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【少女マンガに学ぶ脈あり脈なし】第2回『NANA』

和久井香菜子

少女マンガを読んで、萌え萌えするだけではもったいない! ここには恋のノウハウが詰まっているのです。「魅力ある人物像」を追求している少女マンガだからこそ、恋愛の教科書にするべきですよ。片想い中に悩む「脈あり」「脈なし」について検証する連載です!

こんにちは、少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子です。

先日、たいそうイケメンの青年とデートに行くことになりました。なんだかうれしくって思わずまわりに言いふらしていたら、デート後にいろんな人から「それで、どうなった?」と聞かれました。

「もしかしてデートって、ご飯食べて帰るだけじゃなくて、どうこうなる前提のことを言うの?」と、今更ながらペラペラ言いふらしたことに青ざめております。そんないかがわしいことを周知して回ってたのか私は! ここらへんの感覚が私は『りぼん』止まりなのかもしれないです。

とはいうものの、公園で遊んで、ご飯を食べに行って、お酒を飲んで、そのあとどうすればそんな話になるのか皆目見当もつきません。恋愛マスターの友人に聞いてみたところ「『で、この後どうする?』って聞けばいいんだよ」とのこと。
「えっ?」とか「それ、どういう意味?」とか聞かれたら「そ・う・い・う・意味♪」と言えばいいし、「帰ろうか」と言われたら、ハイハイと帰ればいいのだとか。

世の中の男女はそんな高等コミュニケーション術を使っていたのですね。今まで何度チャンスを逃したのか、考えるのもウンザリします。

今週の教科書『NANA』

で、そんなときに思い出した作品が『NANA』。

対照的な2人のナナの物語です。西原理恵子さんいわく「何にもしてなくてトクしてる子と、それなりにがんばってる子……の話」です。がんばってる方の子はバンドやってて売れっ子になるべく切磋琢磨しています。がんばってない子は、仕事も男も続かず、環境に文句言ってるつまらないヤツですが、なぜかいい思いをしています。

そのがんばってないほう小松奈々には彼氏がいました。しかしその彼氏・章司は、同じ美大の同級生でバイト先が同じ幸子と恋に落ちてしまいます。そのきっかけになったのが「わざとだよ?」という幸子のセリフ。大変有名なシーンです。

バイトから上がって、章司と幸子が終電に乗るためにホームの階段を駆け上がっているときのこと。幸子の履いていたサンダルが脱げてしまいます。「先行って! 終電出ちゃう!」と幸子は章司に言います。幸子を待って一緒に電車を逃した章司は「走らないと終電逃すの分かってて なんでそーゆー靴 履くかな」とやんわり責めます。すると幸子がポワッとした顔で言うんです。

「わざとだよ?」。

ああ腹が立つ。
こういう作為的なことできる女が結局はいい目を見るんだよ!
……と思ってたけど、よく考えたらそうとも言えないかも。

章司の脈ありサインとは?

「わざとだよ?」と言われた章司はすかさず、かあっと赤くなるんだけど、これこそ脈ありのサインですよね。
なんとも思っていない相手に同じことを言われたら、

「わざとってなに? お前なんで終電逃したいわけ? 暇なの?」

とか、まったく意図に気づかないかもしれないんです。

「このあとどうする?」と言われて「? 帰るよ?」と返事をするか「えっ?」となるかの違いですね。戸惑われたらこっちのもの。相手も意識してるってことなんですよ。

そもそも「先行って! 終電出ちゃう!」と言われて「ほいさわかった、じゃあな!」と先に行ってしまってもよかったわけですよ。女の子を置いていけないとか、一緒にいたいと思うから待ってるわけです。

実際私、デートの帰りに「先に行ってて」と言われて、「えーっ、なんで?」と思いつつ指示通り、本当に先に帰ったことがあります。あれは何かのサインだったの……?

幸子に学ぶ脈なしを脈ありにする方法

幸子に惹かれつつ、奈々を裏切れないとモンモンとする章司。幸子にハッキリくぎを刺そうとしたところ、幸子にポロポロ泣いてこう言われます。

「あたし…邪魔しないように気をつけるから……」
「章司と彼女の仲を…絶対邪魔したりしないから」
「だから……お願い…友達でいいから……」
「縁を切るなんて言わないで」

これでグラッときた章司は、一気に幸子へと気持ちが傾きます。自分を抑えてまで思ってくれる思いの強さ、彼女(奈々)を第一に考えるという優しさ(奈々は章司への思いやりが少ないので特に響いたことでしょう)にグラッときた感じですかね。

幸子が作為的に泣いたかどうかは知りませんが(マンガだし)、「この人を失いたくない!」と思うくらいステキな男子がいたら、猛進してもいいかもしれないですね。単なる時間の無駄になることもあるかもだけど。

一方、主人公の奈々は章司に振られたあと、超人気バンドのリーダー・タクミとなんやかんややったりして、結局元カレよりもレベルの高いのとくっついてます。さすが少女マンガ、転んで起き上がるどころかそのままハイジャンプできるらしい。これならいくら振られたって別にいいよねっていうか、むしろバンバン振られたいよ。

今週のまとめ

「遠回しな表現に相手が気づくかどうか。意識しているふうだったらそれは脈あり!」

逆に、相手からのお誘いも逃さずどんなパターンで来られても対処できるようにしておきたいですね。……って、ハイ! 次は必ず!!

(文・イラスト/和久井香菜子)

★次回の『少女マンガに学ぶ脈あり脈なし』は7月19日(火)掲載予定です、お楽しみに!

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※この記事は2016年07月12日に公開されたものです

和久井香菜子

少女マンガ攻略・解析室 室長(http://kanako-wakui.net/index/)、編集・ライター。卒業論文で『少女マンガの女性像』と題して、女性の社会進出と少女マンガの主人公の描かれ方がどうリンクしているかを研究。以後、各種少女マンガレビューの執筆を始める。著書に『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)がある。

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