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2021年01月10日 15:07 更新

【医師監修】トキソプラズマ抗体検査とは? 陽性だった場合の治療法は?

トキソプラズマ抗体検査の受け方、具体的な方法、妊娠中の感染が疑われる場合の治療の進め方をまとめました。この検査は妊婦健診では任意検査のため、希望する場合は妊婦さん自身が医療機関に申し出る必要があります。

トキソプラズマ抗体検査の受け方

トキソプラズマの検査は妊娠中に受けておきたい検査でお腹をいたわる妊婦
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トキソプラズマ抗体検査を受けておきたい理由、検査の方法、陰性・陽性それぞれの場合の対処方法について説明します。

抗体検査と赤ちゃんへの感染の関係は?

妊娠中に起こり得る母子感染のひとつが「トキソプラズマ症」です。トキソプラズマという寄生虫に妊婦さんが「初めて」感染すると、流産や死産につながったり、赤ちゃんの目や脳に影響が及ぶ「先天性トキソプラズマ症」を引き起こすリスクがあります。これらのことをご存じの方も多いのではないでしょうか。

トキソプラズマは世界中に分布する微生物ですが、日本で抗体を持っている妊婦さんは2~10%といわれます[*1]。妊娠する前から抗体を持っていれば、赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症を起こす心配はありません。でも、日本では多くの方がトキソプラズマ抗体を持っておらず、また自分が抗体を持っているのかどうかは検査を受けてみないとわかりません。現在、トキソプラズマ症の感染を防ぐワクチンは存在しないため、妊娠中は感染の予防に努めることが大切になります。

トキソプラズマ抗体検査はどうやって受ける?

トキソプラズマ抗体検査は血液検査です。妊婦健診のなかでは妊娠初期に「必要に応じて」行う検査と位置付けられているため、希望する場合は医療機関に妊婦さん自身が申し出る必要があります。ハードルが高いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、産科クリニックのおよそ半数で検査を受けることができるので、かかりつけのドクターに相談してみてください。

検査結果にともなう対処法について

トキソプラズマ抗体検査を行うと、妊婦さんの9割以上が陰性(抗体を持っていない)になります[*1]。陰性とわかったら、出産までの間はトキソプラズマに決して感染しないように徹底した予防を心がけることが必要になります。
陽性(抗体を持っている)の場合は、いつ感染したのかを推定するために、次の検査に進みます。感染が妊娠前であれば心配ありませんが、妊娠中の場合は、胎児への感染リスクが高まるからです。

トキソプラズマ抗体検査の具体的な方法

「トキソプラズマ抗体検査って、どんなふうに行うの? 」。そんな疑問にお答えします。

陰性と陽性を分ける検査について

トキソプラズマ抗体の有無は、血液中の「抗トキソプラズマ抗体(IgG)」の値を調べることで判断します。この検査で、トキソプラズマに現在感染している、または過去感染したかどうかがわかります。検査の費用は1,000円~2,000円程度です。

感染時期を推定する検査について

IgGの検査で陽性となった場合、さらにIgGの再検査とIgM抗体の測定を行います。IgMというのはわたしたちが細菌やウイルス、寄生虫等に感染した時、最初に作られる抗体。IgM抗体が作られた後にIgG抗体が作られます。IgGとIgMの値の推移を調べることで、感染時期が最近かどうかを推定します。感染時期を推定する検査には、他に「IgG avidity(アビディティ)検査」があります。
ちなみに妊娠初期にIgM抗体が陽性だった妊婦さんの約7割は妊娠前の感染であると診断されています[*2]。

妊娠中の感染が疑われる場合の治療の進め方

検査の結果、妊娠中にトキソプラズマに初めて感染したことが疑われる場合、お腹の赤ちゃんへの感染を食い止めるための投薬治療が行われます。赤ちゃんに感染している場合、医師と妊婦さんで相談しながら出産まで治療を続けます。

抗菌薬で赤ちゃんへの感染を予防する

妊娠中のトキソプラズマ初感染が疑われる場合、赤ちゃんへの感染を防ぐため、妊婦さんの同意を得て抗菌薬(抗生物質)の服用をただちに開始し、3週間投与、2週間休むというサイクルを出産まで続けます。母体から胎児にトキソプラズマが感染するまでには少し時間差があるので、薬の投与で赤ちゃんへの感染を防御するのです。この投与で最大60~86%の胎児感染が予防されるという報告もあります[*1]。

妊娠17週以降[*1]に羊水PCR検査を行うケースもあります。胎児感染が確認された場合、妊娠27週まで[*1]の間は抗原虫薬や抗菌薬、葉酸で治療を行い、定期的に赤ちゃんの様子をチェックしながら経過を見守ることになります。

まとめ

トキソプラズマ抗体検査は、妊娠初期に「必要に応じて行う」検査となっているため、希望者は申し出る必要があります。
血液検査により抗体が陽性となった妊婦さんは、感染時期を推定するための精査を行います。妊娠成立後に初めて感染したと考えられる場合は、お母さんからお腹の赤ちゃんへの感染を防ぐために投薬治療が行われます。羊水PCR検査で胎児への感染が確認された場合も投薬治療が考慮されます。
陰性と判定された場合は、妊娠期間中にトキソプラズマに初めて感染する可能性があるということです。トキソプラズマ感染を予防するワクチンはないため、感染しないよう予防に努めることが大切です。

(萩原明子/毎日新聞出版MMJ編集部)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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