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もしも地球の裏までトンネルを掘ったら「工期400年。仮に穴が掘れて落下しても、向こうにたどり着かない」

古典的な話題だが、地球の裏に続くトンネルを掘ったらどうだろうか? 膨大な廃土を生み出す工事、灼熱の地中旅行を経て、結局目的地には到達できない。地球規模のムダの美学を味わうことになりそうだ。

【もしも地球が四角だったら「端は標高3,757kmの山に等しい」】

工期は400年

人間が暮らす地球は赤道半径6,378kmで、一周およそ40,000kmもの球体だ。別の場所に移動するには球の表面をなぞるように進むしか方法はなく、地球の反対側まで行くには2万kmの旅となる。対して垂直にトンネルを掘って移動できたら約1万3千kmに短縮できるし、重力で落ちていくからエネルギーも必要ない。

地球横断(縦断でも構わないが)トンネルを作って世界をもっと近くしてみよう。

まずはトンネルを掘るためのシールドマシンを用意しよう。2013年のギネス世界記録ではドイツのヘレンクネヒト社製が世界最大で、直径なんと15.43mもの大型掘削機だ。ギネス認定ではないものの、直径だけなら日立造船製・直径17.45mのシールドマシンが事実上の世界最大だ。

前面には約300個ものカッターが取り付けられ、最大時速3.6mを誇る。シールドマシンの名の通り、穴掘りと同時に周囲を固めトンネルを作ってくれる便利な相棒だ。垂直に掘れる、と仮定してこれを使うことにしよう。

トンネルを掘る前に地球の構造をおさらいしておこう。地表から中心に向って、名称とおよその深さをあげると、

・地殻 … ~40km

・上部マントル … 40~410km

・遷移(せんい)層 … 410~660km

・下部マントル … 660~2,900km

・外核 … 2,900~5,100km

・内核 … 5,100~6,378km(地球の中心)

となる。地殻は半径の0.6%程度に過ぎない。玉子に例えるなら殻程度の厚み過ぎない地殻の上で、人間は歴史を積み重ねているのだ。

地殻の厚さを40km、シールドマシンが正確に3.6m/時で掘り進むと仮定すると上部マントル層まで到達するのに11,111時間、およそ1.26年と意外に速い。

すごいぞ気になる木!何の木か分からないが、とにかくスゴそうだ。

トンネル掘削は、同時にそれだけの廃土を生み出す。直径17.45m、高さ40kmの円柱に置き換えると9,561,378立方m、反対側の地殻と合わせて東京ドーム15.4個分の廃土が発生する。

さらに深く掘り下げると、温度と圧力が問題となってくる。外核外側で2,000℃超・135万気圧、地球中心では5,000℃・365万気圧にもかかるからだ。この温度で流体となっているのですくい出すが正しい表現だろうか、現存するシールドマシンがこれらに耐えられるはずもないのだが、可能と仮定して計算すると、地球の反対側に達するのに404.5年、廃土は東京ドームおよそ2,500個分に及ぶ。

トンネルの直径を小さくしないと、新たな山が誕生してしまう。

地球中心への片道切符

廃土の処理はあとで考えることにして、まずは完成した地球貫通トンネルの開通式だ。体重60kg、空気密度の変化を無視して高度6,378kmからの自由落下として計算すると、空気抵抗係数0.24なら地球の中心まで最高時速180km、128,814秒(=約35.8時間)ととんでもなく遅い。

もしトンネル内を真空にすれば1,140秒で中心に到達するが、時速4万kmに達するので危険極まりない。

時間以上に満足できないのは、地上に出られないことだ。それもそのはずで、トンネルを抜ける人は常に地球の重力に引き寄せられ、地球の中心にゴムひもを結び付けたバンジージャンプ状態となり、中心を通過した途端に減速し始める。

空気抵抗を考えると、持っているエネルギーは入り口近辺>出口近辺となるので、地表に届かないところで最高点を迎える。そして帰りの旅が始まるが、これも同様に出口には届かない。数%ずつ最高点を下げながら、何度も何度も地球を往復し、ゆれたブランコがいつか止まるように、やがて5,000℃の地球中心で静止する。

残念。

まとめ

核の回転が地磁気を生み出す地球ダイナモ説が有力だ。最終的にはその地磁気が宇宙からの紫外線から守ってくれるので、穴を開ければ何が起きるのか想像もできない。

遠いところは時間がかかる。自然に従うのが良さそうだ。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年02月10日に公開されたものです

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