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2021年01月27日 15:06 更新

【医師監修】赤ちゃんが嘔吐!? 4つの原因と対処法とは?

赤ちゃんの嘔吐には、さまざまな原因があります。今回は赤ちゃんの嘔吐の原因と、それぞれの対処法をお伝えします。

赤ちゃんは嘔吐しやすい

嘔吐しそうな赤ちゃん
Lazy dummy

※画像はイメージです

赤ちゃんが嘔吐する原因は、本当にさまざまです。赤ちゃんは比較的嘔吐しやすく、ちょっとした理由で嘔吐というケースも少なくありません。しかし、ケガや病気などが原因で嘔吐することももちろんありますので、気をつけて見る必要があります。

なぜ嘔吐しやすいの?

赤ちゃんの口から飲んだばかりの母乳やミルクがだらだらと出てきてしまうことはよくありますね。これは、「溢乳(いつにゅう)」といって、心配する必要はありません。その理由は、消化管が未発達で、胃からの逆流を防ぐための機能がうまく働かないから。溢乳は成長とともになくなっていき、1歳までにはほとんどの赤ちゃんでみられなくなります。

分からなければ小児科へ行くのがベスト

赤ちゃんは言葉を話すことができませんから、体調を把握するのは難しいです。どのタイミングで小児科へ連れて行くべきか分からないことも多いでしょう。月齢の低い赤ちゃんの嘔吐では心配ないケースもあります。体重が増えてなかったり、熱や下痢の症状も伴っていたりする場合や、短時間に複数回吐いたり、あるいは勢いよく噴水のように吐いたりする場合は、速やかに小児科へ連れて行くことが望ましいでしょう。

「赤ちゃんが嘔吐して、少しでも不安を感じたら小児科へ連れて行く」というのが、赤ちゃんの健康を守る上ではベストな方法といえます。何の異常がなく取り越し苦労だと分かっても、赤ちゃんの健康が確認できればそれがいちばんです。そのうえで、ここでは赤ちゃんが嘔吐する原因をある程度は把握しておきましょう。

赤ちゃんの嘔吐の原因(1)母乳の吐き戻しなど

最初にご紹介する赤ちゃんの嘔吐の例は、いずれもあまり心配のないケースです。くり返し吐かず、吐く以外に気になる症状や異常がなければ、ホームケアで様子を見ましょう。

あまり心配ない赤ちゃんの嘔吐

赤ちゃんが「消化管の未発達」によって嘔吐しやすいことは、すでにお話しました。胃が未発達であるために飲んだ母乳やミルクが食道へ逆流することを「吐き戻し」といいます。母乳やミルクを飲むときに、空気も一緒に取り込みすぎてしまったり、あるいは消化管が未熟なために嘔吐してしまいます。単に飲み過ぎによっても吐き戻しが起きることがあります。この他、痰がからんだり、ゲップをしたりすることと一緒に吐いてしまうケースもあります。

嘔吐の度合いも、口からちょろちょろと流れ出る「溢乳」(いつにゅう)程度から、かなり勢い良く吐くこともあります。後に解説しますが「噴射するように嘔吐する」場合には、単なる吐き戻しではなく、何らかの病気である可能性が高いので速やかに小児科へ連れて行きましょう。

対処法

吐いた後はすぐに仰向けに寝かさず、顔を横に向けて寝かせてあげましょう。可能であれば、縦抱きにしてください。また、嘔吐した後には授乳量に気をつけ、一気にたくさん飲ませないようにしましょう。ミルクの場合は、普段の半分程度まで減らして様子を見てください。その後、だんだんと元の量に近づけていきましょう。すでに離乳食を食べている赤ちゃんは、一度ミルクに戻すか、食事の量を少な目に、消化のよいものを選んであげるのがよいでしょう。

赤ちゃんの嘔吐の原因(2)病気

赤ちゃんの嘔吐の原因となる病気は数多くあります。何らかの病気が疑われる場合は、速やかに受診することが望ましいです。

病気での嘔吐

赤ちゃんの嘔吐の原因となる病気の一例を以下にご紹介します。

■胃腸炎
胃や腸がウイルスや細菌の感染により粘膜に炎症を起こし、嘔吐が起こります。ウイルス感染によることが多く、その場合は下痢や発熱を伴うこともあります。

■幽門狭窄症(ゆうもんきょうさくしょう)
正確には「肥厚性(ひこうせい)幽門狭窄症」と呼ばれ、生後2週間~生後2ヶ月くらいの赤ちゃんが繰り返し、大量に母乳やミルクを吐く場合に疑われる代表的な病気です。胃の出口の壁が厚くなることで、十二指腸へミルクが運ばれなくなります。その際「ミルクを噴水状に、大量に」吐いてしまうことが続く特徴があります。治療方法は、医師との相談が必要ですが「ラムステット手術」といった手術が検討されます。

■髄膜炎
高熱が出ていて、意識が低下しているなど赤ちゃんの様子がおかしい場合には、髄膜炎という病気である可能性があります。これは、主にウイルスや細菌が血液などを介して脳を覆っている髄膜に感染することで起きます。原因によって症状が異なりますが、細菌性髄膜炎では死亡例や後遺症が残ることがあります。

■急性中耳炎
鼓膜の奥に位置する「中耳」というスペースに炎症を起こすのが急性中耳炎です。3歳までに85%の子供が一度はかかるといわれるほど、ありふれた病気です。炎症の原因はウイルスや細菌で、これが脳内の嘔吐中枢を刺激するために吐き気が起こるケースがあるようです。

■盲腸(虫垂炎)
早ければ2歳程度でも発症する可能性がある病気です。大腸の入り口付近にある虫垂が化膿を伴う炎症を起こすことで、激しい痛み(右下腹部痛)や発熱を伴います。代表的な初期症状の1つが嘔吐です。

■胃軸捻転症(いじくねんてんしょう)
赤ちゃんは胃を固定する周囲の組織が弱いため、胃の位置が変化しやすいのです。そのため、胃がねじれる(捻転する)ケースがあり、これを「胃軸捻転症」といいます。1歳以降に自然と良くなるケースがある一方で、捻転の度合いやタイプによっては死亡の危険もあるため手術が必要になるケースがあります。特に、幼児期になっても症状が改善しない場合は、手術が選択されることも多いようです。なお、先天的な原因やほかの病気によって胃がねじれるケースもあり、この場合も手術が必要です。

対処法

速やかに小児科へ連れていきましょう。

赤ちゃんの嘔吐の原因(3)頭のケガなど

頭のケガが原因で嘔吐しているケースは、危険性が高いといえます。お子さんや親御さんの不注意だけでなく、出産時の外傷が後の嘔吐につながることもあります。

頭のケガでの嘔吐

歩き出したばかりの赤ちゃんは特に転びやすく、頭にケガをしやすいものです。また、よちよち歩きを始める前の、ハイハイやお座りでも頭に外傷を負う可能性はあります。赤ちゃんは、周囲の状態を確認することができないので、後ろに倒れたときにタンスや壁に頭をぶつけたり、ハイハイのまま部屋のドアに突進するのは珍しくありません。頭を強く打つと、一過性脳浮腫や脳出血から嘔吐中枢の刺激、自律神経の調節機能障害が起こり、それが嘔吐につながるケースがあります。目安としては、出血するほど頭を強く打った場合、嘔吐した場合、仮に出血や嘔吐がなくても意識が低下している、視点があわない、普段と違う印象がある場合には、医療機関へ連れて行きましょう。

なお、クローズアップされる機会も増えた「揺さぶられっ子症候群」も、頭部(脳)への過剰な刺激・衝撃によって嘔吐を誘発する可能性があります。抱っこしたままぐるぐる回ったり、高い高いをして遊んであげることも多いと思いますが、その程度であれば通常は大丈夫。ただ、泣き止ませようと強く揺さぶってしまうのは厳禁です。

対処法

ハイハイ~よちよち歩きの時期は、赤ちゃんが頭部にケガをする可能性が高いといえます。そのため、赤ちゃんの行動範囲に、転びそうなものや滑りそうなものは置かず、机や椅子、家具、家電、インテリアなど、あらゆるものの角をコーナークッションなどで覆うと良いでしょう。それからもちろん、赤ちゃんから目を離さず、ケガをしそうなら速やかにサポートしてあげてください。

赤ちゃんの嘔吐の原因(4)中毒/アレルギー

赤ちゃんが病気やケガ以外で嘔吐する場合には、中毒やアレルギーが原因となっている可能性が考えられます。

中毒/アレルギーでの嘔吐

赤ちゃんが中毒やアレルギーで嘔吐する場合の具体的な症状を以下にご紹介します。

■食中毒
大人でも激しい嘔吐の原因となります。食中毒は、ウイルスや細菌が繁殖した食物を摂取することで発症し、嘔吐以外に、下痢や発熱、血便などの症状が現れることもあります。

■ミルクアレルギー
母乳ではなく粉ミルクを与える場合、そこに含まれるタンパク質に対してアレルギーを起こすケースがあります。ミルクを与える量を調整しても嘔吐が止まらない場合には、ミルクアレルギーの可能性も疑われます。

■食物アレルギー
アレルギーは、ミルクのみならず、あらゆる食べ物に対して発現する可能性があります。赤ちゃんが離乳食を食べ始めて、はじめてあげた食品で嘔吐や下痢がみられる場合には、食べ物の中にアレルゲンがある可能性を考えてください。

対処法

食中毒が疑われる、嘔吐、下痢、発熱などが同時に起きた場合には速やかに小児科へ連れて行ってください。ミルクアレルギーの場合は、アレルギー用のミルクにすることで症状が改善することがありますが、まずは医師の診察を受けましょう。食物アレルギーの場合も、医師の診察を受けることから始めます。

まとめ

授乳期間中は吐き戻しなどで、ママも大変かもしれません。赤ちゃんの嘔吐に対して動揺せず、不安なことがあれば医療機関で診察をしてもらいましょう。赤ちゃんの健やかな成長のためにも、知識を身につけていきたいですね。

参考文献
金子堅一郎編「子どもの病気とその診かた」(南山堂)p147

※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.27)

※記事の修正を行いました(2019.06.07)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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