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2021年01月28日 16:54 更新

【医師監修】排卵日って何?排卵日の把握の方法と体調変化

生理の周期ごとに、巡ってくる排卵日。女性は一生のうちに、約400~500回[*1]の排卵を経験するといわれています。排卵はいつ、どのような仕組みで起こっているのか。妊活にも健康管理にも役立つ、排卵の基礎知識をお伝えします。

排卵日っていったい何?

卵胞の発育と排卵の流れ
卵胞の発育と排卵の流れ

女性は卵巣の中に、卵子のもとである「原始卵胞」を100万~200万個持って生まれてきます。原始卵胞の数は加齢とともに減り、思春期には20~30万個くらいになっています[*1]。初潮が来て1~2年は排卵しませんが、その後はほぼ毎月、数十個の原始卵胞が育ち始め、最終的にはそのうちの1個が直径20mm程の「成熟卵胞」になると、中から「卵子」が飛び出します。それが排卵です。ちなみに卵子の大きさは0.1mmほどです。

まずは排卵のしくみを知ろう

たくさんの原始卵胞から選ばれた1個が成熟し、そこから卵子が放出される排卵というシステム。それをコントロールしているのは脳の“中枢”と呼ばれる場所にある、「視床下部」「下垂体」という器官です。

視床下部からは、このシステムを始動させる性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌されます。一方、下垂体からは卵胞を成熟させる卵胞刺激ホルモンと、卵子放出のスイッチ役を務める黄体化ホルモンが分泌され、周期的な排卵のリズムを作り出します。

脳の視床下部は、体温調節や新陳代謝なども司る重要器官で、ストレスの影響を受けやすい場所でもあります。そのため、心身に大きなストレスがかかると、排卵が止まったり、周期が乱れたりすることがあります。

排卵日はいつを指す?

卵胞から卵子が放出される日を「排卵日」といいます。排卵が起こると、そこから約14日後に生理が始まります(この日数は生理周期の長さには影響を受けません)。生理周期は28~30日であることが最も多く、その場合は生理初日から14~15日目ごろに排卵が起こると考えられます。

生理周期の正常範囲は25~38日とされており、38日周期の人は、生理初日から24日目ごろ(38-14=24と計算)が排卵日と推測されます。
ただし、周期はいつも一定とは限らないため、おおよその目安と捉えてください。

妊娠を望むなら排卵日を知ることも大切

妊娠は、卵子と精子が出会って受精卵となり、子宮に着床したとき初めて成立します。排卵された卵子の寿命は約24時間、女性の体内での精子の寿命は約72時間といわれており[*2]、寿命のある間に出会えなければ、受精もかないません。

精子のほうが2日ほど長生きであることを考慮し、出会いのタイミングを合わせるためには、排卵の2日ほど前~排卵日までの間に性交渉を持つ必要があります。排卵日を知ることは、妊活の第一歩といえるでしょう。

排卵日は「基礎体温」で予測できる?

基礎体温を測って排卵日を調べる女性
Lazy dummy

基礎体温のお話をする前に、排卵と密接にかかわる生理の仕組みについて、おさらいしておきましょう。卵胞の発育は生理初日に始まり、発育中の卵胞からはエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌されて、子宮内膜を厚くします。これは妊娠に備えるためです。やがて排卵が起こると卵胞は「黄体」に変わり、そこからプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されて、子宮内膜をさらに厚く、ふかふかにします。妊娠しなかった場合は子宮内膜が剝がれ、血液とともに排出されます。

プロゲステロンには体温を上げる働きがあるため、排卵を境に体温は0.3~0.6℃上昇します。この体温の変化が、排卵日を知る手がかりになります。

基礎体温とは

基礎体温と月経周期(28日周期の場合)
基礎体温と月経周期(28日周期の場合)

「基礎体温」とは、朝、目覚めたときに安静な状態で測った体温のことをいいます。排卵がある人の場合、生理初日~次の生理の前日まで(1周期)の基礎体温は、排卵をはさんで「低温相」と「高温相」の2相に分かれます。高温相は生理周期の長さにかかわらず一定で、約14日間続きます。

基礎体温でどのように排卵がわかるの?

排卵期は、基礎体温が低温相から高温相へと移行する境目にあたる時期です。「体温陥落」といって、体温が上がる直前にぐっと下がるポイントがあり、その日から数日間の体温移行期に、排卵が起こっていると推定されます。体温陥落は毎周期に起こるというわけではなく、また、基礎体温だけで排卵日を特定することはできません。

基礎体温の正しい測り方

基礎体温の測定には、専用の「婦人体温計」を用います。それを枕元に置いておき、朝、目覚めたら横になったまま、舌の下に体温計を入れて測りましょう。トイレに立ったり体を動かしたりする前に測ることが大切です。測った体温は必ず記録し、グラフにすると確認しやすくなります。最近は自動的に記録できる婦人体温計や、スマホ・パソコンにデータを送れるタイプも販売されており、手書きが面倒な人にはおすすめです。

基礎体温を1~2周期分、記録してみると、排卵の有無や卵巣機能の状態などがある程度わかります。体温が2相に分かれていない場合は「無排卵」、高温相が10日以内と短い場合は「黄体機能不全」が疑われます。また、高温相が17日以上継続している場合は、妊娠かもしれません。いずれにしても、気になることがあったら早めに産婦人科を受診するようにしましょう。

基礎体温以外にもある排卵日を推測する方法

気になる排卵日を体温でチェックする女性
Lazy dummy

排卵日を推測する方法は、基礎体温以外にもいくつかあります。自分でできる方法と、医療機関で行われる検査に分けてご紹介します。

おりものの変化

おりものには、腟内を酸性に保って細菌やカビなどの感染を予防したりする働きがありますが、「受精を助ける」ことも重要な役割です。そのため、排卵日が近くなると精子が侵入しやすくなるよう、透明でよく伸びるおりものが多量に分泌されます。

このようなおりものの変化も、排卵期が近づいている、または排卵期であることのサインといえます。排卵後はおりものの量が減り、粘り気が出てきますが、これは細菌やウイルスなどの異物の侵入を防ぐためです。

下着やパンティライナーに付いたおりものから、排卵日を正確に知るのは難しいですが、上記のような変化により排卵日が近づいていることには気づけるかもしれません。

排卵日予測検査薬

排卵の仕組みの説明の中で、“卵子放出のスイッチ役”と紹介した「黄体化ホルモン」。このホルモンの尿中濃度を測って排卵日を予測する「排卵日予測検査薬」が、2016年12月から市販されています。

黄体化ホルモンの分泌は排卵の約40時間(約2日)前から始まるため、検査薬は次の生理予定日から17日前ぐらい(排卵予定日の3日前ぐらい)から使い始めるのがよいとされています。「陽性」の判定は、ラインの本数で確認するタイプや、色の濃淡で見分けるタイプなどがあります。

医療機関での検査

医療機関で排卵日を予測する際は、「経腟超音波検査」「血中エストロゲン検査」「頸管粘液検査」「尿中・血中の黄体化ホルモン検査」「基礎体温測定」などを必要に応じて併用し、総合的に判定します。

頸管粘液とは「おりもの」の元になる分泌物のことで、排卵期の特徴が見られるかどうか科学的に観察します。超音波検査では卵胞の大きさを測り、排卵日を推測します。その他、排卵に関わるホルモンの血中・尿中濃度を測定する方法もあります。基礎体温は体調や気候などさまざまな要因からの影響を受けやすいため、最近は、あまり利用されなくなっているようです。


排卵日前後は体に不調が出ることも

排卵日の前後には体調が悪くなる女性
Lazy dummy

生理前の腹痛、腰痛、むくみ、イライラ、のぼせといった不快症状や、生理痛、月経過多など、生理にまつわるトラブルを全く経験していない、という女性はいないでしょう。実は、排卵期にも体の不調が起こることがあります。どんな不調が、なぜ起こるのでしょうか。

排卵日前後に起こりやすい不調

排卵時には卵胞が破裂して、中から卵子が飛び出してきます。そのとき、卵巣の皮膜も破られるため、「排卵痛」と呼ばれる軽い腹痛を感じることがあります。また、皮膜が破れた部分や、排卵後の卵胞(黄体)から腹腔内に出血することがあり、それによっても腹痛や腰痛が引き起こされる場合があります。

排卵日前後の不調の原因

排卵期には、一時的に生理のような出血が起こることもあります。

生理周期の前半に多量に分泌されていたエストロゲン(卵胞ホルモン)が、排卵期には一時的に低下するため、子宮内膜が剝がれて出血が起こると考えられています。これは「排卵期出血」または「中間期出血」と呼ばれるもので、治療の必要はないケースがほとんどです。

しかし、繰り返し起こる場合は、子宮筋腫・子宮腺筋症や子宮頸がん・子宮体がんなどの病気が隠れている可能性もあるため、一度、産婦人科を受診して確かめておくようにしてください。

まとめ

自分の排卵や生理のリズムを把握しておくことは、妊娠を望む女性だけでなく、健康を願うすべての女性にとって大切なことです。排卵がいつ起こっているかは目には見えないためわかりにくいですが、基礎体温を1~2カ月間記録してみると、ある程度予測することができます。おりものや体調の変化にも気を配ってみると、生理周期に伴う自身の体調のサイクルの把握に役立つでしょう。排卵や生理の仕組みは、脳がコントロールしています。周期が乱れがちな人は、ストレスを感じることが多くないか振り返ってみましょう。

(文:吉村直子/毎日新聞出版MMJ編集部/監修:浅川恭行先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気が見えるvol.10 産科, p16, メディックメディア, 2017.
[*2]日本生殖医学会 Q1. 妊娠はどのように成立するのですか?

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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