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【医師取材】ハンセン病の症状と感染経路、治療方法は? 完治する?

【医師取材】ハンセン病の症状と感染経路、治療方法は? 完治する?

ジブリ映画にも登場した感染症「ハンセン病」。これまで多くの患者さんが苦しめられてきましたが、現在では完治も可能です。今回は、ハンセン病の歴史とともに、その症状や原因、治療法についてもご紹介します。


この記事の取材先ドクター
武田クリニック 武田寿之院長
当院では、出来る限り患者さんの目線になってお話を伺うことを大切にしています。
ささいなことでも何でも相談していただき、本当の意味での「家庭医」を目指しております。
http://www.nerima-med.or.jp/kikan/byoin/kobetsu_base.php?id=235/

ハンセン病を知ろう

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ハンセン病とは

ハンセン病とは「らい菌」という細菌による感染症。主に皮膚と末梢神経が侵される慢性感染症です。遺伝する病気ではなく、現在ではほとんど新規患者もおらず、完治も可能となっています。

ハンセン病の歴史とは

ハンセン病は歴史上もっとも古くから知られ、また外見に変形をきたすことがあるために、多くの人達から恐れられた病気です。まだ当時はハンセン病の原因や病態が分かりませんでしたから、ハンセン病患者は隔離された病気だったのです。

明治時代に入り「癩予防法」の法律が制定され、患者さんは隔離されハンセン病患者の人権が大きく侵害されました。第二次大戦後も「らい予防法」が制定され、苦難の歴史は続きました。そんな中、療養所で暮らす元患者らの努力等によって「らい予防法」は1996年に廃止されたのです。現在の国内患者さんは、在日外国人を含めても年間数名程度で、患者さんは高齢化しています。1950年代前半をピークに、国内の新規患者数は減少し続け、1975〜1979年の時点で500人を切っています。

ハンセン病の描写がある人気アニメ

スタジオジブリの長編アニメーション映画『もののけ姫』。その中には、ハンセン病患者と思われる人が登場するシーンがあります。実際に、宮崎駿監督自身が「ハンセン病の歴史を語る 人類遺産世界会議」(2016)において、同作に登場した「ハンセン病(業病)患者らしき人々」を描いたことについて語っています。これほど身近で、有名なアニメ作品の中にハンセン病が描かれたことは、大変意義深いことと言えるでしょう。

『もののけ姫』のキャッチコピーは「生きろ」でした。昔から、ハンセン病を抱えながらも、一生懸命に生き抜いた人たちがいたことを想うと、監督が『もののけ姫』で描きたかったことの本質が、理解できるような気がします。

ハンセン病の症状とは

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皮膚と末梢神経への感染症

皮膚症状は赤い斑紋(紅斑)や環状に皮膚が盛り上がる症状(環状斑)が出るなど多彩で、当初はすぐに診断することは困難です。皮疹にはかゆみはなく、知覚(触った感じ、痛み、温度感覚など)の低下などを認めて、気づかないうちにケガやヤケドなどを負うこともあります。自覚症状がないために「それほど深刻ではなさそう」と感じてしまい、治療が遅れる恐れがあります。また末梢神経障害が進行すると、物をつかんだりする運動の障害を伴うこともあります。

菌の宿主(らい菌に感染した人)によって多様な反応があっている点は、他の病気とは違う、ハンセン病の際立った特徴と言えるでしょう。また、らい菌の検出のしやすさによって「少菌型」(PB)と多菌型 (MB)に分類されており、治療法の選択に際しても1つの目安となります。

治療が遅れるとどうなるのか

診断や治療が遅れると、主に指、手、足などに知覚まひや変形などの後遺症が残ります。そのため、できるだけ早期に初診し、適切な対処をする必要があります。

ハンセン病にかかる原因とは

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らい菌によっておこる病気

19世紀にノルウェー人医師・ハンセンによって発見された「らい菌」。ハンセン病の原因となる菌で「抗酸菌」の一種です。菌に毒力はなく、その感染力も実は極めて弱いものです。そのためもちろん、ハンセン病は「遺伝病」ではありません。

免疫力、抵抗力が弱い時に発病しやすい

ハンセン病は、感染しても、簡単に発病する病気ではありません。らい菌の感染力が極めて弱いことはすでにご紹介しました。したがって、乳幼児期にたくさんの量のらい菌を頻繁に口や鼻から吸い込む(主に呼吸器感染)以外、まず発病しません。なお、小児期以後の人が感染しても現在の日本では発症することはまずありません。

感染経路はどこから!?

ハンセン病はこれまで「接触感染」すると考えられてきました。そのため、患者さんの隔離処置等がとられてきたのです。しかし現在では、主な感染経路は「飛沫感染」と言われています。このように、ハンセン病は感染症ではありますが、日本において感染源になる患者がほとんどいないために、実際に感染する心配はありません。

ハンセン病の治療方法とは

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ハンセン病の診断基準とは

ハンセン病では「病原診断」(検査)を実施し、診断の基準とします。以下、ハンセン病の具体的な診断基準をご紹介します。

■「らい菌」の検出
「病理組織検査(皮膚や神経をメスで採取)」「皮膚スメア検査」「PCR検査」のいずれか、もしくは全てを実施して、らい菌を検出します。

■知覚の検査
神経伝導の速さ、痛覚、触覚、温度に対する感覚などを検査します。

■神経学的な検査
運動障害や神経の肥厚について検査します。

■抗PGL-I抗体の検査
感染に関して、補助的な検査として利用されます。

今ではほとんどが完治するハンセン病

現在は毎年数人程度の新規患者が出ますが、大量に排出している患者さんはいません。現在は完治できる病気であり、国内では年に数人しか新規患者さんが出ていません。

多剤併用療法で完治

ハンセン病の完治には原因菌である「ライ菌」の排除が必要となります。そのための薬が存在しますので、外来受診することで、薬を服用してもらい、きちんと飲み続けることで完治が期待できます。ハンセン病の具体的な薬は以下の通りです。

・リファンピシン(RFP)
・サルファ剤(DDS)
・クロファジミン(CLF)

以上は全て抗菌薬で、それらを組み合わせたものが、WHO (世界保健機構)も推奨する「多剤併用療法(MDT)」と呼ばれるものです。少菌型患者(PB)の場合であれば半年間の継続服用、多菌型患者(MB)の場合であれば数年間の継続服用によって治癒が期待できます。神経炎が出ている場合には、ステロイド内服薬も併用しながら炎症抑制に努めます。

定期的な通院が必要

らい菌の排除は継続的な薬剤の服用によって可能です。しかし、治療後の経過観察はとても大切なことですので、定期的な診察を忘れずに受けるようにしましょう。虹彩毛様体炎、神経炎などについては、治療から数年経って発生するケースもあります。そうでなくても、殺菌から1年前後は「らい反応」が起こりやすいと考えられますので、きちんと意識しておくことが重要です。

まとめ

日本人の新規患者数は、例年「数名ほど」ということで、「ハンセン病」という名前すら聞いたことがないという子どもたちもいるでしょう。しかし、世界に目を向ければ、衛生状態の良くない後進国などを中心に、年間およそ22万人の新規患者さんが出ているのです。世界的に根絶された病気ではありませんので、特に、免疫力の弱い乳幼児や高齢者で何か心配な点がある場合には、早めに医師にご相談されることをおすすめします。

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