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シャコはハイテク生物だって知ってた?「人間の10倍の色彩能力」「時速80kmのパンチ」

すしネタに欠かせないシャコは5月から7月に旬を迎え、今がちょうどおいしい時期だ。

エビの友達ぐらいにしか思っていなかったのだが、シャコは死神をほうふつさせる鎌でエサをとらえ、繰り出すパンチは貝をも割る。人間の10倍もの色彩を見分ける目を持ち、パソコン・パーツに応用できるほどのハイテク生物なのだ。

時速80kmのパンチ

シャコはエビと同じ節足動物ながらも、シャコ科の名の通りれっきとした別の生き物で、日本近海では全長20cm、海外では30cmほどに成長する。

ハサミの代わりに腕のような捕脚(ほきゃく)と呼ばれる器官を持っているのが特徴だ。人間の腕に例えるなら、二の腕にあたる基部と、ひじより先の指節に別れ、基部の内側には3本の可動棘(きょく)、指節には6本のトゲを持つ。

エビのハサミが前を向いているのに対し、シャコの捕脚は腕全体がハサミになったような構造で、内側を向いて開くのが大きな違いだ。

シャコは砂地の海底に穴を掘って巣を作り、ほとんど外に出ないまま生活を送る。巣穴から顔をのぞかせ様子をうかがい、通りかかったエサを抱きかかえるように捕脚でとらえ、そのまま巣穴に引きずり込む。

わずか1秒に満たないほどの早業で、自分ほどの魚も捕獲する。内側にトゲを持つ強力な捕脚で捕まえられたら、魚は逃げ出すすべもなく指先ひとつでダウンさ。

強力なパンチもシャコの得意技で、捕脚を降りだすように伸ばして相手を殴る。貝を割って食べることもあり、その速さは時速80kmにも達する。

プロボクサーのパンチが時速30~50kmほどと言われているので、およそ2倍の速さだからまともにヒットしたらひとたまりもない。シャコは気性が荒く縄張り意識も強いため、近づくとだれかれ構わず攻撃する習性がある。

そのため、漁師がつかもうとしてつめが割れた、水槽のガラスを割った、パンチの衝撃で魚が気絶したなんて話も、あながちホラではなさそうだ。

死神のような鎌を持ち、ボクサーを凌駕するハードパンチャーのくせに、引きこもり生活が大好きで、巣穴から顔をのぞかせてエサを取り、食べかすや排せつ物は穴の外に押し出すように捨て、ほとんど巣から離れたがらない。

水槽などで巣が作れない状態におかれると、不安でエサも取らずに数日で死んでしまうこともある。武闘派なのかシャイなのかよく分からない生き物なのだ。

前後左右、いろいろ見えます

さらに不思議なのは目で、トンボのように小さな目(個眼)が集まった複眼を持ち、上下2分割の構造で前後左右が同時に見えるハイテク仕様だ。

しかも人間が識別できる色は赤、緑、青の三原色しかないのに対し、シャコは11~12の原色を見分けることができる。さらには日焼けの原因となる紫外線や暖房効果のある赤外線まで見えるというから驚きだ。

光は波を描きながら、ちょうど身をくねらせて歩くヘビのように進む。そのため多くの動物は、正面からの光は左右に揺れているように見えるため直線偏光(へんこう)と呼ばれている。

これに対しシャコの目は回転しながら進む光、円偏光(えんへんこう)も見分けることができるのだ。これは反射や水の揺れで変化する光を察知できるため、獲物を見つけやすくするための進化と考えられている。

この技術はDVDやBlu-rayのような光学ドライブに応用可能で、次世代規格が生まれるかもしれないと期待が寄せられている。名付けてシャコ・プレーヤーが誕生する日が待ち遠しい。

まとめ

かつては豊漁だったシャコは、東京湾はおろか、漁獲量日本一の愛知県でも激減している。

「江戸前」は東京湾で獲れた魚介を意味する。江戸前ずしがなくならないよう、自然環境は大切に。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2013年07月21日に公開されたものです

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