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2021年01月29日 11:17 更新

【医師監修】喘息? 肺炎? 幼児の咳をしているときの受診目安とホームケア5つ

子供は風邪などでよく咳をするものです。でも辛そうに咳をしていると、ただの風邪ではなく、喘息や肺炎なのでは? と心配になりますね。苦しそうな姿を前に慌てないよう、受診の目安とホームケアの方法を知っておきましょう。

まずは幼児に出る咳の種類をチェック

咳をする子供
Lazy dummy

お子さんが咳をしていると、まずは風邪を心配されることが多いのではないでしょうか。実際、子供の咳のほとんどは風邪などの急性呼吸器感染症によるもので、大多数は1、2週間で治まります[*1]。

そもそも咳は、喉に過剰な刺激が加わったときに発生するもので、分泌物や異物を体の外へ出そうとする生体防御反応です。刺激となるものには、痰や誤って吸い込んだ異物、刺激性のガスなどがあり、咳の原因は風邪が大部分を占めますが、そのほかにもさまざまなものがあります。

特に1〜2歳ごろは誤って異物を飲んでしまうことで気道が詰まり、咳をするようになることもあります。その場合は緊急の治療が必要になります。また、アレルギーによるアナフィラキシーや急性喉頭蓋炎(インフルエンザ菌などによりのどが腫れあがり、窒息する可能性がある)による咳の場合も緊急に治療が必要です。

長引く咳は気管支喘息や副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎など継続的な治療が必要な病気が原因となっていることも。さらに、心理的なストレスで咳が続くこともあります[*1, 2]。

このように原因はさまざまですが、咳は咳込む時の音によって3つに分けられます。

軽くコンコンという乾いた咳……乾性咳嗽

痰を伴わず「コンコン」という咳を乾性咳嗽(かんせいがいそう)といいます。この咳が出るときは、風邪のほか、気管支喘息、咳喘息、アトピー性咳嗽や気管支内異物、心因性の咳などが考えられます。

痰が絡んでゴホン、ゴホンという湿った咳……湿性咳嗽

痰が絡む咳は湿性咳嗽(しっせいがいそう)と呼ばれます。「ゴホン、ゴホン」という音が特徴です。

痰が出るときは、痰の色も診断の目安になります。黄~緑色の痰があるときは呼吸器の感染症(気管支炎、肺炎など)や気管支拡張症が疑われます。

痰に血が混じるときは上気道の粘膜が傷ついたことによる出血が多く、ついで肺炎や気管支炎でも出血することがあります。色がついていない痰は、アレルギーや呼吸器感染症の初期に見られます。

乾性咳嗽か湿性咳嗽かによって病気を分けられるものではなく、同じ病気でも乾性咳嗽が出ることもあれば、湿性咳嗽が出ることもありますまた、例えば、急性気管支炎は発熱と乾性咳嗽で始まり、次第に湿性咳嗽へ変化することが多いですが、病気の経過によって痰の有無が変わってくることもあります。

犬が吠えるようにケン、ケンと聞こえる咳……犬吠様咳嗽

犬が吠えるよう、動物の鳴き声のようといわれる「ケン、ケン」という咳は、犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)というものです。この咳は、クループ症候群という病気の時によくみられます。

クループ症候群は喉の奥が炎症で腫れる病気の総称で、ウイルス感染による喉頭気管気管支炎、喉頭蓋炎、アレルギーによる浮腫、異物や腫瘍による閉塞などによって起こります。

症状は犬吠様咳嗽に加え、吸気性喘鳴(きゅうきせいぜんめい。息を吸うときにキューキューといった大きな呼吸音が聞こえる)、嗄声(させい。声がかれること)、呼吸困難などが起こります。

軽い場合は水分補給や空気の加湿で改善することがありますが、急激に悪化することがあるので、この咳が出たら速やかに受診しましょう。

咳がひどいとき、受診するかどうかの目安

多くは風邪の症状でほとんどは1、2週間で良くなるといっても、やはり咳がひどいときはすぐ受診するべきか迷ってしまいますね。受診の目安を知って、適切なタイミングで診療を受けましょう。

時間外でもすぐに受診

咳がひどいとき心配なのは、呼吸困難(呼吸が苦しい状態)になることです。下記の様子が見られたら、夜間や休日でもすぐに受診しましょう[*2]。

・顔色が悪い
・近くにいてゼーゼーと音がするのが聞こえる
・肩を上下させて呼吸している(肩呼吸)
・鼻の穴が息を吸うたびに広がりピクピクしている(鼻翼呼吸)
・鎖骨の上や肋骨の下がくぼんでいる(陥没呼吸)
・咳がひどくて嘔吐してしまい、食事がとれない
・咳で眠れない

診療時間内に受診

咳が多いけれど、水分や食事がとれているとき、横になって眠れるようなときは、診療時間内に小児科を受診しましょう。また、特に生活に支障がないように見えても、咳が長引いているときは受診してください。︎

しばらく様子を見ても大丈夫なとき

乾いた咳が出ているが、発熱などほかの症状がなく、機嫌よく過ごせているのであれば、自宅で様子を見てもいいでしょう。悪化したとき、長引くときは受診を検討しましょう。

咳で辛そうな幼児に家庭でできる5つの対策

咳をする子供のケアのイメージ
Lazy dummy

咳が出て辛そうにしているとき、家でできる対策を紹介します。

1.部屋を加湿する

室内が乾燥していると咳が出やすくなるので、加湿器で加湿をしましょう。湿度は50〜60%にします。加湿器がない場合は、洗濯物を干す、濡れタオルを干すだけでも湿度が上がります。また、マスクをすると喉の保湿に役立ちます[*2]。

2.水分を少しずつ摂らせる

喉を保湿するため、痰の切れを良くするために、少しずつ水分を摂らせます。咳が落ち着いているときに、湯冷ましやお茶などを、スプーンを使って一口ずつあげましょう。

3.鼻水を吸う

鼻水が多いときは、鼻吸い器を使って吸い出してあげましょう。鼻水が喉へ垂れることで咳がでている場合、鼻水を吸えば咳を減らしてあげることができます。

4.部屋の空気をきれいに

ホコリやタバコの煙も咳の原因になります。ホコリがたたないように部屋を掃除して、こまめに換気をするか、空気清浄機を使って空気をきれいにしましょう。

また、子供に咳があるときは同じ部屋でタバコを吸わないようにしてください。できれば家族は禁煙しましょう。

5.寝る姿勢を調節する

横になるときは、呼吸が楽な姿勢を心がけましょう。背中にクッションなどを置き、上体を少し起こします。こうして顎が上がるようにすると、気道が開いて呼吸しやすくなります。

また、座った姿勢や縦抱きの姿勢も呼吸が楽な姿勢です。咳き込んで辛そうなときは座らせるか縦に抱っこしてあげましょう。

幼児の咳のよくある疑問

咳に関するよくある疑問にお答えします。

夜中になると咳がひどくなるのはなぜ?

咳をする子供
Lazy dummy

気管支喘息、咳喘息、アトピー性咳嗽などでは、夜中や明け方に咳がひどくなることがあります。

寝ている間は副交感神経(体をやすめる神経)が優位になることで気管が細くなるので、咳が出やすくなり、気管支喘息、咳喘息の発作が起こりやすくなります。

また、鼻炎や副鼻腔炎、咽頭炎のときは、就寝時に仰向けの姿勢になることで鼻の奥から喉へ鼻水が流れ落ちることで咳をしやすくなります。

また布団に入ることで、体が温まり咳が出やすくなったり、寝具についたホコリの影響で咳が出やすくなることも考えられます。

咳で受診したのに咳止め薬を処方してもらえないのはなぜ?

咳は気道の病原体や異物を体の外へ出そうとする反射(意識して起こしたり止めたりできない反応)の一種ですが、咳止めとは多くがこの反射が起こるのを止める薬(中枢性鎮咳薬など)のことです。

ただ、感染症のときに無理に咳を止めてしまうと、体から病原体を排出できなくなるため、かえって悪化する可能性があります。

また、最近の研究により、咳止め薬では十分に咳を止められないこともわかってきており、中枢性鎮咳薬は、胸の痛みや頭痛、肋骨の骨折などの合併症がある咳の場合に限って、薬による作用と副作用をよく考えて使用するというように方針が変わってきています。

そのため、咳で受診した際は、咳止めではなく、痰を出しやすくする薬を処方されることが多いようです。咳があるからと、自己判断で市販の咳止めを飲ませることも控えましょう。かえって症状を長引かせたり、重くする可能性があります。

ゼーゼーする咳は喘息?? 受診の目安は?

咳だけでなく、ゼーゼーと音がすると、喘息が心配になりますね。呼吸をするときにゼーゼー、ヒューヒュー、ゼロゼロなどと音がするのは、喘鳴(ぜんめい)と呼ばれる症状です。

1〜2歳の幼児では、気管支が細く痰がたまりやすいので、喘息でなくても喘鳴が起こりやすいそうです。
受診の目安は前述の「咳がひどいとき、受診するかどうかの目安」を参考にしてください。

咳が出ているときの食事、注意点は?

子供は咳き込むことで嘔吐し、吐いたものを気管に吸い込んでしまうことがあります。食事は咳が落ち着いているときに、少しずつ与えてください。

食事の内容は喉越しがよく、柔らかいものに。おかゆやうどん、スープなどが良いでしょう。柑橘類や冷たいもの、消化の悪いもの、水分が少なく飲み込みづらいものは控えてください。

まとめ

幼児の咳の多くは風邪の症状です。咳は夜にひどくなることがありますが、具合がひどく悪くなければ、ホームケアでできることをして様子を見ましょう。気管支炎や肺炎は、最初は風邪と同じ症状で見分けがつかないので、経過をしっかり見守って。咳の原因によっては呼吸困難になることもあるので、すぐに受診すべき症状が出たときは、夜間や休日でも速やかに受診してください。

(文:佐藤華奈子/監修:梁尚弘先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]日本呼吸器学会:咳嗽に関するガイドライン第 2 版 , p61, 63, 2016.
[*2]佐久医師会:子どもの病気・おうちケア はじめてBOOK, p34, 35, KADOKAWA, 2019.
[*3]American Academy of Pediatrics: Caring for Your Child’s Cold or Flu

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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