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2021年01月09日 15:36 更新

【医師監修】熱性けいれんとてんかんの違いとは?

熱性けいれんとは、発熱とともにけいれんなどの発作を起こす、子供に多い病気です。けいれんの症状は激しく、はじめてけいれん発作を見たママやパパが動揺してしまうのも無理はありません。2015年に日本小児神経学会によって改訂された、熱性けいれんの診療ガイドラインに沿って、熱性けいれんについての基本的な情報を紹介します。

子供に多い熱性けいれんとは

熱性けいれんとてんかんには違いがあるので医師に診察してもらう赤ちゃん
Lazy dummy

※画像はイメージです

熱性けいれんは生後6ヶ月から5歳までの子供に発生しやすい発作性疾患です。通常は高熱が出ている時に起こるので、38℃以上の発熱があるときは用心しましょう。しかし、熱性けいれんの多くは良性の疾患で、特別に心配する必要はない場合がほとんどです。

20人に1人は熱性けいれんを経験

あまり知られていませんが、熱性けいれんは子供によくある身近な病気です。日本では5%程度の子供が経験すると言われていて、決して珍しい病気ではありません。中枢神経感染症や代謝異常など、発作の原因になる疾患がなく、てんかんと診断されたこともない場合で、高熱(通常38℃以上)とともに「突然意識がなくなる」「白目をむいて身体を反らせるようにかたくする」「手足をガクガクと震わせる」といった発作が起きた場合、熱性けいれんと診断されます。はっきりした原因はまだ突き止められていませんが、子供は脳が未熟なため、高熱で脳に何らかのトラブルが起こり、発作が引き起こされるのではないかと考えられています。

単純型と複雑型、熱性けいれんの種類は2つ

熱性けいれんは単純型と複雑型の2種類に分類されます。

■単純型熱性けいれん

熱性けいれんのうちのほとんどは単純型熱性けいれんです。左右対称の全身の震えが起き、2分ぐらいで治まります。15分以上続くことはありません。また、24時間以内に何度もけいれんが起きることはありません。

■複雑型熱性けいれん

次の3条件のうちのどれかに当てはまる場合は、複雑型熱性けいれんです。
・全身ではなく、身体の片方だけなど、部分的にけいれんが起こる場合。
・15分以上全身の震えが続く場合。
・一度発熱してから下がるまでの間、通常は24時間以内に、2回以上発作が起きる場合
逆に言えば、上のどれにもあてはまらない場合が、単純型熱性けいれんとなります。

また、単純型、複雑型、という分類とは別に、長時間発作がおさまらない場合など、治療が必要になるかもしれない状態を、熱性けいれん重積(じゅうせき)状態といいます。

■熱性けいれん重積状態

長時間発作が続く熱性けいれん、または、発作が複数起こり、その間に脳の機能が回復しない熱性けいれんを、熱性けいれん重積状態といいます。どこから「長時間」とするかには議論があり、脳障害を引き起こしてしまう可能性のある時間としては30分以上と定義されることが多いようです。しかし、日本小児神経学会の「熱性けいれん診療ガイドライン2015」[*1]では、多くの発作は5~10分以内に止まることが多く、それ以上続く場合は治療を行わなければ30分以上続く可能性が高いことなどから、発作が5分以上持続している場合は、薬物による治療開始を考慮すべきとしています。

てんかん発作が起きやすい子供とは

熱性けいれんと同様にけいれん発作が起こる病気として、てんかんがあります。熱性けいれんを起こした子供は、後々てんかんに移行する確率がやや高いと言われています。ただし、熱性けいれんを起こした子供の90%以上は、てんかんを発症しません。また、熱性けいれんを起こしたせいでてんかんを発症するのではなく、てんかんの発症をあらかじめ予防できるものでもないようです。日本小児神経学会の「熱性けいれん診療ガイドライン2015」」[*1]では、「熱性けいれん時にてんかん発症をあらかじめ予測することは、実地臨床上は無意味といえる」としています。なお、てんかんと関連するのは、熱性けいれんのなかでも複雑型のものです。

熱性けいれんで死亡する可能性は?

熱性けいれんの症状は激しいので、一瞬我が子の死を連想してしまうパパ・ママもいるかもしれません。しかし、熱性けいれんは前述のように20人に1人がかかるともいわれるありふれたもので、命にかかわるようなケースはきわめて珍しいと考えてください。そもそも、熱性けいれんのほとんどは、おさまってしまえば特に問題のない良性の疾患です。また、稀に死亡したケースも、特に小児では、純粋に熱性けいれんが死因になったというより、他の疾患(例えば急性脳炎・脳症、脳血管障害など)が原因で生命が奪われていることが大半です。よほどのことがない限り、熱性けいれんで死亡することはない、と考えて問題ありません。

いきなり熱性けいれんの発作が! 対処法は?

夜中でも救急車を呼ぶべき?

子供のけいれん発作は深刻な事態に繋がることも多いので、5分以上発作が続いている時は夜中でも救急車を呼んだほうが安心です。基本的に良性疾患とされる熱性けいれんは、1~2分で症状が落ち着くケースが大半です。5分以上続いている場合は、治療が必要になるかもしれません。また、15分以上発作が続けば、複雑型熱性けいれんとされますが、それから救急車を呼ぶと手遅れになる可能性があります。複雑型の徴候である部分発作が出ている時、発作が繰り返し起きる時も、緊急性が高いと判断できます。また、発作が治まっても意識が戻らない場合、けいれん発作が初めての場合、1歳になる前の乳児の場合、38℃以下と高熱ではないのに発作を起こしている時も、念のため病院を受診させて下さい。

・かかりつけ医や小児救急電話相談(#8000)に相談しよう

熱性けいれんのほとんどは、安静にしていれば心配ない……と言われても、けいれん発作を起こした子供を前に、冷静でいるのは難しいでしょう。救急車を呼ぶべきかどうか判断できない時は、まずはかかりつけの小児科医に電話して相談してみるといいでしょう。あるいは、小児救急電話相談に相談することもできます。症状を伝えれば医療関係者が的確な対処法を教えてくれます。

熱性けいれんの症状が見られたときの対応方法

子供が熱性けいれんで震え始めたら、とにかく気持ちを落ち着け、まずは時計を見て時間をはかりましょう。首の周りを締めつけないよう、子供の洋服を緩めてあげて下さい。心配なあまり思わず抱き抱えてしまうパパ・ママもいるかもしれませんが、平らなところに寝かせてあげるのが正しい対処法です。吐いてしまうことがあるので、顔を横に向けて気道が吐瀉物(としゃぶつ)などで詰まらないようにして下さい。口や鼻の周りが吐いたもので汚れている時は、きれいに拭き取ってあげましょう。
多くの場合は、5分以内に発作は止まり、いったん意識が戻って(泣くことも多いです)、その後は寝てしまいます。すぐに発作が止まり、顔色がよく、規則正しく呼吸をしているようであれば、少し様子をみてから、翌日以降に病院に連れていくのでもいいでしょう。不安があれば、かかりつけ医や小児救急電話相談 (#8000)に連絡しましょう。

・動画が役立つ

もし大人が2人以上いる場合、可能であれば1人は動画で発作の様子を撮影すると、診察時、診断の役に立ちます。けいれんが起きているのが全身かどうか、時間の間隔、熱など、細かい部分まで観察し、記録に残しておくとてんかんなど他の病気と区別しやすくなります。

「割り箸を口に入れて舌を噛むのを防ぐ」は間違い

ひと昔前は、けいれんが起きたら割り箸やタオルを口の中に入れて舌を噛むのを防ぐ、という考えがありました。しかし、割り箸で口の中や喉を傷つけてしまう恐れもあるうえ、嘔吐を招く可能性もあり、口の中に物を入れるのは間違った対処法です。
また、大声で名前を呼びながら身体を揺すってしまうケースも目立ちますが、逆に刺激となって症状が長引く可能性があります。水を飲ませるのもよくありません。落ち着くまで隣で見守っているようにして下さい。

繰り返す可能性は? 熱性けいれんは予防できる?

子供がけいれんする姿は二度と見たくないものです。果たして、熱性けいれんは再発するのでしょうか。

熱性けいれんの再発率

一度熱性けいれんの発作が起きると、熱が出る度に「またあの症状が?」と心配になってしまいますよね。熱性けいれんの再発率は約30%で、発作を起こした子供の大半が2回目の発作を経験していません。
ただし、次の4つのどれかにあてはまる場合は、再発確率が2倍以上に高くなるといわれています。
・両親のどちらかが熱性けいれんになったことがある。
・1歳未満で熱性けいれんになった。
・発熱してから発作が起こるまでの間隔が短かった(おおむね1時間以内)。
・発作時の体温が39℃以下。
熱性けいれんの再発を防ぐために有効な薬としてはダイアップ(ジアゼパム)があります。以前は発熱に備えて処方されることも多かったのですが、副作用も指摘されており、現在では処方条件が厳しくなっています。医師の指示に従いましょう。

解熱薬はけいれんを誘発する?

熱性けいれんは発熱にともなって起きるので、発熱時に解熱薬を使って熱を下げれば熱性けいれんの再発を避けられるのではと考える方もいるかもしれません。しかし今のところ、発熱時の解熱薬使用が熱性けいれん再発を予防できるという確かな研究成果はありません。熱性けいれんの再発を防ぐ目的で、解熱薬を飲ませることは避けましょう。
では、逆に解熱薬が熱性けいれんを引き起こすことはあるのでしょうか? 実は、これも根拠がないとされています。つまり、一度熱性けいれんを発症したからといって、解熱薬を使用するタイミングを変える必要はないのです。熱性けいれんになる前と同じように、発熱していても元気であったり、37.5℃以下であるならば、解熱薬は使用しなくてもよいでしょう。解熱薬を使用する場合は、医師の指導のもと、注意事項をよく守って使用しましょう。

インフルエンザワクチンは予防効果がある?

熱性けいれんは熱が出た時に症状が起きるので、高熱が出るインフルエンザ発症中に発作が引き起こされるケースは少なくありません。そこで、インフルエンザワクチンを接種してインフルエンザ自体を予防すれば、その分熱性けいれんが起きる可能性を減らすことができます。「熱性けいれん診療ガイドライン2015」」[*1]ではけいれんが起きてから、2ヶ月から3ヶ月後には接種しても差し支えないとされています。12月頃からはじまる流行期に入る前に担当医に早めに接種できないかどうか、相談してみて下さい。

まとめ

熱性けいれんは子供に起こりやすいので、高熱が出た時は注意が必要です。ほとんどは安静にしていれば良くなりますが、5分以上けいれんが続いた時など、緊急性が高い時は救急車を呼んで下さい。

※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.06.11)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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