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2021年01月29日 15:52 更新

【医師監修】妊娠中にカンジダ症と言われたら|赤ちゃんへの影響は?

「カンジダ」という言葉、どこかで目にしたことのある女性も多いのでは? 特に「腟カンジダ症」は多くの女性が一生に一度はかかると言われています。健康な妊婦さんではお腹の赤ちゃん含め多くの場合で心配のない病気ですが、ここでは、女性、特に妊婦さんに関するカンジダ症の基本的な情報をまとめました。

カンジダ症って、どんな病気?

そもそもカンジダって何?

カンジダ症は、カンジダという真菌による感染症です。真菌とは、いわゆる「かび」のことですが、カンジダは多くの人がふつうにもっていて、ふだんは健康への影響がない菌(常在菌)の一種です。ところが、体の抵抗力が低下したときなどにカンジダによる症状が現れること(日和見感染)があります。
妊娠中は女性ホルモンの増加などにより腟内でカンジダが増殖しやすくなりますが、もともと健康な妊婦さんではカンジダに感染していても普通大きな問題は起こりません。ときに妊婦さんから赤ちゃんに感染し、赤ちゃんの口のなかに鵞口瘡(がこうそう)などが現れることがあります。

妊婦はカンジダに感染しやすいので注意が必要
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カンジダにはどうやって感染するの?

カンジダは、多くの人の皮膚や消化管、腟などに存在していますが、ふだんは無症状です。しかし特に女性では、免疫の働きが低下したときや局部を不衛生にしていることなどによって腟内のカンジダが増えて、腟カンジダ症を発症することがあります。
とくに妊婦さんはカンジダ症を発症しやすいと言われています。妊娠中は女性ホルモンであるエストロゲンが増え、腟内でカンジダが増殖しやすくなります。また、妊娠すると母親とは別の生命である赤ちゃんを異物と認識して排除しないようにするため、妊婦さんの体では免疫の働きが抑制されます。こういった理由で、カンジダが増殖しやすくなり、カンジダ症を発症しやすくなるのです。
なお、カンジダは多くの人が普通に持っているものなので、いつどこで感染したかを特定することは困難ですが、性交渉により接触感染することもあります。

女性は誰もが一度はかかる病気!? 大人が発症した場合の症状について

腟内にカンジダを持っている頻度は、妊娠していない女性で約15%、妊婦さんでは約30%ぐらいと言われています[*1]。

性器のカンジダ(腟カンジダ症)

女性に起こるカンジダ症として頻度が高く、かつ妊娠との関係が深いのは腟カンジダ症です。女性の多くが一度はかかり、そのうち40~45%は2回以上繰り返す、ごく一般的な病気です[*2]。
その症状は、外陰部・腟のかゆみや熱感、白色のおりものの増加です。また外陰部に現れた発疹が乾燥して剥がれ落ちることがあります。
なお、男性器のカンジダでは、性器の先端が赤くなったり水疱ができることがありますが、多くは無症状です。

皮膚のカンジダ

性器以外の皮膚(指の間など)や粘膜(口の中など)、爪などに起こるカンジダ症もあります。指や爪のカンジダ症は、水仕事をよくする女性に多い傾向があります。なお、子供では、オムツの当たる部分によくみられます。

深在性カンジダ症

健康な大人ではまれですが、カンジダが内臓や血液に広がり影響が全身に及ぶ、深在性カンジダ症という病気もあります。

妊婦さんがカンジダに感染した場合

カンジダはお腹の赤ちゃんにも感染するの?

生まれたばかりの赤ちゃんがカンジダ症を発症した場合、お母さんの胎内での感染や出産時の産道で感染が起きたと考えられます。
一方、生まれてから1週間ほどたってからカンジダ症を発症した場合は、未熟児出産などで使用された血管カテーテルによる感染が考えられます。

赤ちゃんがカンジダ感染するとどうなる?

赤ちゃんがカンジダに感染すると、口の中に白い膜状のもの(偽膜)ができる「鵞口瘡(がこうそう)」になったり、脇の下やオムツの位置などに発疹のできる「カンジダ性間擦疹(かんさつしん)」などを発症することがあります。まれですが、早産や低出生体重児ではカンジダが全身に波及する深在性カンジダ症を発症することがあります。詳しくは「子供のカンジダ症 どんな病気? 気を付けることは?(子供編)」をご覧ください。

カンジダ症の検査、治療と予防

「症状が現れたら」検査でチェックする

カンジダは女性、特に妊婦さんでは持っている人が多いので、感染しているかどうか調べるために、すべての妊婦さんを検査するということは行われません。検査は、カンジダ症が疑われる症状が現れた時に実施されます。このとき、腟カンジダ症では腟内の分泌物を採取する検査が行われます。

カンジダ症はどうやって治療するの?

性器や皮膚のカンジダ症では、抗真菌薬の腟座薬や塗り薬を1週間ほど用います。また、局所の清潔を保ち、治るまで性交渉は避けてください。
カンジダ症の再発を繰り返す場合は、妊娠していなければ飲み薬の抗真菌薬が処方されることもあります。ただし、妊婦さんでは禁忌です。
なお、妊婦さんの腟内カンジダ保有率は先ほど出てきたように約30%と高いのですが、カンジダを持っていても症状がなければ治療の対象にはなりません。しかし、赤ちゃんへの感染リスクが高くなると考えられる次のようなケースでは、症状がなくても腟カンジダ症の治療が行われます。それは、早期未熟児出産が予測される場合や、妊娠中にほかの感染症にかかって抗菌薬を用いる場合などです。

カンジダにワクチンはない。日常生活でできる予防法は?

カンジダ予防のためのワクチンはまだ開発段階です。
また、カンジダは多くの人が持っている真菌のため、何かの予防策をとっても感染を防ぐことは困難なのですが、感染経路の一つに性交渉があることは知っておきましょう。

まとめ

カンジダは多くの人が普通に持っている真菌で、症状がなければ治療は基本的に必要ありません。健康な妊婦さんでは、深刻な全身症状や胎児への影響もほとんど心配ない病気ですが、ときに積極的な治療が必要になる場合もあることは知っておきましょう。

(文:久保秀実、監修:宋美玄先生)

参考元
[*1]東京医学社「周産期医学」増刊号「周産期感染症2014」96p
[*2]医学書院「標準産婦人科学」235p

千葉大学真菌医学研究センター 目で見る真菌症シリーズ 4
東京都性感染症ナビ
産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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