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【元・貧困女子FPのお金アドバイス】第2回 病気・入院への備え

石川福美(トータルファイナンシャルアドバイザー)

元・貧困女子のFP石川福美先生が、「貧困」を経験したからわかったお金の話をします。「貧困」は意外と身近にある!? マネー知識をつけて、しっかり対策しましょう。

元・貧困女子の石川福美が、「貧困」を経験したからこそわかったお金の話をします。第2回は「病気・入院に関するお金のこと」です。

アラサー女子は、「私はまだ若くて体力もあるから大丈夫」という自信があるので、病気や入院への備えがおろそかになりがちです。でも、体調を崩したりケガをしたりする可能性は、年齢を問わず誰にでもあります。いざその時になって慌てないよう、健康なうちに必要な備えをすることが大切です。

20代半ばで突然発病、治療費と生活費で借金生活に

みなさんにこんなお話をするのは、私自身が20代半ばで突然体調を崩し、経済的に困窮した経験があるからです。はじめは「最近疲れやすいな」と感じる程度でしたが、そのうちひどいだるさや動悸、めまいに襲われるようになり、数ヶ月経っても改善しませんでした。そこで病院で診察を受けたところ、バセドウ病と診断されたのです。これは20代や30代の若い女性に多い甲状腺の病気で、人によって症状は異なりますが、私の場合はどんどん悪化して、とうとう電車に乗って通勤することさえ困難になってしまいました。そこでやむを得ず、仕事を辞めて治療に専念することにしたのです。

ところが、私にはいざという時のお金の備えがまったくありませんでした。子どもの頃から健康にだけは自信があったので、まさか自分が病気になるとは思わず、民間の保険にも入っていません。お給料が入っても、すぐに大好きな海外旅行に使ってしまうので、貯金もほとんどなし。こんな状態で病気のために仕事を辞めてしまったため、収入が途絶えた後は、わずかな手持ちのお金を切り崩しながら治療費や生活費を払い続けなくてはなりませんでした。

しかも私は一人暮らしをしていたので、身近に支えてくれる家族もいませんでした。体調がすぐれず、頭も体もまともに働かない中で、「あと何ヶ月この状態が続いたら貯金がなくなるのか」といった冷静な計算ができるはずがありませんし、生活費を節約しようと努力する気力もありません。結局、足りないお金をあちこちから借りた結果、総額300万円もの借金を作ってしまいました。

この経験で身に染みてわかったのは、人生はいつ何が起こるかわからないということ。そして、病気や入院への備えは、自分が健康で気力・体力に余裕があるうちに早めにやっておくべきだということです。

病気になった時に使える公的な制度を知ろう

とはいえ、すべてのリスクに自助努力で備えようとすれば、いくらお金があっても足りませんし、そんな必要もありません。第1回でお話した会社の福利厚生のように、実はすでに持っている権利や保障があるはずなので、それをきちんと知った上で、足りない部分だけを自分で備えればいいと考えてください。

●高額療養費制度

会社の健康保険組合や国民健康保険に加入している人なら誰でも使える制度に「高額療養費制度」があります。これはひと月に支払った医療費が高額になった場合に、一定の金額を払い戻してもらえる制度です。年齢や収入によって自己負担すべき上限額は変わりますが、例えば年収400万円の30歳女性が治療を受けて、ひと月に100万円の医療費がかかったとすると、自分負担の上限額は約8万7000円。残りの約91万円は国が負担してくれるので、自分は支払わなくていいのです。実際には、いったん窓口で自己負担分(医療費の3割)を支払い、払いすぎた分をあとで払い戻してもらう仕組みですが、いずれにしろ100万円すべてを自分で負担する必要はありません。「どんなに高額な治療を受けても、ひと月に9万円あれば何とかなるんだ」と思えば、随分と気持ちがラクになりますよね。

●医療費控除

ほかにも、医療費控除の制度を使えば、国から還付金が戻ってきたり、税金が安くなったりします。こうした制度を活用すれば、病気や入院の時にかかるお金を最小限に抑えられます。

 ただし重要なポイントは、高額療養費制度も医療費控除も、自分で申告しないと使えない制度だということ。黙って待っていればお金が戻ってくるわけではなく、病院の窓口や確定申告で必要な手続きをしなければいけません。つまり、知識がなければ、そのメリットを享受できないのです。私も病気になった当時はこれらの制度の存在を知らなかったため、あとになってとても悔しい思いをしました。

医療保険に入る際に注意したいこと

また、「入院に備えるなら、やっぱり保険でしょ」と考えて、高額な保険に入る人がいます。何の備えもしなかった元・貧困女子の私としては、「保険に入ろうと考えただけエラい!」と感心してしまいますが、かといって保険なら何でもいいわけではありません。現在はどの病院でも自宅療養を推奨しているため、よほどの大病をわずらわない限り、入院が長期になることはほとんどありません。よって病気になった場合は、入院費よりも通院での治療費や、仕事を休むことになった場合の生活費の補填のほうが重要になります。

こうした知識や情報を正しく把握して、「今の自分に足りない保障は何か」を知った上で保険を選ばないと、いざという時に必要なお金を受け取れない上に、せっかく支払った掛け金も無駄になってしまいます。入る前によく確認しましょう。

「健康だから」と安心している人へのマネーアドバイス

自分が元気な時に、健康でなくなった時のことをイメージするのは難しいかもしれません。でも、実際に病気になってからでは遅いのです。私も体調が悪くなってから、慌てて「何か備えをしなくては」と考えて保険に入ろうとしましたが、健康状態の審査に落ちて加入を断られてしまいました。「健康な今だからこそできること」は、みなさんが思う以上にたくさんあるのです。アラサー女子のみなさんが私と同じ失敗をしないためにも、今のうちに少しずつお金や医療費について正しい知識を身につけて、その時に備えてほしいと思います。

(石川福美/クレア・ライフ・パートナーズ)

※画像はイメージです

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※この記事は2016年11月16日に公開されたものです

石川福美(トータルファイナンシャルアドバイザー)

トータルファイナンシャルアドバイザー。高級フレンチレストラン勤務や派遣社員を経て、2014年に(株)クレア・ライフ・パートナーズ入社。派遣社員時代に体調を崩して働けなくなり、経済的に困窮したのをきっかけに、お金や社会保障制度について知ることの重要性を実感。現在はその経験をもとに、お客さまに寄り添うコンサルタントとして、お金や将来への漠然とした不安を取り除くためのアドバイスを行っている。

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