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古事記って写本なの知ってますか?古事記あるある!

日本最古の歴史書と学校で習う『古事記』。実はオリジナルが現存しないことをご存じでしょうか? 古事記は日本最古の書物といわれますが、それは「写本」の記述内容から想定しての話なのです。あまり知られていない古事記についてご紹介します。


■『古事記』のオリジナルはない!

大学で日本史を学んだ人ならよく知っていることなのですが、『古事記』のオリジナルは現存しません。

昔はコピー機がありませんので、本の複写を作ろうとすると、苦労して一ページ一ページ引き写すしかありません。こうして作られたものを「写本」といいますが、古事記には写本しか残っていないのです。

現存する最古の写本は、真福寺の僧である賢瑜によって写された『真福寺本古事記三帖』(1371年-1372年に成立)といわれています。

「序」の部分で成立年が分かる!

古事記の成立年は、この写本の「序」の部分に記載された内容によります。

それによれば、稗田阿礼(ひえだのあれ)が誦習(しょうしゅう)していた(覚えていたわけです)『帝皇日継』と『先代旧辞』を、太安万侶(おおのやすまろ)が聞き書きして編さん、712年(和銅5年)に献上したものとなっています。

ちなみに『帝皇日継』は天皇の系譜、『先代旧辞』は昔からの言い伝えがその内容です。細かな内容を覚えていた稗田阿礼もすごいですが、聞き書きした太安万侶も大したものです。今でも「インタビューのテープ起こし」作業はひと苦労ですから(笑)。

この序の記述によって、古事記は日本最古の歴史書ということになっているのです。

古事記には「偽書」ではないのか!? という疑いが!

古事記を再発見し、日本史の重要な文献であるとしたのは、江戸中期の国学者・本居宣長(もとおりのりなが)(1730年-1801年)です。本居宣長は古事記に注釈を入れた研究書『古事記伝』を著し、奈良時代から1,000年も経ってから古事記の重要性をアピールしたわけです。

ところが、この古事記については当時から「偽書」ではないのかという疑惑が起こっていました。こちらも国学者として有名な、賀茂真淵(かものまぶち)は、本居宣長宛てに直接手紙を送り、「序文は後世の創作ではないか」と意見しています。

また、最も古い偽書疑惑の文献は、河村秀興による『古事記開題』(1747年-1751年)といわれています。つまり、江戸時代から古事記について疑義が表明されているわけです。

古事記の何が問題なのか?

では、古事記のどこに偽書疑惑があるのでしょうか。

まず、古事記には、並んで学校で教わる『日本書紀』と違い、古事記の存在を記述した、信頼すべき古文書がありません。日本書紀の場合には、『続日本紀』(しょくにほんぎ)に日本書紀の成立に関する記述があって、その書物があったことを証明できています。

つまり古事記は古事記自身しかその成立を証明するものがないのです。

ちなみに、続日本紀には、元明天皇によって発せられたという「古事記撰録(せんろく)の勅(みことのり)」(古事記を編纂して献上せよという天皇の命令)も記述されていません。もし本当に古事記が序に書いてあるとおりに成立したのだとしたら、天皇の命令によって作られた正統な歴史書である続日本記にその記述がないのはおかしいじゃないかというのです。

また、続日本紀などの信頼すべき史書では「太安万侶」と記述されているのに、なぜか古事記の序だけは「太安萬侶」と書いているという傍証なども指摘されてきました。

古事記を偽書とする説には主に2系統あります。

・「序」を後からくっつけたという説(本文は本物)
・本文も偽物だという説

太安万侶のお墓があった!

しかし、偽書の疑惑も、1979年に奈良県奈良市此瀬(このせ)町の茶畑から太安万侶のお墓が発見されたことにより沈静化します。「太安万侶が実在の人物だったことが証明された」のです。

また、偽書説の一つの根拠であった、「太安万侶」の表記が古事記だけ「太安萬侶」になっていたことも、実際の墓誌銘が出てみると、そこには「左○四條四坊従四位下勲五等太朝臣安萬侶以癸亥年七月六日卒之 養老七年十二月十五日乙巳」と書かれていたのです。

※……○の漢字は、「京」の口の部分が日になった文字です。

さて、いかがでしょうか。偽書説はあるものの、古事記が日本最古の歴史書であるという定説はまだまだ揺らいでおりません。しかし、「大化の改新はひょっとしてなかったのでは」といった異説が取り沙汰されている昨今であります。古事記についても異説が出てくるかもしれませんね。


(高橋モータース@dcp)

※この記事は2013年06月14日に公開されたものです

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