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2021年01月27日 14:14 更新

【医師監修】うちの子に黄疸が! 知っておきたい新生児黄疸の原因と治療

肌や白目などが黄色っぽくなる「黄疸」(おうだん)。新生児黄疸はほとんどが生理的なもので自然になくなっていきますが、自然に治らないケースもあり、その場合は適切な治療をしないといけません。赤ちゃんの黄疸について、その原因と治療法などをご紹介します。

新生児黄疸とは

新生児黄疸の疑いがある赤ちゃんには原因がある
Lazy dummy

まずは、黄疸とは具体的にどのような症状か。また、新生児黄疸とは何かについて見ていきましょう。

黄疸って何?

黄疸とは、皮膚や白目(詳しくは眼球結膜:白目を覆っている粘膜のこと)などが黄色っぽく見える状態です。これは、血液中にビリルビンという物質が増えることで起こります。ビリルビンは、血液中のヘモグロビンが代謝されたときにできる物質ですが、通常は肝臓に運ばれて便の中に排出されます。しかし、これが何らかの理由で排出されないと、黄疸という症状で現れることがあります。

赤ちゃんがなる新生児黄疸って何?

新生児黄疸とは、その名の通り新生児(赤ちゃん)に見られる黄疸です。珍しい現象ではなく、生理的黄疸は新生児のおよそ90%に見られる症状と言われています[*1]。これは、新生児は肝臓の働きが未熟で、まだビリルビンを上手に処理できないためです。

新生児黄疸はいつからいつまで?

生理的黄疸は、生後2~3日頃から現れて4~5日目にピークを迎え、7日目以降は自然となくなっていきます。ただし、自然に治らないこともあり、その場合は病院での診断・治療が必要です。

新生児黄疸の症状と特徴

では、新生児黄疸にはどのような特徴があるのでしょうか。生理的黄疸と他の原因が疑われる黄疸、それぞれの症状の現れ方や経過などについてお伝えします。

生理的黄疸の主な特徴

・生後数日以内(多くは2~3日後)にまず白目が、次いで肌が黄色くなる。
・7日目以降は自然と消失していく。

これが、目に見える主な特徴です。この他、病院では血液中のビリルビン値、1日の上昇度なども見て、問題がないかどうかを総合的に診断します。

病気が疑われる黄疸の特徴(症状の一例)

以下のような場合は、生理的なもの以外の原因が疑われる黄疸です。すべての症状が見られるわけではなく、どのような症状が現れるかは原因によって変わってきます。

・生後24時間以内に黄疸が現れる
・黄疸が生後1週間以上(成熟児)、生後2週間以上(未熟児)消えない
・黄疸が急速に悪化する

黄疸と共に以下のような症状が見られる場合も、注意が必要です。

・半ば眠ったような状態でほとんど反応がなかったり、逆にささいなことで敏感に反応する状態が続く
・哺乳がうまくできない、もしくは飲まない
・呼吸困難や発熱がある
・うんちの色が白っぽい(母子健康手帳にある便色のカード)
・筋肉の緊張が強い

後遺症や命の危険がある場合も?

黄疸の原因となるビリルビンの血中濃度が高いままだと、後遺症が残る可能性もあります。これは、ビリルビンが脳へ入り込み、脳の細胞に沈着して神経障害を起こすためで、これを「核黄疸(かくおうだん=ビリルビン脳症)」と呼びます。全身がぐったりして反応が少なかったり、哺乳力が弱い場合は、特に注意が必要です。核黄疸が進むと、四肢の強直(=つっぱり)や体の反り、落陽現象(黒目の一部が下のまぶたに隠れている状態)が起こり、やがてはチアノーゼ(肌などが青黒くなること)やけいれんが見られるようになります。核黄疸は場合によっては命を落とす可能性もあるので、おかしいと感じたらすぐに医療機関を受診してください。

新生児黄疸の主な原因

原因が血液型のこともある新生児黄疸
Lazy dummy

新生児黄疸の一般的な原因には、大きく3つが挙げられます。代表的なものを具体的に見ていきましょう。

生理的黄疸

肝臓の働きが未熟なためなどから起こる黄疸で、どの新生児にも見られる可能性があります。消化管と肝臓の機能が発達するに伴い自然に消失するので、特に心配はありません。

また、母乳がしっかり飲めていない場合にも黄疸が出ることがあります。ほとんどの場合、母乳がまだ十分に分泌されないことが要因となります。哺乳量が少ないと排便回数も少なくなるので、ビリルビンの排出が滞り、黄疸が現れるのです。この場合も哺乳量が増えるに伴い自然に治ります。

母乳性黄疸

母乳で赤ちゃんを育てると黄疸が長引くケースがあり、これを「母乳性黄疸」と呼びます。通常、生理的黄疸は2週間前後でなくなっていきますが、2週目まで続くのはミルクよりも母乳で育てた赤ちゃんに多いといわれます。また、長ければ1~3ヶ月近く症状が続くこともあります。母乳を中止するとビリルビン値は下がり、黄疸もよくなりますが、母乳を中止する必要はないと考えられています。心配な場合は医師に相談しましょう。

血液型不適合による黄疸

ママと赤ちゃんの血液型が異なる場合、それが黄疸の原因となることがあります。血液型が違うと、ママの抗体が胎盤を通って赤ちゃんの赤血球を攻撃し、破壊してしまうためです。ビリルビンは赤血球が壊れるときにヘモグロビンから代謝される物質なので、多くの赤血球が破壊されると、それだけ血液中のビリルビンも多くなり、黄疸が引き起こされやすくなるのです。

血液型不適合による黄疸には、ABO型不適合とRhD型不適合の2種類が知られています。ABO型不適合は、ママがO型で赤ちゃんがA型またはB型のときに起こりやすいといわれます。ABO型不適合は、RhD型不適合より頻度は高いですが、重症になることは少ないとされます。RhD型不適合は、頻度は少ないですが、重症になるケースが多く、輸血により体内の血液をすべて入れ替えることもあります。

これらの他、まれではありますが胆道閉鎖症などの胆管の先天異常(うんちが白っぽくなる症状が見られます)や、細菌感染、甲状腺機能の低下などでも黄疸が見られることがあります。

黄疸の治療について

新生児黄疸の原因を調べるために聴診器で診察を受ける赤ちゃん
Lazy dummy

生理的なもので自然に治る場合は、治療の必要はありません。頻繁に授乳して排便回数を増やし、ビリルビンの排出を促すことで黄疸の予防や緩和、早期治癒につなげるのが一般的な対策です。母乳性黄疸も、症状は長引きますが治療は必要ないと言われています。

母乳性黄疸は、ビリルビン値が高めになりますが、光線療法の適応となる値や核黄疸を発症するレベルになることはほとんどありませんが、場合によっては一時的に母乳を中止することもあります。

治療が必要となるのは、血液型不適合による黄疸や胆道閉鎖症などの先天異常による黄疸、感染症による黄疸など、自然治癒が見込めない病的黄疸です。

どんな治療があるの? 光線治療と交換輸血について

病的黄疸の主な治療法は、光線療法と交換輸血です。光線療法とは、特定の波長の光によって血液中のビリルビンを分解して濃度を下げる治療法です。具体的には、赤ちゃんをオムツだけはいた裸の状態にして青白色や緑色の光源を浴びせます。これにより、ビリルビンが水溶性となり胆汁や腎臓などから排泄されやすくなります。

ビリルビン値がとても高く、光線療法が効かない場合(重度の高ビリルビン血症のケース)は、血液を交換する治療(交換輸血)や、グロブリンを投与することが行われます。

赤ちゃんに治療の影響はない? 目は大丈夫?

光線療法は基本的には安全な治療法ですが、失明や視力の低下を防ぐために光が当たらないように目隠し(アイマスク)をして行います。病院によっては、光線を足元から当てることで、目に当たる量を極力抑える工夫をしているところもあるようです。なお、下痢や発疹などの副作用が起こる可能性があるため、兆候をいち早く察知できるよう観察を行いながら進められます。光線により脱水になる可能性もあるので、適切なタイミングで授乳を行います。

まとめ

黄疸は、新生児にはよく見られる症状です。生理的なものがほとんどなので特に心配はありませんが、まれに病気が潜んでいる場合もあります。症状が長引くなど通常の経過と異なったり、黄疸とともに発熱や哺乳不良などの気になる症状が見られるときは、すぐに医療機関を受診してください。病的黄疸の場合は、早期に治療を始めることで後遺症の可能性を低くすることができます。大切なのは、いつもと違うかな? ということにいち早く気づくことです。赤ちゃんの様子をこまめに観察し、異変があったときは慌てず適切に対応しましょう。

※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.27)

※記事の修正を行いました(2019.06.12)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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