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2021年02月02日 10:55 更新

【医師監修】妊娠初期に出血が続くときの注意点と赤ちゃんへの影響

妊娠初期に少量の出血があったら気になりますね。中には少量の出血が何日間もダラダラと続く場合も。こういったときはどうすればいいのでしょうか? 妊娠初期に出血が続くときの注意点、そして赤ちゃんへの影響、対処法について解説します。

妊娠初期に出血するのはなぜ?

妊娠初期で出血が続きお腹を気にする女性
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妊娠初期に少量出血するのは珍しいことではありません。それは、いったいなぜなのでしょうか。

出血しやすい状態になっているから

妊娠すると、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌量が増えます。エストロゲンには子宮に流れる血液の量を増やす働きがあるので、妊娠期間中は初期に限らず、少しの刺激でも出血しやすい状態になっているのです。

ただし、中には妊娠の継続にかかわるような異常があって出血が起きているケースもあります。こちらは「妊娠初期に出血が続く原因と赤ちゃんへの影響は?」の項で詳しく説明します。

妊娠超初期に起きることがある「着床出血」

異常があって起こる出血について解説する前に、いわゆる“妊娠超初期”に病気でなくても起こりうる「着床出血」についても説明しておきましょう。

着床出血とは?

妊娠超初期という言葉は医学用語ではありませんが、一般的に月経開始予定日前の妊娠1ヶ月である妊娠0~3週までを指します。
この時期、排卵後7~8日目ごろに起こる少量の無痛性出血を「着床出血」といいます。全妊娠の8~25%程度に起こり、経産婦に多いとされています。

着床出血はなぜ起こるのでしょうか?

卵管で受精した受精卵は受精後、約5日で胚盤胞(はいばんほう)となり子宮腔内に達します。受精後約1週間で子宮内膜にくっつき、侵入して、繊毛構造(胎盤の元)を作り出します。このことを「着床」といいますが、 受精卵が子宮に着床する際に子宮側の小さな血管を傷つけることがあり、そのため少量の出血が起きるとされています。

着床出血は正常な妊娠で起こる生理的出血なので、特別な処置は必要ありません。

着床出血の症状と起こる時期

妊娠超初期という、通常の妊娠検査薬も使えない時期に起こる着床出血。これはどんなもので、どういうタイミングで起こるのでしょうか。

着床出血の症状

着床出血の場合、出血量はごく少量とされており、色としては生理と同じような鮮血であることもあり、おりものに混ざってピンク色に見えることもあります。時間が経過して出てきた場合は茶色になっていることもあります。

色としては、通常の月経と見分けがつかないこともあるようです。

着床出血の時期

着床出血は、生理予定日少し前ごろに起こるため、時期的にも生理と間違えてしまうケースがあるようです。

妊娠初期に出血が続く原因と赤ちゃんへの影響は?

それでは、着床出血以外の妊娠初期の出血はどうなのでしょうか。

出血が一時的で少量であれば、あまり心配ないことが多いでしょう。しかし出血が少量であっても続く場合は少し注意が必要です。

切迫流産(流産しかかった状態)や流産、もしくは卵管など子宮以外の場所に受精卵が着床した異所性妊娠(子宮外妊娠)が起きている可能性もあるからです。

妊娠初期に出血が続くときの主な原因について解説します。

エストロゲンの作用などによるもの

子宮頸管ポリープ

ポリープとは病気の名称ではなく、皮膚や粘膜などから突出した、丸くて出っ張っている球状のものを指す言葉です。それらを総称して「ポリープ」と呼んでいます。

子宮と腟との境目にある子宮頸管にも、ポリープができることがしばしばあります。妊娠するとエストロゲンの作用によって大きくなり、これまで隠れていたポリープが見つかることもあります。そして、そこから出血が起こることも少なくありません。

子宮頸管ポリープのほとんどは良性ですが、出血を繰り返したり、ある程度の大きさがあったりする場合は腟内の細菌などに感染する可能性が高まります。そのため場合によっては、妊娠中に切除手術を行うこともあります。

妊婦健診時に子宮頸管ポリープがあることを医師から指摘された人で出血が見られた場合は、まずは担当医に相談を。その後は出血の様子を見ながら、必要に応じて経過観察や治療を行います。

子宮腟部びらん

「びらん」とは皮膚や粘膜の表面が傷つき、その下の組織が露出した状態、すなわち「ただれた」状態のことをいいます。といっても子宮腟部びらんは、子宮の入り口がただれているわけではありません。

腟の奥にある子宮腟部という部分がふくらんで赤く見えている状態のことで、じつは成人女性ではそれほどめずらしいことではなく、見つかっても治療の必要がない場合がほとんどです。

ただし出血を繰り返したり、おりものが増えたり、それによって腟炎になったりする場合は治療を必要とすることもあります。担当の医師と相談しましょう。

妊娠の異常によるもの

絨毛膜下血腫

「絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)」は、妊娠初期の出血で比較的多い原因のひとつです。子宮の内部に血液がたまっている状態のことで、超音波検査によって見つかります。

絨毛膜下血腫があると、出血のほか、おなかが張る症状が見られることもあります。妊娠初期にある絨毛膜下血腫のほとんどは自然に吸収されて治りますが、妊娠中期まで残っていると、流産や早産の原因になることもあります。

出血の量によっては安静を指示されたり、腟内洗浄や抗菌薬の投与などが必要になったりすることも。こちらも担当の医師とよく相談してください。

切迫流産

切迫流産とは「胎児が子宮で生きているけれど、流産を起こすリスクが高い状態」のことです。

妊娠22週未満に痛みや出血で受診した妊婦さんには、この診断名がつくことがあります。「流産」と名についていても、切迫流産はイコール流産ということではなく、あくまでのその危険があるということ。出血が少量で強い腹痛がなく、赤ちゃんの成長が確認できていれば経過観察となり、安静にして様子を見れば問題ないケースも少なくありません。落ち着いて対応しましょう。

流産

妊娠中に出血があると流産を想像してしまう人は、少なくないでしょう。流産とは、妊娠22週よりも前に妊娠が終わってしまうことをいいます。妊娠22週未満では、赤ちゃんはお母さんのおなかの外で生きていくことはできません。したがってなんらかの理由で妊娠が継続できなくなると、流産となってしまいます。

ですが流産になると必ず出血があるかというと、そういうわけでもありません。流産による出血の有無や量は、その状態にもよって異なります。

流産がいままさに進行している「進行流産」では、陣痛のような下腹部の痛みとともに多量の出血が起こりますが、死亡した胎児が子宮内に留まっている「稽留流産」の場合は少量の出血があることもありますが、無症状なことも多いです。また、流産が起きたあとに内容物の一部が子宮のなかに残る「不全流産」では、出血と下腹部痛が続きます。

異所性妊娠

卵管など子宮内膜以外の場所に受精卵が着床してしまう「異所性(いしょせい)妊娠(子宮外妊娠)」でも出血が起こります。

異所性妊娠は全妊娠の1~2%の頻度で発症するとされており、妊娠の継続が難しいことがほとんどです[*1]。とくに異所性妊娠の多くを占める卵管妊娠では出血と下腹部痛が起こりやすく、卵管流産や卵管破裂などにいたることもあります。卵管などが破裂し大量出血を起こすと、命にかかわることがあります。

なお、異所性妊娠であっても妊娠期特有のホルモン・hCGが分泌されるため、妊娠検査薬では陽性が示されます。妊娠の反応があった場合は、必ず医療機関を受診し、正常な妊娠かどうかを確認しておきましょう。

出血が続くときの対処法と注意すべきポイント

妊娠初期に出血が続いたとき、医療機関を受診する目安や、受診の前に確認しておきたいポイントをおさえておきましょう。

まずは医療機関に連絡を

最初にもお伝えしたように、妊娠初期の出血はけして珍しいことではありません。でも、ここで説明したようにその原因はさまざまで、妊娠の継続を左右するものもあれば、中には妊婦さんの命に関わるものもあります。妊娠初期に出血があった場合は自己判断せずに、まずは医療機関に連絡し、判断をあおぎましょう。


医療機関に電話する際は、

・いつからの出血か

・量はどれくらいか

・血の色や、においはどうか

・塊のようなものが含まれているか

・腹痛やおなかの張りはあるか

・吐き気や貧血などの症状はあるか


などについて説明しましょう。受診の必要があると言われたら、指示に従ってください。

なお、妊娠初期に起こる出血は、原因が不明なこともあります。出血があっても医療機関で妊娠経過や胎児の成長に異常がみられなければ、大きな問題はないと考えられます。

つまり、妊娠初期の出血イコール心配な状況ということではありません。それでも、不安に感じることは遠慮せず、主治医に確認するようにしてくださいね。

出血量が多いときや強い腹痛があるときはすぐに受診して

多量の出血がある場合や、ひどい腹痛がある場合には、異所性妊娠の可能性が考えられます。そうした症状がみられたら、夜間・時間外であってもすぐに医療機関を受診しましょう。

まとめ

妊娠初期の女性のイメージ
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妊娠中は出血がおこりやすくなっています。妊娠初期に出血がみられたら、まずは落ち着いて出血の量や様子、出血が続くかどうかなどを確認しましょう。その上で、かかりつけ医に相談し、判断を仰ぐのが適切です。あまりあわてなくても大丈夫ですが、自己判断は禁物。症状を説明して受診などの指示を受けたら、それに従いましょう。

(文:山本尚恵/監修:齊藤英和先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気がみえる vol.10 産科, メディックメディア, 2018

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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