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第16話 救い

今度は、大輔からではなかった。

松岡比呂
0X0−XXXX−XXXX

比呂だ。その表示を見て、
わたしはすぐに電話をとった。
「もしもし?」
「あ、奈緒子? 今、真由と一緒に
そっち向かってるんだけど、まだ肉残ってる?」
「あ、えっと、どうだろ」
しまった、声が震えてる。
「どうした? なにかあったのか?」
声の様子で察したのだろうか。
スマホから心配そうな比呂の声が聞こえる。
「だいっ……」
大輔が、と言おうとして、のどが詰まる。
「すぐ行くから待ってて!」

宣言通り、比呂はすぐに来てくれた。真由も。
2人が来るまでに、いくぶん冷静になっていたから、
肉がなくなるから、先に取ってきていいよと言ったのに、
比呂はわたしの手をつかんで、外に出た。

「ここで聞いてみたら?」
歩きながら事情を話したら、
真由がカラオケボックスを選んだ。
「個室だから、泣いても誰も見ないし」
比呂にも真由にも、気づかれちゃってたんだ。
留守電聞いたら、泣いちゃうかもしれないってこと。
「うん」
2人のやさしさに胸が温かくなる。
「でも、比呂と真由には見られちゃうね」
「そんなのいまさらだろ。アレだったら出ていくし。
歌っててもいいし」
「じゃあ、もし泣いたら歌ってて。うるさいやつ」
「ラジャ」
比呂と真由に後押しされ、
留守電のボタンを押し、耳にあてる。
ところが。
「——メッセージは以上です」
ほんの数秒、雑音が入っているだけだった。

……ほっとした。
決定的な言葉がなかったことに。
まだ、戻れないし、先へも進めない。
そんな中途半端な気持ちで、
彼の言葉を聞かなくてよかった。
何もメッセージがなかったことを伝えると、
2人もほっと息をついた。
「じゃあ、歌う?」
「そうだね。もったいないし」

比呂と真由とわたしは時間が来るまで、
明るい曲ばかり歌っていた。

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