円

・1997年 … 法人税(37.5%)・13.5兆円 / 消費税(5%)・9.3兆円 / 22.8兆円

・1998年 … 法人税(34.5%)・11.4兆円 / 消費税(5%)・10.1兆円 / 21.5兆円

・1999年 … 法人税(30.0%)・10.8兆円 / 消費税(5%)・10.4兆円 / 21.2兆円

法人税率は80%になったにも関わらず、トータルの税収はアップしているのだ。

法人税引き下げで企業が「優遇」されると考えるのは早計で、消費増税は仕入や販売価格にも反映するので、個人だけが対象ではない。むしろ、欠損法人が70%を超えるなかで、立ち行かなくなる企業を減らし、消費税で稼ごうという作戦とも受け止められる。

残念ながら日本の法人税率は高いので、多少下げたぐらいでは海外企業を呼び込むことはできない。おまけに法人税を納めている企業は3割未満なのだから、優遇どころか不公平是正と呼ぶべきかもしれない。

まとめ

・来年度から、法人税が引き下げられる可能性あり

・法人税を納めている日本の企業は、3割未満

・歴史的にも、消費税が上がると法人税が引き下げられる

勤め先が払う税金が減れば、めぐりめぐって社員にも還元されるはずだ。

そう信じて様子を見守ることにしよう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年05月19日に公開されたものです

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