【医師監修】赤ちゃんの痰、原因と出し方は? 喉がゴロゴロするのはなぜ?
赤ちゃんのなかには、痰が絡んでいるかのように喉がゴロゴロと鳴る子がいます。このような場合、どんな病気が考えられ、このままでも問題ないのでしょうか。原因や対処法などもふくめて解説していきます。
赤ちゃんの痰が気になる!
痰とは気道から分泌される粘っこい分泌物のこと。
赤ちゃんは、痰が絡んでしまうことが少なくありません。こんなとき、どんなことに気をつければいいでしょうか。
赤ちゃんは痰を出す力が弱い
呼吸をする際に空気の通り道となる気道は、外界にいるウイルスや細菌などの病原体が入ってくるリスクに常にさらされています。
こうした病原体を防ぐため、気道では常に粘液が分泌されています。この粘液が痰で、異物が入ってきたり、感染症にかかったり、乾燥したりすると分泌量が増えてきます。
赤ちゃんの気道は大人よりも細く、咳によって痰を出す力が弱いため、痰が絡みやすいといわれています。
痰が増える病気とは?
痰が増える代表的な病気といえば感染症でしょう。このうち、赤ちゃんや小さい子供がかかりやすいのが、気管支炎です。
気管支は気道の下の方(下気道)にある器官のことで、ここに病原体が侵入し、炎症を起こした状態を気管支炎といいます。原因となる病原体としてはウイルス(ライノウイルス、RSウイルスなど)が多く、マイコプラズマという病原体によって生じることもあります。また、ウイルスに感染した後に細菌に二次感染することもあります。
気管支炎になると、ゴホゴホ、ゴロゴロといった痰が絡んだ咳をするようになり、熱が出てきます。はじめの頃の痰は透明〜白色で、比較的さらさらしています。症状が進むにつれて徐々に黄色や緑色に変わり、粘り気が強くなってきます。
なお、マイコプラズマ感染症では、痰があまり出ない傾向があります。
気管支炎以外で痰が出やすい病気では、風邪(上気道炎)の初期や、喘息などが考えられます。このときの痰は透明、あるいは白色のことが多いようです。
副鼻腔炎(鼻の奥にある空洞に膿が溜まる病気)にかかったときも、痰のような分泌物が出ることがあります。ただ、この分泌物の正体は喉の方に流れてきた鼻水で、後鼻漏(こうびろう)と呼ばれています。
気管支炎の痰の出し方とポイント
前述したように、赤ちゃんや小さい子は、咳をして痰を出すのが上手ではなく、痰を出す力が十分ではありません。増えた痰をそのままにしておくと、咳き込むなどの問題が出てきます。ですから、大人がサポートして痰を出しやすくしてあげることが大切です。
水分をとらせる
痰が絡んでいるような咳をしていたら、まず、少量の水分を何回かに分けてとらせ、痰を柔らかくします。部屋を加湿することも有効だとされています。
吐いてしまったら
痰を吐き出そうとして、嘔吐してしまうこともあります。
この場合に気をつけたいのは、痰を出そうとして吐いたのか、別の理由(胃腸炎など)で吐いたかを区別することです。
吐いたものに痰が混じっていて、赤ちゃんに元気が戻るようなら、痰を出すために吐いたものと考えられます。吐いた後も元気がないようであれば、別の理由があるかもしれません。
いずれにしても、痰が増えたときや痰に色がついているときは感染症にかかっている可能性が高いので、かかりつけの小児科医に診てもらったほうがいいでしょう。痰だけでなく、発熱があってぐったりしているときや、呼吸が苦しそうなときは、すぐに受診してください。
喉からゴロゴロ聞こえるときは?
生まれて間もない赤ちゃんでは、喉からゴロゴロとした音が鳴り「痰がからんでいる?」と思うことがあり、何か病気ではと心配する親御さんもいるでしょう。
どんなことが考えられるのかみていきましょう。
赤ちゃんの喉がゴロゴロする理由
赤ちゃんの喉がゴロゴロと鳴る理由として考えられるものの一つは、先天性喘鳴(ぜんめい)です。喘鳴とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、息を吸ったり吐いたりするときに、喉がゼロゼロ、ゴロゴロいう状態をいいます。
先天性喘鳴は、生まれたときに気道に何らかの問題があったために起こります。最も多い原因は喉頭軟化症(こうとうなんかしょう)です。
赤ちゃんの喉は組織が柔らかいため、息を吸ったときに喉が空気と一緒に肺のほうに吸い込まれてしまうことがあります。その振動で喉がゴロゴロと鳴ります。
泣いているときや、おっぱいやミルクを飲んでいるとき、横になっているときにはゴロゴロしやすく、眠ったり、うつ伏せになると落ち着きます※。
不安になる親御さんもいると思いますが、おっぱいをしっかりと飲めていて、元気で体重が順調に増えているのであれば、特に心配はいらないでしょう。
先天性喘鳴は成長とともに治まってくることが多いですが、非常にまれに別の病気によって起こっていることがあります。いつまでも喘鳴が治らないなど、気になるようなことがあれば、一度、かかりつけの小児科で相談してみるとよいでしょう。
※赤ちゃんをうつ伏せのまま目を離したり、眠らせるのは窒息や乳児突然死症候群の危険がありますので絶対にやめましょう。
まとめ
痰は、感染症のときや乾燥したときに増えます。赤ちゃんは痰を出す力が弱いため、水を飲ませたり、加湿をするなど、大人がケアしてあげましょう。
痰が増える病気の多くは感染症です。痰だけでなく、熱がある、ぐったりしている、呼吸が苦しそうといった症状があるときは、早めにかかりつけの小児科医に診てもらいましょう。
一方、生まれて間もない赤ちゃんで、喉がゴロゴロと鳴って痰が絡んだような音がする場合、成長とともに治まっていくことが多いですが、別の病気が隠れていることもあるので、気になるようなら小児科医に相談しましょう。
(文:山内リカ/監修:大越陽一先生)
※画像はイメージです
金子堅一郎「子どもの病気とその診かた」(南山堂)
「小児の治療指針(小児科診療2018年増刊号)」(診断と治療社)
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます