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2022年12月14日 16:32 更新

【医師監修】妊娠6週の妊婦の変化と赤ちゃんの成長、出血などの注意点

妊娠6週は、多くの妊婦さんにつわりが始まってくる時期です。おなかの中の赤ちゃんも日々成長していて、心臓の拍動も確認されるようになってきます。一方で、性器出血など、注意が必要なことも。この時期、気を付けたいことについて、つわりの対処方法とともに紹介します。

妊娠6週のお母さんの体に現れる変化

妊娠6週で出血することも!?ヨガをする女性
Lazy dummy

つわりが本格的になってくる

つわりは妊婦さんの50~80%にみられる症状です[*1]。ふつう、妊娠5~6週ごろから始まり、12~16週には自然とおさまります[*1]。

ただ、中には「妊娠悪阻」といって、重い症状が現れて、治療が必要になることもあります。吐き気が強くて水分もとれないような状況になり、元の体重から5%以上も減少したり、尿が1日に1~2回しか出なかったりする時には、医療機関を受診してください。

妊娠悪阻は全妊婦の0.5~2.0%で起こり、特に初産婦に多いことが知られています[*2]。ただし、より重症化するのは経産婦(出産経験のある妊婦)であると言われています。

つわりの主な症状は?

つわりの主な症状には、悪心(吐き気)・嘔吐、食欲不振、唾液量の増加などがあり、そのほかにも、全身の倦怠感(だるさ)、頭痛、熱っぽいなどさまざまな症状があります。早朝の空腹時にこれらの症状がより強く現れる傾向があり、欧米では「モーニングシックネス」と呼ばれています。

なお、「すっぱいものが食べたくなる」のように食事の嗜好が変わることも、この時期によく起こります(ただし、必ずしもすっぱいものが欲しくなるわけではありません)。また、食欲不振とは反対に、食欲旺盛になる人もいます。

つわりの症状は個人差が大きく、すべての妊婦さんに一様に症状が現れるわけではありません。

どうしてつわりになるの?

つわりがなぜ起きるのか詳しくはわかっていませんが、妊娠によって体内でホルモンや代謝の環境が急激にかわり、それに母親の身体がついていけなくなっているためではないかと推測されています。

例えば、つわりの症状が、妊娠初期には絨毛性ゴナドトロピンというホルモン(妊娠判定の検査にも用いられるホルモン)や、甲状腺ホルモンの分泌量と関連していることからも、示唆されています。

つわりの症状、どうにかしたい!

つわりで食べられなくなったら、栄養バランスなどは気にせずに、好きなものを少量ずつわけて食べることです。それによってできるだけ空腹の時間をなくすようにしましょう。

空腹になると余計に吐き気がひどくなることがあります。また、水分をこまめに補給してください。スープやジュース、ゼリー飲料などを適宜、口にするようにしましょう。

食事のバランスはつわりが落ち着いてから考えましょう。ただし、甘いジュースばかり飲んでいると、体重が一気に10kg増える人もいますから、できる範囲でうまく調節するようにしてください。

その他の妊娠初期症状

出血(性器出血)

妊娠中は性器出血しやすい状態です。少量の出血は7~8割程度の人に起こることであり、様子を見ていても問題ありません。それがたとえ流産であったとしても、その原因のほとんどは赤ちゃんの染色体異常によるものであり、病院に来ても有効とされる治療はありません。つまり、流産を早めに発見したとしても、治療できることはほとんどないのです。

ただし、生理の時より多い出血量が続く場合や、ひどい腹痛を伴う場合には命の危険がある場合もあります。夜間・時間外であっても医療機関を受診してください。

便秘

妊娠中はプロゲステロンという女性ホルモンが多く分泌されます。その影響で腸の運動が低下するため、妊娠初期から出産まで便秘になりやすくなります。

便秘の予防のために、水分と食物繊維を多くとるよう心がけましょう。

おりものの変化

妊娠中は、子宮頸管(子宮と腟をつないでいる部分)の粘液分泌を増やすエストロゲンというホルモンの分泌が高まります。そのため、水っぽいおりものが多くなります。これは異常ではありません。

ただし、おりものから悪臭がしたり、腟のかゆみ・焼けるような感じがあったりするときには、産科を受診しましょう。

妊娠6週の赤ちゃんの状態は?

この時期の赤ちゃんの状態・大きさ

妊娠6週は、妊娠5週に引き続き「器官形成期」です。つまり、身体の構造の基本的な部分がかたち作られている時期です。

頭殿長(胎芽・胎児の頭からおしりまでの長さ)は、まだ1cmに満たない程度。それでも上肢(腕)は部分的にかたち作られ始め、指の原型がみられるようになります。

そして4~5日遅れて下肢(脚)も見られるように[*3]。また、身体や手足をぴくっと動かすような自発的運動も観察できるようになってきます。 さらに、目や耳の形もはっきりしてきます。

妊娠6週後半になれば心臓の動きを確認できる

胎嚢(赤ちゃんを包み込む袋)が大きくなり、全妊婦さんで胎芽(妊娠8週未満の胎児のこと)を確認できるようになります。次いで6週の終わり頃には90%以上の妊婦さんで胎芽の心臓の拍動も確認できるようになります。

最終月経や基礎体温などから推定して妊娠6週後半を過ぎていることが確実であるのに胎嚢が確認できない場合は、子宮外妊娠(異所性妊娠)や稽留流産を疑います[*4]。

妊娠6週目ごろに気を付けたいこと

多量の出血やひどい腹痛のある場合は医療機関を受診しましょう

出血の原因はほとんどの場合は不明です。一方で、7~8割程度の妊婦さんは、妊娠初期に出血を経験します。それでも、ほとんどの場合は、そのまま妊娠を継続して赤ちゃんは大きくなっていきます。

一般的に妊娠しても15%程度の割合で流産となりますが、早期に起こった流産の原因で最も多いのが赤ちゃん自体の染色体等の異常であり、受精の瞬間に「流産の運命」が決まっていることがほとんどです。よって、お母さんの行動が原因で流産になるということはありません。

ただし、200mlを越えるような多量の出血がある場合や、ひどい腹痛がある場合には異所性妊娠(以前は「子宮外妊娠」と呼ばれていました)の可能性がありますので、夜間・時間外であっても医療機関を受診しましょう。

異所性妊娠で怖いのは、赤ちゃんの着床した場所が破裂して、お腹のなかで大出血を起こして命の危険がある状況になり得ること。繰り返しになりますが、出血量が多い場合や、腹痛がひどい場合には夜間・時間外であっても医療機関を受診することが大切です。

風疹などの感染症を予防する

妊娠初期に風疹に感染すると、生まれた赤ちゃんに心疾患や難聴などの影響が現れる可能性があります。予防接種のある感染症(麻疹、風疹、水痘、おたふく風邪、百日咳など)については、妊娠する前に予防接種を受けていることがベストですが、妊娠しているとわかった後は、予防接種を受けられない感染症は多いです。麻疹や風疹もそうです。

その場合は、家族や友人など周囲の人が予防接種を受けて、妊婦さんの周りにバリアを作り、妊婦さんに感染症が届かないようにすることが大切です。

なお、風疹は近年大流行する傾向にあり、厚生労働省は子供のころに風疹の予防接種を受ける機会がなく他の世代より抗体の低い1962年4月2日~1979年4月1日生まれの男性に対して、2019年春から3年間、抗体検査とワクチン接種を原則無料で実施しています。

感染する確率を下げるために、流行している地域では不要な外出を避けたり、手洗いをしたりなどの予防に努めることも大切です。

無理をしない

妊娠した(できた)とわかると、急に健康に気をつけ始める妊婦さんがいます。それは素晴らしいことではあるのですが、時に張り切り過ぎてかえってストレスになってしまうこともあります。

無理をしない、頑張りすぎないことも大切です。

不安なことはひとりで抱え込まずに、パートナーや家族、友人などの周囲の人や、各自治体の女性健康支援センター、相談窓口に相談するようにしましょう。

引き続き流産しやすい時期であることを知っておく

自然流産の頻度は10~15%で、その60~70%が妊娠10週未満に生じると言われています[*5]。

よって、周囲の人に妊娠していることを伝えるのは、もう少し先に延ばすことをお勧めします。流産のことまで話して良いような間柄の人には伝えても良いですが、会社の同僚などたくさんの人に話すと、流産したことまで報告しなくてはならなくなります。直属の上司にだけ、内々に妊娠のことを伝えておいて、急に休む可能性について話しておく程度が良いと思います。

繰り返しになりますが、妊娠初期に起こる流産の原因の多くは、赤ちゃんの染色体異常などで、妊婦さんの努力では防げない流産がほとんどであることを、妊婦さん本人はもちろん、周囲の人も理解しておくことが重要です。

まとめ

妊娠6週は赤ちゃんの心拍が確認され、いよいよ妊婦さんになったという実感が高まる人が多いようです。つわりの症状が本格的になってくるころですが、できるだけ無理をせず穏やかな気持ちで過ごせるように工夫してみましょう。

(文:久保秀実、監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]メディックメディア「病気が見えるvol.10産科編」(第4版)p.86
[*2]医学書院「週数別妊娠健診マニュアル」p.34
[*3]医歯薬出版「ムーア人体発生学」(原著第8版)p.81
[*4]メディカ出版「正常の確認と異常への対応を極める!妊婦健診と保健指導パーフェクトブック」p.15-16
[*5]医学書院「標準産婦人科学」(第4版)p.326

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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