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【第8回ビジネスマナー講座】 誰もが使いがちな「ら」抜き・「さ」入れ・「れ」入れ言葉

松本繁美(マナーアドバイザー)

ビジネスシーンでは、言葉使いがその人の印象を大きく左右します。特に敬語は“なんとなく”使っていると、意外と間違っていることが多いもの。きちんとした敬語を身につけるだけで、印象アップにつながります! マナーアドバイザーの松本繁美先生と一緒に、正しい敬語の使い方をマスターしましょう♪

敬語は正しく使えるように意識していても、普段の話し言葉は無意識ですよね。自分は正しい日本語を使っていると思っていても、意外と間違えやすいのが「ら」抜き、「さ」入れ、「れ」入れ言葉。たとえ間違っていても何気なく聞き流してしまうことが多いですが、この機会に正しい言葉使いを確認しておきましょう。

「ら」抜き言葉

「ら抜き」言葉とは、可能を表す表現で「ら」を抜いてしまう言い方。「食べられる」⇒「食べれる」、「見られる」⇒「見れる」などが有名です。「られる」を尊敬語で用いているのが間違いやすい原因かもしれません。まずは可能表現の「ら」の正しい使い方をチェックしましょう。

○ 女性の腕でも持ち上げられます。
× 女性の腕でも持ち上げれます。

○ 朝9時には起きられます。
× 朝9時には起きれます。

○ あと10分で決められます。
× あと10分で決めれます。

「ら」抜き言葉には、このほかにも「着れる」「出れる」「見れる」などがあります。中には親しい相手と話すときは「ら」を省略して、目上の人や仕事相手などには「ら」を戻して使うという人もいますが、とっさのときには普段使っている言葉が出てしまうものなので、普段からきちんとした言葉使いをしたいものですね。「ら」は尊敬語のためだけでなく、可能を表す言葉使いだと覚えておきましょう。

「さ」入れ言葉

「人に~をやらせる」という意味の形に動詞を変換するとき、「せる」をつけるところに「さ」を入れて「させる」としてしまっているため「さ」入れ言葉という名前がつきました。例えば「走る」「読む」「通る」を変換するときは、「せる」をつけた「走らせる」「読ませる」「通らせる」が正解です。「さ」入れは改まった場で使われることが多いため、敬語と混同して間違って使う人が多いようです。

○ 一生懸命やらせていただきます。
× 一生懸命やらさせていただきます。

○ ご意見を聞かせていただきます。
× ご意見を聞かさせていただきます。

○ のちほど見せていただきます。
× のちほど見させていただきます。

○ ご指摘の箇所を直させていただきます。
× ご指摘の箇所を直ささせていただきます。

「さ」入れは、「させていただく」の形にするときに、「さ」の入らない動詞にまでうっかり入れてしまったという小さなミスから始まったのではないでしょうか。不要な動詞に「さ」を入れてしまうと、言葉としても噛みそうになってしまうので気をつけましょう。ただし、「来させる」「食べさせる」に関しては、正しい言い方であるとされています。

「れ」入れ言葉

「れ」入れという言葉はあまり耳にしたことがない人も多いかもしれませんが、実際に聞いてみるとおかしいと気づくことも多いでしょう。可能を表す言葉と、尊敬を表す言葉使いの違いを正しく覚えましょう。

○ 人前であがらずに話せるようになりたいです。
× 人前であがらずに話せれるようになりたいです。

○ 今日中に履歴書を書けます。
× 今日中に履歴書を書けれます。
※「書く」という動詞の受け身・尊敬は「書かれる」。可能表現は「書ける」です。
例) スキャンダルを書かれる(受け身)
   先生が黒板に書かれる(尊敬)

○ なるべく早く行けるように努力します。
× なるべく早く行けれるように努力します。

「れ」入れ言葉は、シーンによって正しい使い方が異なります。可能と尊敬、自分が今どちらの意味で使いたいのかをしっかり把握しましょう。

正しい敬語を使うと間違えない!

「ら」抜き、「さ」入れ、「れ」入れ言葉の使い方に自信がなければ、よい方法があります。本日の例題すべてには適用できませんが、きちんとした敬語表現に言い換えてしまうことで、己ずと正しい言葉使いができ、不自然な「ら」「さ」「れ」から解放されるんです。

○ ご意見を聞かせていただきます。
◎ ご意見をお聞かせ願えますか。
※依頼形に変換します。

○ のちほど見せていただきます。
◎ のちほど拝見いたします。

○ 預からせていただきます。
◎ お預かりいたします。

○ なるべく早く行けるように努力します。
◎ なるべく早く伺うように努力いたします。

<今回のまとめ>

さて、この第8回でビジネスマナーの連載はひと区切りとなります。読者のみなさんには、正しい敬語を身につけるためには日々の積み重ねが大切であること。また、キャリアアップすればするほど、確かな言葉使いが求められることを覚えておいてほしいと思います。時には失敗しても、「美しい言葉で話そう、感じよく伝えよう……」という気持ちを持っていてもらいたいと思います。この機会に敬語の使い方をマスターして、すばらしい言葉使いのすてきな女性に成長して下さい!

(松本繁美)

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※この記事は2016年09月27日に公開されたものです

松本繁美(マナーアドバイザー)

1994年に研修会社エル・ステーションLTD.を設立。マナーをはじめとして各種企業研修、講演会のプロデュースを手がける。専門学校の客員講師、雑誌や新聞のマナー記事の監修、TV番組のコメンテーターとしても活躍中。テーブルマナー、冠婚葬祭、ビジネスマナーなど、今どきのマナーのデザインで定評がある。

著書、監修 「ビジネスマナー講座」「冠婚葬祭暮らしのマナー大百科」(日本文芸社)、「大人のマナー基本はこれだけ」(講談社)、「贈るとお返しのマナー」「日常の食卓マナー」「はじめてのテーブルマナー」(主婦の友社)、「女性のためのマナーブック」(大泉書店)など多数

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