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2021年01月21日 11:23 更新

【医師監修】赤ちゃんのいびきは病気? 考えられる4つの原因と治し方

赤ちゃんがうるさいくらいの「いびき」をかいていて苦しそう、息が荒い……。これは病気の可能性があります。今回は赤ちゃんのいびきの原因をはじめ、治療、ご家庭での防止策までを解説しました。

赤ちゃんのいびきはなぜ起こる?

眠る赤ちゃん
Lazy dummy

1日の半分以上を寝て過ごしている赤ちゃん。ぐっすり眠ることで、心身ともに健やかに成長していきます。赤ちゃんの成長・発達に大切な睡眠ですが、いびきをかいている場合、体に異常があるのでしょうか。また、いびきによって赤ちゃんの体にはどんな影響があるのでしょうか。

そもそも「いびき」とは

そもそも「いびき」とは、どんな状態のことを指すのでしょうか。

「いびき」は、のど(咽頭)など、空気の通り道がなんらかの原因で狭くなり、その部分を空気が通過するときに、のどが振動して音が出る状態のことです。大人で起こるのはご存知の通りですが、赤ちゃんもいびきをかくことがあります。

睡眠中にうるさくなるだけのように感じてしまいそうな「いびき」ですが、実はいびきをかいているときは睡眠が不安定になっており、一見眠れているようでも睡眠不足になっています。現在のところ、いびき=病気とまでは考えられていませんが、常にいびきをかいているのは健康に良くない状態なのです。

赤ちゃんのいびき 主な原因4つ

赤ちゃんがいびきをかいている場合、いったいどんな原因が考えられるのでしょうか。まだわからない部分も多いですが、主に次の4つが挙げられます。

・咽頭扁桃の肥大
扁桃は、鼻や口から侵入する微生物から体を守ってくれる器官です。扁桃には「口蓋扁桃」(のちほど紹介します)のほかに、鼻の突き当りにある「咽頭扁桃(アデノイド)」があります。

扁桃は体を守る免疫を司る器官ですが、実は扁桃自体、細菌やウイルスに感染しやすく、扁桃炎をはじめとした病気になることは珍しくありません。咽頭扁桃が感染を繰り返し、慢性的に腫れることで気道が狭くなって、いびきをかくことがあります。

・口蓋扁桃の肥大
口蓋扁桃はいわゆる「扁桃腺」として知られている、のどの奥の両脇から飛び出しているように見える器官です。口蓋扁桃の肥大も、原因は咽頭扁桃同様、感染で起こります。これによっても気道が狭まり、いびきの原因になることがあります。

なお、咽頭扁桃、口蓋扁桃ともに、およそ学童期に最大になりますが、その後は成長とともに自然に小さくなっていくのが普通です。

・鼻の病気・アレルギー
アレルギー性鼻炎の症状でくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが起こり、それにより鼻で呼吸がしづらくなることが、睡眠時のいびきの原因になる場合があります。

アレルギー性鼻炎には、ダニやハウスダストなどが原因になる「通年性」のものと、スギやヒノキなどの花粉による「季節性」のものがあります。近年で、アレルギー性鼻炎の患者は増えていて、症状に苦しむ子どもも増えています。

アレルギー性鼻炎をもつ患者を年齢で分けた有病率のデータでは、0~4歳では「通年性アレルギー性鼻炎」が4%、「スギ花粉症」が1.1%となっています[*1]。

・肥満やあごなどの形態異常
まれではありますが、肥満や、下あごや上あごなどの顔面の形の異常によって気道が狭くなり、いびきを起こしていることもあります。

小児睡眠時無呼吸症候群のことも

いびきが、小児睡眠時無呼吸症候群の症状であることもあります。大人で起こる睡眠時無呼吸症候群の害については、広く知られるようになってきましたが、赤ちゃんや子どもにも小児睡眠時無呼吸症候群はあり、大人と同様に睡眠時に鼻呼吸ができず、気道が狭くなることで呼吸が困難になることで、いびきなどの症状が出ます(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)。

呼吸ができないと酸素不足が起こり、慢性的な低酸素症に陥ると精神面の発達に影響したり、睡眠中の成長ホルモン分泌が低下することで身長が伸びないなど、体の成長にも影響を及ぼします。なお、小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の有病率はおよそ2%と言われています[*2]。

この場合、夜ぐっすり眠れていないだけでなく、眠れていないことによって日中の生活にも影響があるので、1日を通して赤ちゃんの様子を観察してみましょう。

赤ちゃんのいびきを治す方法は?

赤ちゃんの疑問
Lazy dummy

赤ちゃんのいびきは病気の症状として出ている場合があるので、継続的にいびきをかくようであれば、医療機関を受診することをおすすめします。なお、受診する前に、スマホなどで動画や音声を残しておくことで、診察時の参考になります。

医療機関での治療

医療機関では、いびきの原因を検査するところから始まります。耳鼻咽喉科では肉眼で扁桃肥大やアレルギー性鼻炎がないか観察します。さらにレントゲン撮影で、咽頭扁桃肥大や口蓋扁桃肥大、下あごの成長が悪く舌が後退する小下顎(しょうかがく)がないかを調べます。

咽頭扁桃肥大、口蓋扁桃肥大、アレルギー性鼻炎などによっていびきが起きている場合が多いですが、症状が重症化している場合、小児睡眠時無呼吸症候群がある可能性もあります。

小児睡眠時無呼吸症候群の診断には、終夜睡眠ポリソムノグラフィーが必要です。これは専用の装置を体にとりつけ、睡眠時の脳波、眼の動き、心電図、鼻と口の気流の測定、胸腹運動などを記録するもので、睡眠障害を専門とするクリニックなどに入院して測定することが必要になります。

睡眠中の様子を観察することで、眠りの体位、深さ、時間、睡眠障害や無呼吸の有無、脈拍の変動などがわかります。この検査は2、3歳から受けられることが多いようです。

こうした検査の結果をふまえて複合的に治療が行われていきます。治療の多くは薬などによる保存的治療となりますが、手術となる場合もあります。

・薬
アレルギー性鼻炎が原因になっている場合、原因となるダニやペット、花粉などのない環境で生活をすることが大切ですが、難しい場合も多いので、まず薬での治療が行われます。代表的な薬は抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイド薬などです。そのほか、抗原特異免疫療法も根治治療を目指す場合に選択されることがあります。

・経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)
持続陽圧呼吸療法とは、機械で圧力をかけた空気を鼻から送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法のことです。 大人に行う場合と同様に、睡眠時に鼻に当てるマスクを装着して治療します。

気道の狭まり具合に合わせた空気圧を鼻マスクで鼻から気道へ送ることで、喉の組織を広げ、舌を押し上げて気道を開け、無呼吸の発生を防ぐことができるのです。子供でも治療効果は高いとされていますが、本人が嫌がって外してしまわないようにする必要があります。

・手術
いびきを起こす原因に合わせていくつかの手術がありますが、乳児の間は経過観察し、その後、成長による変化も踏まえてそれでも必要な場合に行われることになります。

アレルギー性鼻炎が原因の場合、最近では外来でレーザー手術が比較的簡単にできます。鼻の粘膜の表面を焼くことで鼻づまりが改善するもので、早くて小学生くらいから施術できるようになります。

気道を塞ぐ原因になっている咽頭扁桃や口蓋扁桃が原因の場合、肥大している部分を切除する手術を行う方法もあります。肥大する時期にあたる3~6歳で行うことが一般的ですが、3歳未満で手術を行うこともまれにあります。ただ、全身麻酔が必要なことと、入院期間が約1週間必要になり、肉体的にも精神的にも負担がかかります。

家庭でのケア

赤ちゃんがアレルギー性鼻炎の場合、普段の生活環境を改善することで緩和される場合があります。アレルギー性鼻炎はダニやペットの毛、花粉などのハウスダストで引き起こされるため、原因になるものを赤ちゃんから遠ざけることで辛い症状が起こるのをある程度防ぐことができます。

室内ダニを取り除く場合、掃除機は1畳あたり30秒以上とゆっくり動かして、週に2回以上掃除します。また、布張りのソファーやカーペットはダニの温床になりやすいので、カバーをかけてこまめに洗えるように工夫しましょう。ダニは湿度や温度が高いと活発になるので、湿度は50%、室温は20~25℃を保つよう調整することもおすすめです。

赤ちゃんが花粉症の場合は、飛散の多い時の外出は控え、やむなく外出した際はマスクなどを着用したり、花粉の付きやすいけばだった素材の服を避ける、室内には服や髪についた花粉を落としてから入ったり、洗顔、うがいなどで室内にできるだけ花粉を持ち込まない、またこまめに掃除することを心がけましょう。

動物のアレルギーがある場合は、できればペットを飼わないことがいちばんですが、やむをえない場合は屋外で飼うか、寝室には入れないようにしましょう。また、カーペットは動物の毛がとどまりやすいので、フローリングにしたり掃除をこまめに行ったりするなどして、アレルギーの原因となる物質をできるだけ取り除くようにしましょう。

まとめ

微笑む赤ちゃん
Lazy dummy

赤ちゃんの鼻やのどが狭まるなどして呼吸がうまくできない場合、症状としていびきが出る場合もあります。きちんと鼻呼吸できているかがひとつのサインになるので、普段から赤ちゃんの様子を観察し、心配があれば医療機関を受診しましょう。

(文:西谷友里加/毎日新聞出版MMJ編集部、監修:星礼一先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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