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2021年03月15日 10:55 更新

予防接種は医療費控除の対象?還付金の計算式や確定申告のポイント

予防接種は医療費控除の対象に含まれるのでしょうか?インフルエンザ予防接種など、育児には医療費がかかります。確定申告で少しでも税金が戻って来れば嬉しいですよね。ここでは医療費控除の対象となる医療費とそうでないものを整理し、国税庁が定める控除額と還付金の算出方法や確定申告の方法をご紹介します。

そもそも医療費控除って? 

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よくある医療費控除の勘違い

そもそも医療費控除とはどういうものなのでしょうか? かかった医療費が一定額を超えたらその分金額が病院から戻って来る、などと勘違いしている人はいませんか?  

戻って来るお金とは、支払い済みの所得税の一部が税務署から振り込まれるもので、決して病院や健康保険から医療費が戻ってくるものではありません。

税金が戻ってくるのは年間医療費がいくら以上?

「医療費控除」とは、医療費がたくさんかかった年はその家庭の税負担を軽くしましょう、という税法の考え方に基づいています。1月1日から12月31日までの本人あるいは生計を一にする家族のために多額の医療費を支払った場合、かかった医療費の一部を税金から控除する仕組みです。

具体的には、家族の1年間の医療費の合計額が10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等×5%)を超えた場合、超えた金額が医療費控除額(最高200万円)となり、確定申告をすると税金が戻ってきます。

医療費控除の対象となるもの・ならないもの

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そうはいっても家族全員の医療費を足し上げても10万円を超えることなんて有り得ない……。なんて自分には無関係だと思っている方いませんか? 

でも意外と知られていませんが、医療費控除では健康保険の対象にならない費用も申告できるのです。つまり自費診療にあたる妊娠出産費用も対象になるため、子供が生まれた家庭は医療費控除を申告するチャンスなのです。

このように、本来医療費控除に含まれるものも見落としてしまい、確定申告の際に損をしている人がいるかもしれません。ここでは見落としがちな医療費控除の対象となるものと、ならないものを分けてご紹介します。

医療費控除の対象となるもの

・医師による診療、治療費
・医師が治療目的で必要だと判断して作成した診療情報提供書代
・医師の指示や、治療上やむを得ない場合の差額ベッド代
・通院や入院のための公共交通機関の交通費
・急病やケガ、陣痛などで病院に運ばれた際のタクシー代など
・治療のための松葉杖
・義足の購入費用
・レーシック手術(視力回復レーザー手術)
・病気やケガの治療のために、病院等に行かず、薬局で購入した医薬品
・治療のための歯科矯正  など

<妊娠出産に関連するもの>
・妊婦定期検診
・分娩費用と入院費用
・お母さんの治療費、薬剤費
・医師が必要と認めた不妊治療費
・赤ちゃんの健診費用と入院費用
・出産の際に利用したタクシー代及び駐車場代
・赤ちゃんの通院のための交通費 など
・治療を目的としたマッサージ・鍼灸治療費
・流産した場合の手術費・通院費・入院費
・母体保護法にもとづく理由で妊娠中絶したときの手術費 など

医療費控除の対象とはならないもの

・医師等への謝礼
・会社や保険会社に提出する診断書代
・医師の指示によらない差額ベッド代
・体の異常がない場合の定期検診や人間ドック費用
・通院のための自家用車のガソリン代や駐車代
・美容整形
・入院時のパジャマや洗面用具など
・予防注射の費用
・美容のための歯科矯正
・疲労回復・健康増進・病気予防などのためのサプリメントや栄養ドリンク代 など

<妊娠出産に関連するもの>
・妊娠検査薬代
・里帰り出産の際の帰省費用
・紙オムツ・ミルク代
・入院時の日用品や通信費
・マタニティ用衣類
・無痛分娩講習などの受講料
・母体保護法にもとづかない妊娠中絶の手術費
・赤ちゃんの日用品代 など

つまり、医療費控除が認められるかどうかのポイントは、「治療を目的としているか」「医師が必要と判断したかどうか」の二つです。同じ歯科矯正でも、「治療」目的なら医療費控除の対象、「美容」・「健康維持」・「予防」が目的なら医療費控除の対象外ということになります。

赤ちゃんへのインフルエンザ予防接種は医療費控除の対象? 

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毎年冬になると流行するインフルエンザ。小さなお子さんや赤ちゃんのいるママには心配なニュースですよね。

特に赤ちゃんが保育園で集団生活をしている場合は、他のお子さんからの感染を予防するためにも予防接種を受けさせたいと思うママは多いと思います。

しかし、インフルエンザの予防接種は希望する人だけが受ける任意接種なので、費用は全額自己負担です。自由診療なので費用は医療機関によって異なりますが、1回3,000円から7,000円とかなり幅があります。乳幼児は1シーズンで2回受けることが推奨されています。接種時期も何かと出費の多い年末と重なるので、お子さんが何人もいるご家庭では結構な負担になりますよね。しかも毎年受けなくてはいけません。医療費が戻ってくるかどうかは、結構重要な問題ですよね。それでは赤ちゃんの受けるインフルエンザの予防接種も医療費控除の対象となるのでしょうか?

インフルエンザの予防接種は原則的に医療費控除対象外!

前の項目で見てきたように、医療費控除の対象は「治療」が目的の場合であり、「予防」が目的のものはすべて対象外となります。そのため、病気を未然に防ぐ、という目的で行なう予防接種は、多くの人が受けるインフルエンザの注射であっても、大人であっても赤ちゃんであっても、医療費控除は原則的に適用されません。

例外も! インフルエンザ予防接種が医療費控除対象となる場合

ただし、医師が必要であると判断し、予防接種を指示した場合は、医療費控除の対象となる場合があります。

例えば、「インフルエンザにかかってしまうと、持病が悪化してしまう」とか「別の病気が理由で免疫力が低く、インフルエンザにかかりやすい」など、身体に大きなリスクがあると医師が判断した場合は医療費控除の対象となる場合があります。

赤ちゃんに持病がある場合や、病気で免疫力が低い場合などは、一度かかりつけの医師に相談してみましょう。

医師から薦められる予防接種は医療費控除の対象!

赤ちゃんの健康状態次第で、担当医から治療の一環として予防接種を受けるよう指示されることもあります。例えば、B型肝炎も、医療費控除の対象に含まれることがたまにあります。B型肝炎の予防接種は平成28年10月以降定期接種化されましたが、その前に医師の薦めで接種している場合は医療費控除の対象にして貰えるかも知れません。

国税庁のホームページをチェック

予防接種が医療費控除の対象となるケースなど、医療費控除のことで分からないことがあったら国税庁のホームページにアクセスしてみて下さい。複雑なケースの質疑応答事例など細かいルールを調べることができます。ホームページから確定申告に必要な書類をダウンロードすることも可能です。

医療費控除額の計算方法は? 

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医療費控除の申告をしたら、具体的にどのくらいの税金が戻ってくるのでしょうか? ここでは医療費控除の計算方法をご紹介します。

医療費控除額の計算式

●合計所得金額が200万円以上の場合
医療費控除額 = 一年間に支払った医療費 − 保険金などで補填される金額※ − 10万円

●合計所得金額が200万円未満の場合
医療費控除額 = 一年間に支払った医療費 − 保険金などで補填される金額※ − 所得金額の5%

※保険金などで補填される金額とは
「出産育児一時金」「高額療養費」「配偶者出産育児一時金」や、生命保険や損害保険からでる「入院給付金」「医療保険金」などを指します(出産手当金や傷病手当金は含まれません)。

還付金(医療費控除により戻ってくる金額)の計算式

還付金 = 医療費控除額(上限200万円) × 所得税率

所得税率は年間所得によって、次のように決まっています。

・195万円以下:5%
・195万円以上330万円以下:10%
・330万円以上695万円以下:20%
・695万円以上900万円以下:23%
・900万円以上1800万円以下:33%
・1800万円以上4000万円以下:40%
・4000万円超:45%

※復興特別所得税(基準所得税額×2.1%)は加味していません

具体的に計算してみましょう

・課税される所得が600万円
・出産を含む1年間の医療費の合計金額が90万円
・保険金などで補填される金額※が出産育児一時金42万円のみ

の家庭の場合の医療費控除額と還付金の目安を計算してみると……

●医療費控除額 =90万円−42万円−10万円=38万円

●還付金の目安 =38万円×20%=7万6千円

となります。

このように妊娠・出産をした年は、入院分娩費のほかに妊婦検診費用や赤ちゃんの一ヶ月検診費用など、出産の前後にも高額なお金がかかります。そのため、医療費控除を受けられ、還付金が戻ってくる可能性が大きいのです。

では、医療費控除を受けるためには具体的にどうしたらいいのでしょうか。

医療費控除はどうしたら受けられるの? 

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「今年は出産して医療費がたくさんかかったし、申告したら医療費控除受けられそう……。でも申告するには何から始めればいいの? 」

そんな方に具体的な申告方法をご紹介します。

確定申告をしましょう

医療費控除を受けて税務署から還付金を受け取るには、会社員でも確定申告をする必要があります。確定申告とは、1年間の所得(課税される収入から、各種控除を差し引いたもの)を計算した申告書を税務署に提出し、その年に納める所得税の金額を確定する手続きを言います。

いつ申告すればいいの? 

●会社員など、給与所得のみ(還付申告)の場合
その年の翌年1月1日から一年中還付申告ができます。
(会社員であっても他に収入があって税金を納める必要がある場合は確定申告の期間に手続きをする必要がなります)

●上記以外の場合
確定申告の期間は、その年の翌年2月16日から3月15日(土日の場合は翌営業日)となっています。

また、医療費控除の申請は、5年間遡ることが可能です。例えば、過去5年以内に、医療費が高かった年があったのに申告しそびれていた人は、遡って還付申告することができるのです。

どこに申告するの?  

医療費控除を受けるための確定申告は、次に挙げる必要書類(①〜④)を揃えて地元の税務署に提出します。

申請に必要な書類は? 

(1)源泉徴収票(会社員の場合)
会社員などの給与所得者は、年末から年始にかけて勤務先で源泉徴収票が配られます。この源泉徴収票は確定申告の書類作成の際にも必要となります。もし紛失してしまって手元になくても、勤務先に依頼をすれば再発行されます。

(2)医療費、薬剤費、交通費などの領収書
該当する年の1月1日から12月31日までの、家族全員の医療費や薬剤費などの領収書(レシート)を集めます。ここで集めた領収書の内容を、医療費の明細書へ転記することになります

また前述したように、通院・入院のためにかかった公共交通機関の交通費、公共交通機関での移動が難しいときのタクシー代なども、医療費控除の対象です。

公共交通機関については領収書が出ないため、日付とかかった交通費などの履歴を残しておきます。医療費の明細書にもその金額を転記することになります。

(3)医療費の明細書
 税務署に取りに行くか、下記の国税庁のホームページからダウンロードする方法があります。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/pdf/ref1.pdf

(4)確定申告書A様式
手書きで作成する方法と、パソコンを使って作成する方法があります。

パソコンで作成する方法については、国税庁の確定申告書等作成コーナーで指示に従って入力していけば自動的に申告書が完成します。第一表と第二表がありますので、2枚とも記入しましょう。

税務署に提出する3つの方法

「(3)医療費の明細書」と「(4)確定申告書A様式」が記入できましたら、(1)医療費の領収書、(2)源泉徴収票とあわせて税務署に提出します。

提出方法は以下3つの方法があります。
●税務署に持参する
●郵送する
●e-Taxで提出する

※e-Taxとは確定申告書が申告書作成画面で作成できるなど、申告手続きまでオンラインで済ませられるサービスです。

還付金はいつ戻ってくるの? 

申告書類を提出してから、だいたい1ヶ月から1ヶ月半ほどで還付金を受け取ることができます。e-Tax(電子申告)ですともう少し早く、3週間ほどで処理されるようです。

還付金はどうやって受け取るの? 

確定申告書第一表の右下に、「還付される税金の受取場所」という欄があります。振込先として指定したい金融機関名、支店名、口座番号などを記入すれば、その口座に振り込まれます。

まとめ

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以上、医療費控除の対象となるものと対象とならないもの、その手続き方法をまとめました。赤ちゃんのインフルエンザの予防接種は原則医療費控除の対象ではありませんが、赤ちゃんの通院のための交通費や治療のための市販の医薬品も控除の対象となります。

家族の医療費は必ず領収証をとっておき、控除の対象かどうかをその都度確認するようにしましょう。赤ちゃんが生まれたら何かとかさむ育児費用。国税庁が定める医療費控除の制度をよく理解して、賢く利用したいですね。

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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