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2021年03月24日 20:00 更新

ゲームに夢中なときだって生きる道を見つけるチャンス『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』Vol.5

「子育ての本当の目的」って、なんだろう? 革新的な教育で注目を集めた、元・千代田区立麹町中学校校長で横浜創英中学・高等学校校長の工藤勇一先生の著書『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版)から、家庭でも実践できる子育ての心構えをご紹介します。

ゲームの時間も親の声かけ次第で自律性を伸ばすチャンスに

Lazy dummy

親御さんからよく受ける相談に、「子どもがゲームばかりしている」というものがあります。
今はゲーム機やスマホの進化により、いつでもどこでもゲームができるようになり、よりゲームにのめり込む子どもが増えてきたことは事実でしょう。

多くの親御さんはゲームをやめさせようと、子どもに言葉をかけると思います。
「ゲームはやめなさい」や、「いつまでやってるの? いい加減にしなさい! 自分でゲームする時間を決めなくちゃいけないでしょ?」、大体このあたりでしょうか。
では、これらの言葉をかけたとして、その後のお子さんの行動は、どのように変化するでしょうか?

①親の言葉に素直に従い、自らゲームをやめようとする
②親の言うことに納得していないけど、イライラしながらゲームをやめる
③親の言うことを無視して、ゲームをやめない

おおよそは、このどれかに変化すると思います。
これらのうち、どの姿が子どもの自律した姿だと言えるでしょうか。
「自分で考え、自分で判断し、自分で決定し、自分で行動する」。これを自律と定義すれば、①は自分で行動していますが、自分で考えてはいないので当然自律した姿とは言えません。②も同様です。
③は自律した姿ではあるけれど、親としては困ったものでしょう。

まずは、ゲームが本当に悪いことなのかどうかという点に着目して、話を進めます。
とくに男の子には「過集中」、つまり一つの物事に過度に集中してしまい、周りが見えなくなってしまう傾向の強いお子さんが多いです。
お子さんがゲームに熱中しすぎていて、声をかけても反応がなかったり、食事や寝る時間を守れなかったりということが続けば、たしかに不安でしょう。

しかし繰り返しになりますが、私が教師として大事にしてきたのは、子ども自身が、社会に出てから生きる力を見つけることです。そのために、このゲームに対する「興味」や「集中」を使わない手はありません。

「子どもを管理する」という視点から一歩抜け出してみる

Lazy dummy

たとえば子どもがゲームに熱中しているときに、こんな質問をぶつけてみるのです。

「このゲームを攻略するために、どんな工夫をしているの?」

すると子どもたちは、自分がしている工夫について嬉々として話し始めるでしょう。
その答えを聞けば、お子さんの行動パターンが見えてきます。
たとえば敵の情報をリサーチする戦略家タイプなのか、とにかく指先を早く動かす練習をずっとしている努力家タイプなのか。
それはイコール社会に出てからその子が武器にできる能力でもあります

他にも、
「このゲームのおもしろいところってどこ? 教えて」
「このゲームの作者は、どんなところがおもしろいと思ってつくったのかな?」
「どうやったら、このゲームはもっとおもしろくなると思う?」
などと質問すれば、「子どもが自分の考えを言語化する能力」も育まれます。
「ゲームについて知らない親」にどう説明すればわかりやすく伝わるのか、子ども自
身が研究し工夫するでしょう。
また、ゲーム開発者の話を聞けるイベントに、子どもと一緒に行ってみるというのもいいかもしれません。こんな楽しいことを仕事にして生きている人がいる、大人って素敵だと感じられたら、ゲームだって一概に悪いものとは言えませんよね。

Lazy dummy

ちなみに、私が以前校長を務めていた麹町中でも導入している、人工知能型教材「Qubena(キュビナ)」を開発・提供している株式会社COMPASSの代表・神野元基さんは、著書『人工知能時代を生き抜く子どもの育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)のなかで、ゲームを通して論理的思考力や目標達成力などが育まれると言っています。
「ただゲームを与えて放置するのではなく、お子さんがいま何を考えているのか、脳のどんな領域が訓練されているのかといったことを、継続的な対話や観察を通してしっかり把握しておくことが大切です」とも。

親は、自分が通ったことのない道にはどうしても不安を感じてしまうものです。ゲームに熱中する子どもに、不安を覚える気持ちもわかります。
しかし、ゲームでもスポーツでも、熱中できることを持っている子は、自律のスイッチが入るのがスムーズだということも、また事実です。

ゲームを有益な経験にできるかどうかは、親御さんの工夫次第です。
「子どもを管理する」という視点から一歩抜け出せば、子どもを取り巻くあらゆるものが、自律のスイッチを入れる題材になり得るでしょう。

まとめ

子どもが夢中になるものから、長所を見つけよう

次回の内容は……?

「食べ物の好き嫌いがあったっていい」についてお届けします。

書籍『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』について

麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること
¥ 1,540 (2021/03/24時点)
(2021/03/05 時点)

宿題、定期テスト廃止。固定担任制も撤廃。服装・頭髪検査はおこなわない。公立中学校とは思えない数々の学校改革で注目を集める元・千代田区立麹町中学校校長・工藤勇一先生(現・横浜創英中学・高等学校校長)が、子育ての「当たり前」について考えてみたのが本書です。

多くの親御さんは、日々、さまざまなことに悩みながらお子さんと向き合っていることでしょう。
でも、きっと大丈夫。一番大事なことは何かを考えたら、そんなに気にすることじゃないかもしれません。

本書には、麹町中でなくても実践できる、子育ての心構えが詰め込まれています。
不安を抱えて育児に奮闘する皆さんの心を、ふわっと軽くする1冊です。

(文:工藤 勇一『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版)より一部抜粋/加筆修正:マイナビ子育て編集部)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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