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2021年01月29日 14:06 更新

【医師監修】正しいしもやけ対策とは? 予防の4つのポイント&悪化させない対処法

地球の温暖化の影響か、近年は暖冬続き。だから、しもやけの心配はないと思うのは早とちり。意外にも、しもやけは厳冬期の前後に多いことが以前から指摘されていて、暖冬だから大丈夫とは言えません。しもやけ対策に必要な正しい知識を身につけましょう。

しもやけの症状

防寒着を着ている子供
Lazy dummy

最近では、しもやけを経験したことがない人が増えているようなので、まずは、しもやけの症状についてお話しします。

赤く腫れて、かゆみや痛みが現れる

しもやけは、寒冷刺激をきっかけに現れる皮膚の赤みや腫れで、かゆみや痛みを伴います。後で詳しく解説しますが、血液の流れが滞ることが発症に関係しています。ですから、体の胴体部分よりも、血流が悪くなりがちな末端部分、しかも寒冷刺激を受けやすい部位に起こりやすい傾向があります。具体的には、指や足、耳、鼻、頬などです。

子供に多いものですが、成人でもなることがあります。子供の場合、女の子の方が男の子より少し多く、成人では性差が大きくなり女性に多くみられます。

医学的には2タイプに分けることも

医学用語ではしもやけのことを「凍瘡(とうそう)」といいます。そして専門的には、樽柿型(T型)と多形滲出性紅斑型(M型)、および両者の混合型に分類されます。

樽柿型(たるがきがた)は、しもやけになった箇所が樽柿のように腫れるタイプです。一方、多形滲出性紅斑型(たけいしんしゅつせいこうはんがた)は、少し“しこり”のある赤みが現れ、時にその上に水疱(水ぶくれ)ができるタイプです。

樽柿型は子供に多く、多形滲出性紅斑型は成人に多い傾向があります。

温めるとかゆみが増す

しもやけの特徴は、かゆみを伴うことが多く、しかも温めるとそのかゆみが強くなることです。童謡の「たき火」に、子供たちが焚き火に手を当て「しもやけ、おててがもうかゆい」という歌詞があるとおりです。風呂上がりにも、血流が改善してかゆみが強くなることがあります。

ひびやあかぎれにもなりやすく、ひどくなるとびらんや潰瘍に

しもやけは、“ひび”や“あかぎれ”を伴いやすく、またひどい場合は“びらん”といって、赤くただれたようになったり、潰瘍ができたりします。

しもやけの原因

しもやけの一番の原因は、先ほど述べたように寒冷刺激、つまり寒さです。では、寒さがどのようにしもやけを起こすのか、もう少し詳しく見てみましょう。

寒冷刺激で血管が収縮

しもやけは、繰り返す寒冷刺激で血管が収縮・うっ血し、血液循環が悪くなることで起きます。
秋が深まり、皮膚温の低下が著明になってくるに従ってしもやけができやすくなり、春までその状況が続きます。

水作業が多いとなりやすい

寒冷刺激を受けやすい人、具体的には水仕事が多い人はしもやけになりやすいと言えます。農作業をする人などに多く見られるという報告もあります。

最近は減ってきている

しもやけは、ありふれた病気ではありますが、最近は減少していると言われます。その理由として、暖房設備が普及してきたことが挙げられます。気候の温暖化も関係しているのかもしれません。
もう1つの大きな理由として、しもやけになりやすい子供たちが、外で遊ばなくなったことが考えられます。

栄養や遺伝的なことなども関係

しもやけは成人女性や高齢者にも多い

しもやけは子供がなりやすいものの、先ほども書いたように成人でも女性は男性よりしもやけになりやすいと言われます。また、動脈硬化が進行して血流が悪くなっている高齢者も、しもやけになりやすいと言えます。

なにかの病気や、遺伝的な影響

貧血や低血圧、多汗症、やせている人、自律神経障害、内分泌異常、栄養不良なども、しもやけのできやすさと関係があります。このほか、しもやけは家族内発症が70~90%と言われ、遺伝傾向もみられます[*1]。

しもやけをできやすくする気候や条件

しもやけは、ただ寒いからできやすくなるというわけではなく、いくつかの条件が揃うと余計にできやすくなることがわかっています。

厳寒より温度差の影響が大きい

しもやけは厳冬期よりもその前後に多いことが知られています。具体的には晩秋から初冬、または初春です。

これは、先ほど解説したしもやけの発生メカニズムに関係しています。つまり、手足などの露出部位の皮膚血管は気温が高いと拡張し、気温が低いと収縮するのですが、この調整がうまくいかないために皮膚の血流障害が起きてしもやけになるわけで、気温の寒暖差が大きいほどそのような条件になりやすいからです。

気温が4~5℃前後で、一日の中での気温差が10℃以上あると、しもやけができやすくなると言われます[*2]。

湿度の高さも影響する

また、湿度の関係もあり、湿度が高い地方で多発することが知られています。これは、湿度が高いことで皮膚の表面の温度が気化熱として奪われることが関係していると考えられます。気化熱とは、水分が蒸発する時に熱を下げるように働くことで、例えば発汗によって体温が下がるのも気化熱によるものです。

物理的な圧迫による血流不良も

しもやけの発生には血流障害が関係していますが、物理的な圧迫もその原因となります。例えば、きつい靴を長時間履くことなどです。
手にできるしもやけよりも足にできるしもやけのほうがひどくなることが多いのは、寒冷刺激に加えて、靴による圧迫が関係していると考えられます。

しもやけと間違えやすい、治療が必要な病気

しもやけに似た症状が現れる、以下のような病気があります。

接触(性)皮膚炎

いわゆる「かぶれ」で、特定の物質に皮膚が触れることで起きる炎症です。かゆみや発疹が現れます。

全身性エリテマトーデス

自己免疫性疾患(体を細菌などから守る免疫システムが自分の体を攻撃してしまう病気)です。全身のさまざまな臓器に炎症や障害が起こり、その1つとしてしもやけに似た皮膚症状が現れます。しもやけは成人では女性に多いと解説しましたが、この全身性エリテマトーデスも若い女性に多い病気です。

なお、しもやけは医学的に「凍瘡」と呼ぶことは前述しましたが、それと似ている病名に「凍傷(とうしょう)」があります。混同しがちですが、凍傷は組織の凍結や血管閉塞が起こるもので、しもやけ=凍瘡とは明らかに異なります。

症状にしもやけとの違う点がある場合は受診を

これら以外にも、しもやけに似た症状が現れる病気があります。しもやけであれば秋から春しか起きないので、症状に季節性のない場合や長引く場合、症状が強い場合はしもやけでない可能性を考え、医療機関を受診しましょう。かゆみがない場合も同様です。また、しもやけでは起きない症状、具体的には発熱、関節痛、倦怠感などを伴う場合もやはり、早めに受診し診察を受けてください。

しもやけ対策・予防の4つのポイント

それでは、しもやけ予防対策に話を進めます。なお、かゆみがある場合の原則として、なるべく掻かないようすることが大切です。掻くと炎症が拡大したり、皮膚のバリア機能が低下して治りが悪くなってしまったり、別の感染症にかかるリスクがあるからです。
では、対策のポイントを4つに絞って解説しましょう。

防寒する

しもやけの原因のおおもとは寒冷刺激。ですから、防寒は一番の対策と言えます。

手袋や靴下を着用

しもやけになりやすい手足や耳などの防寒をします。寒い日に外に出るときには手袋や耳当て、マスクなどを着用し、寒い場所にいる時間をなるべく短くするようにしましょう。また、足にしもやけができていないか毎日確認しましょう。いつも目につく手とは違って、足先は注意していないとあまり観察する機会がないからです。

全身から温める

手足などの末梢だけでなく、全身から保温することも大切です。屋内では室内全体を温められる暖房器具を使って、寒暖差を少なくしましょう。
全身的に体調を整えるという意味では、睡眠を十分とり、ビタミンを多く含むものなどを栄養バランスよく食べることも大切です。

手荒れを防ぐ

ハンドクリームなどをつけて肌が乾燥しないようにしましょう。洗濯などの水仕事の際にはゴム手袋を用いましょう。また、洗濯用洗剤の使用量を減らしたり、種類を変えてみると、手荒れが軽快することがあります。

濡れたままにしない

雨や雪で濡れたり、汗をかいたりしたままだと、気化熱のため皮膚の温度が低下して、しもやけができやすくなります。濡れた靴下・手袋はそのままにせずに履き替えてください。汗をかいたら早めに下着を交換しましょう。また、手洗い後は水を十分に拭きとってください。

血流をよくする

血流改善も、しもやけ対策には大切です。

マッサージ

手足をよくもんだり、マッサージをしてみましょう。

冷温交替浴

冷水と温水に交互に浸す冷温交替浴も効果が報告されています。

軽い運動

適度な運動も血流改善につながります。その場でできる、両手をぐるぐる回すような運動も効果的です。

ビタミンEをとる

ビタミンEには末梢血管を拡張する作用があり、医療機関ではしもやけに対してビタミンE製剤が処方されることもあります。アーモンドなどのナッツ類やウナギなどの魚介類、大豆、緑黄色野菜などにはビタミンEが豊富です。また、ビタミンEはサプリメントとして市販もされています(ただし、摂取目安量は守ること)。冬になると毎年しもやけに悩まされるという人は、ビタミンEを秋から予防的に摂取を試してみてはいかがでしょうか。

しもやけの治療

いろいろな予防策をとっていたのに、しもやけになってしまい、なかなか治らないという時は、こじらせる前に医療機関を受診したほうが安心です。

しもやけに効果的な成分、薬

外用薬

血管拡張作用のあるビタミンE製剤やヘパリン類似物質などの塗り薬がよく処方されるようです。かゆみが強い場合には、かゆみ止め(抗ヒスタミン薬)も使われます。

内服薬

ビタミンEの内服薬、末梢循環改善薬、漢方薬の当帰四逆加呉茱臾生姜湯、温経湯、四物湯などが血流改善目的で使われていますが、小児への投与に関しては医師の判断を仰いでください。また、強いかゆみに対して抗ヒスタミン薬が処方されることもあります。

しもやけが悪化したときの対処法

しもやけがひどく、炎症の範囲が広い場合は早めに医師に診てもらいましょう。とくに皮膚が崩れてくるような状態になったら素人療法は危険です。
水疱やびらん、潰瘍がある場合はマッサージを行わず、やけどの治療に準じた治療が必要です。具体的には、抗生物質軟膏や亜鉛華軟膏を使って感染を予防し、傷の修復を図ります。
なお、「しもやけと間違えやすい、治療が必要な病気」でも書いたことと重複しますが、痛みのある亀裂、夏でも治らないなど、しもやけでは考えにくい症状がある場合も、早めに受診してください。

まとめ

しばしば軽い症状と捉えがちなしもやけですが、思わぬ悪化を招くこともありますから早めの治療が大切ですね。冬を快適に過ごすためにも予防法や治療法について正しい知を身につけましょう。

(文:久保秀実/監修:大越陽一先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]小児科診療50(10),p.1916,1987
[*2]日本臨床皮膚科学会「ひふの病気 凍瘡」

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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