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【少女マンガに学ぶ脈あり脈なし】第12回『きみはペット』

和久井香菜子

少女マンガを読んで、萌え萌えするだけではもったいない! ここには恋のノウハウが詰まっているのです。「魅力ある人物像」を追求している少女マンガだからこそ、恋愛の教科書にするべきですよ。片想い中に悩む「脈あり」「脈なし」について検証する連載です!

こんにちは、少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子です。

今、100人住んでも大丈夫なシェアハウスにいます。
社員寮などをリノベーションして、大型のシェアハウスとして貸し出すのが人気のようなのですよね。男女半々、半数は外国人という、たいへんグローバルなおうちです。キッチンやトイレ、お風呂などは共用なので、そこでハウスメイトと顔を合わせますが、たいてい共通語は英語です。

20代の住人が多いので、ハウス内恋愛も活況の模様。一緒にご飯を作って食べたり、お互いの部屋に入り込んだりと、まあたいへん楽しそうです。

で、自分はどうかというと、予想以上に引きこもってます。仕事して帰ってきて、自宅でまで社交的にしようという気がサラサラないみたい。住み始めて4カ月になりますが、いまだ友だちはゼロです。

ハウスでも、社交的にお友だち作ってガンガン楽しむ人と、ちょっと豪華な共用スペースがあるひとり暮らしスタイルを保つ人と、分かれていそうです。

いったん仲良くなったら気にならないんだと思うんだけど、自宅はプライベートスペースなので、余計な気遣いはしたくないんですよね。知らない人と「こんにちは」からはじめる元気もないままです。誰かと一緒に住むって、心安らげる相手じゃないと厳しいよなと、しみじみ思います。

今週の教科書『きみはペット』

働く女性のバイブル的な作品です。
会社では周囲の不理解や自分の不器用さ、トラブルなどでストレス溜まりまくりのスミレ。大学時代からのあこがれの蓮實先輩とつきあい始めますが、2人の関係はちょっと緊張感の漂う感じです。お互い、相手に嫌われるのが怖くて、みっともないところが見せられない。

一方でスミレは、自宅マンションの玄関で段ボールに入った美青年を拾うんです。彼に「モモ」と名付けて、ペットとして飼い始めます。このモモの前では、素直に泣けるし、だらしない姿も、怒った顔も見せられる。最高潮に安らげる存在です。

ギューッと抱きしめて、フワフワの頭をなでると、それまでの怒りや悲しみがスッと引いて落ち着くスミレ。しかもモモはそこで野獣と化したりしないんですよ、最高の抱き枕です。

外では恋人を作り、家には癒しがいる。これ以上の環境があるでしょうか。恋人同士の付き合いって、時にストレスの源になることもあります。恋人同士でドキドキしつつ、家に帰れば、そのドキドキから来るストレスの発散ができる。夢のような環境じゃないですか!
(ふと思ったけど、これって自宅で妻とそこそこうまくやりつつ外で不倫する人と同じ思考回路だな……)

スミレに学ぶ脈ありサインを見逃さない方法

すみません、あらためて読み返してるんですが、読めば読むほど真剣にときめいちゃって、ぜんぜん解説できそうにありません……。

スミレは、高学歴高収入高身長のいわゆる「三高」ですが、対人関係はとても不器用。モモを「ペット」として人外扱いすることで、ようやく素直になれる。モモは、そういうスミレに不可欠な人間となることで、自分の存在意義を見いだしている(と言いながら彼は世界的に期待される名ダンサーなんですが)。

お互い趣味が合ったり、魂が触れ合うような会話のできる相手っていますか?
がっつり深く関わり合って、素直になれて、みっともない自分を見せられる相手。
こんな関係になれる人はそうそういないですよね。

これってそのままスミレとモモの関係です。
その上、初っぱなからモモはスミレに「好きだよ」もしょっちゅう言うし、抱きついたりキスしたりとスキンシップもたっぷりしてくれます。
普通に考えたら、「脈ありサイン」出しまくりです。
でもキスやハグ以上は理性でストップ。いや~、スミレ、愛されてますよね!

情熱に押し流されてしまいそうなときでも、状況を冷静に判断して相手を思いやれる男性、しかも20代前半の。なんですかモモ、できすぎですよ。このモモの我慢ッぷりがまた萌えです。
ラスト、スミレとモモが恋愛関係になってから「作品に興味がなくなった」という読者は多いはず。モモとスミレはプラトニックだったからこそ、2人の関係は魅力的だったんですよね。

「好きだよ」とかハグとかキスとかは、わかりやすい脈ありのサインですよね。これらの行為を、欲望を満たすための手段として使う人がいると思うので、見極めには注意が必要です。

「愛してるよ……だからお金貸して」
「僕には君だけだ……だからいいでしょ?」

だと、いろいろ台無しですよね……。

モモは、好きって言うのも、ハグもキスも、その先に進むための通過点じゃないところに愛情を感じますし、そここそ脈ありサインと言えます。

愛情表現の目的がなんなのか、身体なのかお金なのか、それとも相手を癒すためなのか。そんなことが見極められたらサインの読み取り成功です。

まとめ

「好きだよ」「大丈夫だよ」といった癒やしの言葉をくれる
ハグやキスを惜しまないし、嫌がらない
だけど深い関係にはならない! ここ大事!

てかそんな人たぶんあんまりいないので、ファンタジーとリアルが絶妙に混じり合ってるところが、この作品の秀逸なところです。

あー、ハウスにモモ、落ちてないかな~!

(文・イラスト/和久井香菜子)

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※この記事は2016年09月20日に公開されたものです

和久井香菜子

少女マンガ攻略・解析室 室長(http://kanako-wakui.net/index/)、編集・ライター。卒業論文で『少女マンガの女性像』と題して、女性の社会進出と少女マンガの主人公の描かれ方がどうリンクしているかを研究。以後、各種少女マンガレビューの執筆を始める。著書に『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)がある。

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