会津「お食事処 むらい」―1kgのロースかつ丼に「思わず三度見した」
2013年、NHKの大河ドラマは会津若松を舞台にした、新島八重が主役のものとなった。ハンサムウーマンと呼ばれ、近代女性の先駆けとも言われた彼女が、スペンサー銃を手に戦った会津戊辰戦争。各所に激戦の残るその地では、ソースカツ丼がご当地名物として名を馳せている。
【お餅の魅力を最も引き出せる食べ方・味付け1位「きな粉」】
いわゆるどんぶり飯の帝王ともいうべきカツ丼だが、会津若松では長野県の駒ヶ根同様、ソースにどぶ漬けしたトンカツが千切りキャベツを敷いたご飯の上に載っているのが大きな特徴だろう。
名店が建ち並ぶこの町で、ひときわ話題にあがっているのが名城・鶴ヶ城から南へ徒歩約15分のところにある「むらい」。以前は夜まで営業していたのだが、最近では昼の営業で店を閉めてしまうという。
全国のドカ飯を食べ歩く取材班が、この噂を逃すわけもない。東京駅から新幹線に乗り込み、郡山駅から在来線で約1時間。そこからバスに乗ってはるばる噂の店に乗り込むことにした。
店に着くとそこは、目の前が駐車場のどこにでもあるようなトンカツ屋。むしろ少しばかり上品な風情さえ漂っている。この店のどこに、我々の腹の空隙を満たすドカ盛りカツ丼があるというのだろうか。
引違戸を開けて暖簾をくぐると、これまた上品な顔立ちの女性が出迎えてくれるではないか。
ま、まさか店を間違えたのか?
少しばかり不安な気持ちになる取材班。しかし、その数分後には驚愕の出会いを果たすことになるのだった。
店に到着したのは午後2時を少しまわろうかという時間帯。それにもかかわらず、奥の座敷を始め、テーブル席もほぼ満員ではないか。残す1席に案内された我々は、気持ちを落ちつかせてあたりを見回すことにする。すると、どのテーブルも、皿の上にトンカツの切り身を数切れ置きながら、どんぶり飯をかきこんでいるではないか。
もしや、そのトンカツが噂の? 確かにデカいトンカツではあるが、それだけ見ても迫力はあまり感じない。
先ほどの女性店員が注文を取りに来て、「当店ではほとんどの方がこのロースカツ丼(ソース)を注文されますよ。いかがですか?」と聞く。なるほど、きっとこいつがその噂のカツ丼であろう。さっそく注文をしたところ、「当店ではすべて注文をいただいてから揚げますので、15分ほどお待ちくださいね」と告げられた。
いったい、どのようないでたちで登場するのであろうか。それにしても、カツ丼1350円とは少々高い一品だ。デカいからその値段というのであれば、大したトンカツではあるまい。東京で高鳴っていた高揚感は次第にそのナリを潜めていくのがわかる。
これは単なる噂が先行しただけなのだろうか……。
待つこと約15分。ついにその噂の主が我々の目の前に登場した。
「ぎょぎょぎょぎょぎょじぇじぇじぇじぇじぇじぇ!!!!!」
デカいとかいう次元ではない。
山積みトンカツ丼とでも記載するにふさわしい一品が登場したのだ。
どんぶりの深さと同程度、上積みされている厚切りのロースかつ。これがレギュラーメニューだとでもいうのか!
ちなみにタバコと比較したサイズからもわかるように、箱を縦方向にふたつ積み上げたサイズなのだ。
おそるおそる店員さんに聞くと、トンカツだけで5~600g、ご飯とあわせると約1kgというから恐れ入る。
し、しかしいつまでも驚いてばかりいるわけにはいかない。
ただデカいだけでは意味がないではないか。これで味が大したことなければ、人気などでようはずもない。
さっそくかじりつく取材班。すると、なんともジューシーな肉汁が口いっぱいに広がる。しかも、揚げ物好きならわかるであろう、芳醇な油の香りを漂わせながら、サクサクでやわらかく味わい深いトンカツなのだ!
思わず「合格!」と親指を立てながら、あとは無言でこの巨大どんぶりと向かい合うのだった……。
約15分の格闘の末、この激戦を制した取材班。しかしそのあと、車の中でしばらく動けなかったことは内緒にしておきたいところだ。
ちなみに「むらい」では食べきれないお客さんが続出とのことで、持ち帰り用のパックを1つ10円で準備してある。軽く2食分はあると思われるこの弩級カツ丼、サイズだけではなくそのうまさも一度、体験されてみてはいかがだろうか。
(OFFICE-SANGA)
●information
お食事処 むらい
住所:会津若松市門田町大字中野字屋敷107-1
営業時間:11:00~13:30
店休日:木曜日
※この記事は2013年12月19日に公開されたものです