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2018年10月22日 10:18 更新

学資保険は返戻率で決めてはダメ?返戻率の仕組みを知って賢く選ぼう

子供の将来の教育資金準備として加入している方も多い学資保険ですが、多くの保険会社で取り扱いがあるため、どれを選べば良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか?大手保険会社の例を挙げて、学資保険を選ぶポイントの1つとなる返戻率について考えてみましょう。

学資保険の返戻率とは?

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学資保険を選ぶ際のポイントの1つとして挙げられる「返戻率」ですが、その商品の貯蓄性の高さを示すバロメーターとしてよく使われる言葉です。「返戻率」とは支払った保険料に対し、受け取る保険金総額(満期保険金やお祝い金)の割合がどの程度であるかを数値化したものです。計算式は次のとおり簡単です。

返戻率=(満期保険金+お祝い金)÷払込保険料総額×100%

返戻率が100%であれば、支払った保険料と同じ額の保険金を受け取ることになります。学資保険で貯蓄もしたいということで、返戻率が100%を超えていている商品を選ぶ方も多いようですが、実はそこに落とし穴があります。

返戻率と金利は別物

昨今の低金利を理由に、銀行預金をしてもほとんど金利がつかないため、学資保険の方が有利という記事を見かけます。本当にそうなのでしょうか?

本来であれば銀行預金の金利と保険の返戻率は別物のため、単純に比較はできないのです。返戻率を銀行預金の金利と比べるためには、学資保険の保険料と保険金額から計算が必要なのですが、便利なシミュレーションを使って考えていきましょう。

金融広報中央委員会が提供する「知るポルト」というサイトの積立合計額シミュレーションというものを利用します。

〈知るポルト「今すぐシミュレーションしてみよう!」〉
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/sikin/menu/s_tumitate.html

例えば、大手保険会社A社の学資保険で、保険料15,883円を10歳まで払い込むプランの場合、受け取り総額は200万円で返戻率は104.9%になります。これを元におおまかな金利を探ってみます。シミュレーションの毎月積立額欄に15,883円と入力、10年間の支払いで200万円にするには約1.2%の金利が必要ということになります。つまり1.2%の10年定期という商品があれば104.9%の学資保険と同等ということになります。これを高いと思うかどうかは人それぞれですが、返戻率と金利は単純に比較ができないということを覚えておいてください。

返戻率には時間軸がない

ここからが学資保険の最大のデメリットになり得る部分です。

先ほどの計算で、返戻率105%程度の場合、金利は約1.2%でした。現時点だけを見れば、預貯金よりは高いと言えるでしょう。しかし、学資保険というのは少なくとも10年間は支払いを続けるケースが多い商品です。今の低金利のまま、10年以上資金が固定されてしまう、さらには途中で解約するとほぼ元本割れしてしまうというのは大きなリスクです。

返戻率だけを見て決めるのはNG

保険会社各社のパンフレットやホームページには、返戻金の高さをメッセージ性のある文言でアピールしているものが多くあります。例えば、返礼率110%の商品がある場合、契約すれば誰でも返礼率110%の学資保険に該当するのかというとそうではありません。返礼率110%を実現するには、加入する子供や親(契約者)の年齢、保険料を払い終えるタイミング、保険料を受け取るタイミングなどさまざまな条件が重なって可能になります。自分の場合はどのくらいの返戻率になるかシミュレーションしてみる必要があるでしょう。加入を決めた際には、なるべく返戻率が高くなるように工夫することも必要です。これからお伝えする受取時期や支払い方なども参考にしていただいて、いくつかのパターンを試算していただければと思います。

受取時期が重要

学資保険の返戻率は、保険金を受け取る時期によって変動します。保険金の受取りは、満期を迎えたときに受け取れる満期保険金のほかに、祝い金として、満期を迎えるまでにあらかじめ設定された時期に保険金を受け取ることができるものがあります。一般的に祝い金は、保険金総額にプラスされるのではなく、保険金総額から引いて先に受け取る形になるため、祝い金の金額や回数が多ければその分、満期保険金の返戻率は下がる傾向にあります。

ただし、学資保険の保険金というものは、資金を必要としている時期にお金が支払われるということがもっとも重要です。いくら満期金の返戻率が高くても、必要なときに手元にお金がないようでは、意味がないとも言えますね。返戻率だけにとらわれるのではなく、「いつ・いくら受け取りたい」といった出口の計画も必要です。

返戻率を上げる支払い方はどれがベスト?

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同じ保険商品でも、保険料の払い込み方によって返戻率が異なります。返戻率を上げるためには、どのような支払い方法が一番適しているのでしょうか? それぞれのメリット・デメリットを確認してみましょう。

月払い/年払い

保険料の支払い方法で最も多く選択されているのが月払いです。毎月口座から保険料が自動で引き落としになるパターンが主流です。1年分を一括で支払う方法もあります。

年払いは月払いに比べて保険料が少し割安になるケースが一般的です。そのため、年払いにした方が返戻率は上がるでしょう。

年払いのデメリットとしては、契約者に万が一のことがあった場合に、保険料の支払いが今後免除になるという払込免除特約が翌年分からになるという点です。

また、年払いを考えている場合は、支払い月をある程度計算して加入しなければ、他の保険の支払いなどと重なるとまとまったお金が必要になり、毎年その時期は家計が苦しくなってしまうという可能性もあります。

全期前納

「全期前納」は保険料をすべて先に納めてしまい、保険会社に保険料のすべてを預けることを指します。保険会社は預けられたお金を保管し、毎年預かり金から保険料を受け取ったという処理を行います。契約者から見ると、手元からすべての保険料を渡した形になるので、一見すべて「支払った」ように感じられますが、これは一旦「預けた」だけであり、支払ったわけではないというのが、全期前納です。

手元からお金は離れますが、毎年保険料を納めているのと同じことになるため、毎年生命保険料控除を受けることができます。また、契約者に万が一のことがあった場合に、保険料の支払いが以後免除になるという払込免除特約が有効で、前納した保険料で、まだ充当されていなかった分がある場合には返金される点も特徴です。途中解約の際は、解約返戻金と未経過の払込期間分の保険料も返金されます。

一時払い

一時払いは、前期全納のように保険会社に保険料を預けるのではなく、すべての保険料を先に「支払って」しまうことを指します。保険料の割引率が高い点が特徴で、結果的に返戻率を上げることができます。

ただしデメリットとして、すべての保険料を払い込んでいるため、契約者に万が一のことがあっても払込免除特約には該当しません。また、途中解約した場合も解約返戻金は戻ってきますが、それ以外の保険料が返金されることはありません。保険料を1回で支払うことになるため、生命保険料控除も支払った年1回だけが適用になります。

結論、学資保険の支払い方は、月払いか年払いというのが無難ではないでしょうか。払込期間が短いほど返戻率も高くなりますが、その分毎月の保険料は高くなります。家計にとって短期的な負担が増えることになるため、事前に収支のバランスをしっかり考える必要があります。

大手保険会社の返戻率を比較

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では実際に、どのような学資保険があり、それぞれの返戻率がどの程度なのかチェックしてみましょう。

かんぽ生命「はじめのかんぽ」

郵便局の学資保険として人気の「はじめのかんぽ」。現在は郵政民営化にともない郵便局から独立した株式会社かんぽ生命保険が運営しています。

保険料を改定したことによって、多くの商品は返戻率100%を切り、90%台のものが大半となってしまいましたが、保険金の受取時期と払い込み満了年齢、補償内容の組み合わせによって、返戻率を改善することができます。

「はじめのかんぽ」を検討している場合は、コースやプランの組み合わせ方などをチェックし、返戻率を上げるポイントを確認してから加入することをおすすめします。

受取学資金:200万円 払い込み:最短12年 契約者:30歳男性 被保険者:0歳 男の子 学資金の受け取り時期:18歳として計算したプラン結果です。

・返戻率: 97%(受取学資総額200万円/12年払込契約)
・上記の場合の月額保険料:14,320円

●かんぽ生命ホームページより
http://www.jp-life.japanpost.jp/products/lineup/gaksi/prd_lu_gks_index.html

明治安田生命「つみたて学資」

保険料の払い込みが早期に終了する明治安田生命の「つみたて学資」は、高い返戻率をキープしていることから人気があります。 

受取学資金:200万円 払い込み:最短10年 契約者:30歳男性 被保険者:0歳 男の子 学資金の受け取り時期:18歳〜22歳として計算したプラン結果です。

・返戻率: 104.7%(受取学資総額200万円/10年払込契約)
・上記の場合の月額保険料:15,910円

●明治安田生命ホームページより
http://www.meijiyasuda.co.jp/find2/light/list/tumitategakushi/

ソニー生命「学資保険スクエア」

ソニー生命「学資保険スクエア」Ⅲ型は、18歳からの毎年計4回の進学学資金と22満期学資金が均等割りで支払われるため、1回に受け取れる保険金の金額はやや少なめのタイプです。

受取学資金:175万円万円 払い込み:最短10年 契約者:30歳男性 被保険者:0歳 男の子 学資金の受け取り時期:18歳〜22歳として計算したプランです。

・ 返戻率:107.2%(受取学資金総額175万円/10年払込契約)
・ 上記の場合の月額保険料:13,597円

●ソニー生命ホームページより
http://www.sonylife.co.jp/gakushi/

まとめ

学資保険選びの大きなポイントとなる返戻率ですが、その数値にとらわれる過ぎることなく、教育資金が必要な時に、必要な金額を受け取れることがもっとも重要だと言えます。ご自身のライフプランに合わせて、無理のない保険料で今後も掛け続けられるのかどうか、将来必要な時にきちんと資金が受け取れるのかどうか、などを加入前にしっかり確認しておきましょう。

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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