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2021年04月05日 10:39 更新

【医師監修】妊娠の兆候と生理前症候群(PMS)は何が違うの?

排卵から生理予定日までの期間は、妊娠しているのかどうかとても気になるもの。妊娠していても妊娠検査薬の反応が出にくい時期なので、「いつもと違うこの症状はPMS(生理前症候群)? それとも妊娠の兆候なの?」とドキドキしてしまう人も多いようです。似たような症状が現れる妊娠の兆候とPMS、これらはどのように異なるのでしょうか。

妊娠の兆候とPMS(生理前症候群)はどう違う?

妊娠の兆候をチェックするためにカレンダーと妊娠検査薬
Lazy dummy

妊娠の兆候とPMSはいったいどのような症状なのでしょうか。それぞれの特徴やそれらが生じる理由を紹介します。

分かりやすい7つの妊娠の兆候をチェック

妊娠の兆候には、おもに以下のようなものが挙げられます。ただし、症状の現れ方には個人差があり、全ての人に以下の症状が出るとは限りません。

(1)基礎体温が高い時期が2週間以上続く
妊娠した場合、妊娠の継続に必要な黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が続き、これによって基礎体温が高い状態(高温相。一般的には高温期ともいう)が保たれます。

基礎体温の図

(2)乳房が張ったり、乳首が敏感になってチクチクとした痛みを感じる

(3)しっかり睡眠時間をとっているのに眠気が強い

(4)風邪の初期症状に似ただるさや熱っぽさを感じる

(5)ささいなことでイライラしたり、落ち込みやすくなる

(6)頻尿や便秘になる
妊娠初期には体内の水分が増加し始め、頻尿になる場合もあります。今後子宮が大きくなっていくと、膀胱を圧迫するのも頻尿の原因になります。また、ホルモンの分泌が増えて腸の動きが鈍くなるため、便秘にもなりやすくなります。

(7)吐き気や胃のむかつきといった「つわり」症状がある
つわりの症状としては、吐き気のほか、食事の好みが変わったり、唾液量が増えたりすることもあります。

これら以外にも、妊娠をしていても少量の出血がみられることもあります。

PMS(生理前症候群)の特徴・原因は?

PMS(Pre Menstrual Syndrome)は生理(月経)前症候群のことで、生理前に起こる精神的・身体的症状の総称です。

主な症状としては、イライラしたり、集中力が低下したり、眠くなったり、ゆううつになったりするなどの精神症状が挙げられます。

また、腹痛、頭痛、腰痛、胸の張り、むくみなどの身体症状を伴うこともあります。症状は生理前の3日~10日間続き、生理が始まると症状が軽くなったり消えたりします。

PMSが起こる原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響が大きいと考えられています。

この2つのホルモンは、排卵から月経までの期間(黄体期)に多く分泌されていますが、月経が近づく時期に急激に低下します。

このとき、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことがPMSの一因だとされています。そのほか、ストレスなどもPMSの症状悪化の原因となっているとも言われています。

妊娠の兆候と生理前症状(PMS)の見分け方を知りたい!

妊娠初期と生理前はよく似た症状が多くみられます。また、受精卵が子宮に着床したときや子宮外妊娠(異所性妊娠)をしているときなどは、妊娠していても出血することもあります。

妊娠の兆候とPMSの症状のもっとも大きな違いは、基礎体温の高温期が続く期間で、目安としては高温期が2週間以上続くと妊娠の可能性があると言えます。

生理予定日前でも妊娠の兆候が表れることはある?

通常の妊娠検査薬で陽性反応が出るのは、生理予定日の一週間後以降です。早期妊娠検査薬の場合でも、検査できるのは生理予定日当日からとなります。

しかし、「それまで待てない!」「一刻も早く妊娠しているかどうか知りたい」と思う人も多いでしょう。

生理予定日の前のさまざまな症状に「もしかして、妊娠の兆候?」と思ってしまうものですが、これらの症状には個人差があり、誰にでも当てはまるとは限りません。妊娠検査薬で検査可能となる時期まで、過度に神経質になることなく待ちましょう。

妊娠週数の数え方

生理予定日より前の時期を、一般的に「妊娠超初期」と言うことがあります。妊娠週数は、最終生理開始日を妊娠0週0日として数え、4週(28日)ごとに「1ヶ月」とカウントします。

生理周期を28日とした場合、妊娠超初期は妊娠0~3週・妊娠1ヶ月の時期ということになります。この時期、体内ではどのようなことが起こっているのでしょうか。

基礎体温と妊娠周期の数え方の図

まず、0週目はほぼ月経期間と同じです。そして、2週目はじめに排卵がおきます。ここで受精し、3週目ごろに着床すれば妊娠成立ということになります。

ただし妊娠3週目ではまだ妊娠検査薬で正確に検査することは難しいです。妊娠検査薬で検査可能となるのは早くて4週目、すなわち次の月経開始予定日以降となるので、検査によって妊娠が分かるのは、どんなに早くても妊娠2ヶ月以降です。

ちなみに、出産予定日は妊娠10ヶ月、すなわち40週0日となります。

少しでも妊娠の可能性があるのなら

妊娠した場合の症状には個人差があり、人によっては妊娠の兆候に全く気付かなかったというケースもあります。

しかし、排卵日付近にセックスをしているのなら、妊娠の可能性はゼロではありません(生理不順の場合、排卵日がずれることもあります)。

特に、妊娠5~11週ごろは、赤ちゃんの器官が形成される大切な時期ですので、生活には注意を払う必要があります。

1.飲酒と喫煙はやめる

喫煙や飲酒は、流産や胎児の奇形などのリスクを高めます。受動喫煙でも胎児に影響が出ますので、パートナーも禁煙を心掛け、飲食店では分煙のしっかりしているところに入るようにしてください。

2.生肉やナチュラルチーズは避ける。カフェインも控えめに。

妊娠中には感染症にかかりやすくなるため、母体や胎児に影響のある菌を含む食べ物は避けるようにしてください。

たとえば、生肉にはトキソプラズマが含まれており、先天性トキソプラズマ症に感染する可能性があります。ナチュラルチーズにはリステリア菌が含まれており、胎児に感染すると流産など原因となることがあります。

また、カフェインも妊娠中には控えたい成分です。妊娠中のカフェイン過剰摂取によって、生まれてきた赤ちゃんの低体重や将来の健康リスクが高まるとの見解もあります。

妊娠中のカフェイン摂取量に関しては諸説ありますが、コーヒーでいえば1日につきマグカップ2杯程度を目安とするといいでしょう[*1]。

3.ペットや庭いじりには要注意

母体や胎児に影響を及ぼすトキソプラズマは、猫の糞便や土の中にも含まれていることがあります。ペットの排せつ物の処理や庭いじりの際は、手袋を着用しましょう。

4.積極的に摂りたいビタミンと過剰摂取してはいけないビタミン

ビタミンの中でも、葉酸は積極的に摂取してください。妊娠初期、特に妊娠7週頃までには欠かせない栄養素で、不足すると二分脊椎などの神経管閉塞障害のリスクを高めます。

できれば妊娠前から葉酸をとることをおすすめします。葉酸はほうれんそうやブロッコリー等の緑黄色野菜、いちご、納豆などに多く含まれます。こうした食品を意識して摂るよう心がけ、また葉酸についてはサプリメントも上手に使って必要量を摂取することが推奨されています。

一方、ビタミンAの過剰摂取は胎児の先天異常リスクを高めることが報告されています。レバーなどビタミンAを多く含む食品を多くとりすぎたりすることのないようにしましょう。

5.放射線検査を受ける場合は妊娠中(妊娠の可能性)であることを伝える

放射線によって胎児に影響が出るとされる100mGyという線量に比べ、通常日常的に行われている検査の線量は小さいので、検査での被ばくが胎児に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられます。

ただし、胎児の被ばくは慎重に検討する必要がありますので、放射線検査を受ける前には、妊娠中(妊娠の可能性)であることを告げ、医師の判断を仰ぎましょう。

6.薬の服用は医師に相談を

もし妊娠前から習慣的に服用している持病の薬などがある場合は、かかりつけ医に妊娠中(妊娠の可能性)であることを相談し、服用を続けるかどうかの判断を仰いでください。

また、産科以外を受診して薬を処方されるときも、妊娠中(妊娠の可能性)であることを伝えておきましょう。妊娠が分かった後に産科から処方された薬は、用法用量を守って服用すれば問題ありません。

7.妊娠中のセックスは基本的に問題なし

妊娠初期で「妊娠していることに気づかなくてセックスをしてしまった!」と青くなるかもしれませんが、セックス自体が厳禁というわけでは決してありません。気分がすぐれないときやおなかが張っているとき、痛みを感じる場合は無理せずしばらく休んで様子を見ましょう。また、感染症予防のためコンドームの使用を心がけましょう。

8.予防接種はできるものとできないものがある

予防接種には大きく分けて生ワクチンと不活化ワクチンがあります。細菌やウイルスの毒性を弱めて病原性をなくしたもので作られている生ワクチンは、妊娠中は接種しないほうがよいとされています。

一方で、細菌やウイルスの感染能力を失わせたもので作られている不活化ワクチンならば、接種可能です。

代表的な生ワクチンとして挙げられるのは麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)で、不活化ワクチンはインフルエンザワクチンです。いずれにせよ、接種の前に医師に相談したほうがよいでしょう。

9.歯の治療は計画的に

歯科で行われるレントゲンは部分的な照射かつ線量が低く、防護などもされるため、胎児への影響はほとんどないといわれています。

ただし、痛み止めの薬などが処方されることがありますので、歯科を受診した場合でも、妊娠中(妊娠の可能性)であることを伝えましょう。妊娠中は歯が悪くなりやすい傾向にあります。

妊娠中期に入って体調が落ち着いたら健診を受け、虫歯があればなるべく出産までに治療するようにしましょう。

まとめ

妊娠の兆候とPMSは症状による見分けがつきにくいです。妊娠の兆候に関してはさまざまな体験談を聞くかもしれませんが、一定の時期を過ぎなければ妊娠しているかを判定することはできません。ただし、排卵日以降は妊娠している可能性も考えて、食べ物や薬など日常生活にも気をつけて過ごしたほうがよいでしょう。

(文:今井明子/監修:中林稔先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」

日本産科婦人科学会監修「HUMAN+ Baby+ お医者さんが作った妊娠・出産の本」
日本産科婦人科学会編著「女と男のディクショナリー」
馬場一憲「目でみる妊娠と出産」文光堂,p116-117,2015
日本産科婦人科学会「月経前症候群」
池ノ上克他「NEWエッセンシャル産科学・婦人科学第3版」医歯薬出版,p261-263,2004
東京都福祉保健局「母子感染について~妊娠中・これから妊娠を考えている方へ~」
大阪急性期・総合医療センター「妊娠中にエックス線検査を行っても胎児への影響はないでしょうか?」
日本産婦人科医会 研修委員会委員「妊娠・産褥期女性にとって重要なワクチンの知識」

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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