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【恋愛相談バー】彼氏はいるけど結婚相手としては「なんか違う」……。妥協の仕方って、あるの?

高山真

都内某所にひっそりとたたずむ「マコトねえさんの恋愛相談バー」。ここには毎夜、“恋に悩める子羊”が来店し、店主であるマコトねえさんから「愛のカクテル」なるアドバイスをいただく。さぁ今宵はどんな子羊が来店するのかしら……?

 恋愛相談バー

今宵のご相談

ご相談者:りあーなさん(25歳・パート)

恋愛のスタンス:能動的、受け身、どちらでもある
結婚願望:期限は決めていないが、いずれは結婚したい

相手:

28歳(会社員)
居住スタイル:ひとり暮らし

■出会いの経緯
友人の紹介で出会って、付き合うようになりました。付き合って二年ほどです。

■交際歴
2年

■相談内容
これまで何人かと付き合ってきたけれど、結婚を考えるとなんとなく腑に落ちずに別れてしまってきています。既婚の友人と話して、完璧な結婚相手などいないことは理解しているつもりだけど、「失敗したくない!」と思うと踏み切れずにいます。妥協の仕方について教えて欲しいです。

マコトねえさんからのアドバイス

●幸せは「幸運」以上に「才能」がもたらすものよ

「完璧な結婚相手などいない」という言葉はアタシも賛成するけれど、それにしたって「妥協」って、後ろ向きで寂しい言葉ねえ……。要はあなた、「この相手とでは、私は幸せにはなれない可能性が大きいかも」と思ってきたからこそ、二の足を踏み続けたわけよね。

今回はこの連載の最終回。アタシ、あなただけじゃなく、読んでくださっているすべての方々に、アタシなりの考えをお話ししたいと思います。

アタシね、「幸せになる」のは「相手の問題」とか「運・不運の問題」だけじゃないと思っているの。それ以上に大きな要因は、あなた自身の「幸せになる能力」の問題だと思う。そう、「幸せになる能力」、「幸せになる才能」は、はっきり言って存在します。アタシ、この件に関しては『恋愛がらみ。 不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』という自分の本でもガッツリ書いているの。というか、あの本のテーマは、ほぼソレだと自分では思っているわ。今回は改めて、そのことを中心にお話しさせていただくわね。1冊の本とはちがってスペースに限りはあるけれど、最大限の努力をするわ。

「結婚に不向きな相手の見分け方」については、アタシはこの連載3回目でお答えしました。でも、あなたがいままで二の足を踏んできた、歴代の彼氏は、別にDV男だったり、借金癖があったりみたいな「すぐにでも縁を切るべき相手」ではないんでしょ? あなたの言葉を借りれば、「なんとなく腑に落ちない」程度の相手なのよね。あなた自身、「妥協できない自分の問題」と思っているようだし。でもね、最初に言ったとおり、それを「妥協」ととらえてしまうのは、あまりにも寂しいと思うのよ。

彼に点数をつけてしまうことは仕方がない。大なり小なり、誰でもやっていることだから。もちろんアタシもしてきたし。でも、その点数は、一度あなたがつけてしまったら、もう変動しないの? あなたが一旦判断した「基準」が、彼のすべてなの?

●変わりゆく「基準」や「価値観」に、あなたがついていけてないのかもよ

たとえ話をひとつしましょう。江戸時代の昔から1940年代あたりまで、マグロのトロって捨てられていた部位なんですって。昔の日本人はさっぱり・シャキッとした白身のお魚が好きで、「脂」を好まなかったのが大きな理由だそうよ。だから江戸時代の人たちにとって、高級魚といえば鯛や鮎などで、マグロは下魚(げざかな)だったそうなの。おまけに冷蔵技術も発達していなかったから、トロのように脂の多い部位はすぐに傷んで、猫のエサとか肥料としての使い道しかなかったんですって。トロが珍重されるようになったのは、戦後、冷蔵技術の発達とともに「脂は、うまみ」という西洋の食文化が入ってきてからのことだとか。そういえば、うちの祖父母が生きていたときも、お鮨は白身のほうを好んで食べていたわ。時代によって価値が変わるって、面白いわね。

話を戻しましょう。あなたがつけた“彼の点数”は、もう変動しないの? もし、彼が「穏やかなんだけど、覇気がない」みたいな人だとしたら、それを「長く一緒に暮らしていくには、そういう人こそベスト」みたいに高値をつける人もいるわけじゃない? あなたには、そういう「価値観の変化」は絶対に訪れないの? 人間って、一度固定したところからは動けないものなの?

アタシが「幸せになる能力の有無」と定義しているのは、まさにこの部分なの。「ひとりの人間の長所と短所は、視点や角度を変えたら、まったく違ったものとして見えてくる」ということを知っているかどうか。そして、変わりゆく自分の価値観と、変わりゆく相手に対して、柔軟でいられるか。このふたつが、「幸せになる能力」とか「幸せになる才能」とアタシが呼んでいるものです。この能力は、相手から与えられるものではありません。彼がどんなにお金持ちだって、どんなにイケメンだって、どんなに優しくたって関係ない。その能力は、自分自身が種をまいて、自分の中で育てていくしかないのです。

で、アタシの経験上、「相手から与えられるもの」だけで相手を選んできた人、それだけで相手に点数をつけてきた人のほとんどに、残念ながらこの能力は備わっていないわね。

つきあいが順調だったときは「グイグイ引っ張ってくれる男らしい人」に見えていた彼の性格が、つきあいがうまくいかなくなったときに「女の気持ちや望みを考慮することなどまったくない、独善的な人」に見える……。そんなこと、当たり前のようにあるわけですよ。

そのことを知っているからこそ、ひとは柔軟な対応ができるもの。「どうして彼はこんな性格になっちゃったの?」という「視点」から動けなかったら、彼だけを責めるだけで、事はなんにも改善しない。でも、「問題が起こったから、あのステキだった性格がいまはこう見えてるのね」という解釈ができる人だったら、少なくとも「この問題を解決するために、私にも何かできることがあるかも」という考えになるわけ。あなたが何かポジティブに動くことで、事が大きく改善することだってある。その姿勢を見た彼が、彼自身の考えやスタンスを変える可能性だってある。そういうふうに「ふたりの関係」に努力するあなたの姿に、彼があなたの点数をグッと上げる……。その可能性もおおいにあるわけでしょう?

そう、点数ってね、あなたも相手からつけられるのよ。あなたが歴代の彼氏を「何か腑に落ちない」という理由で遠ざけてきたように、あなた自身も、歴代の彼氏とか狙いをつけてきた男たちから「いまいちグッと来るものがない」と判断されてきたわけ。人間関係って、どこまでもお互い様だからね。

それを聞いて、「私の全部をわかってるわけじゃないのに、いい加減なこと言わないで」と思うのは、もちろんあなたの自由よ。でも、あなたは過去に、そういうことを男たちにやってきたってことだからね。

●人や生活の「さまざまな美味しさ」を味わえる……それは最高の「才能」よ

ただ、勘違いしないでほしいのは、先ほども言ったとおりアタシだってこういうことはやってきたし、やられてきたの。うまくいった恋愛もあるし、空中分解した恋愛ももちろんあったわ。でも、いろいろ視点や考え方を変えて、「いまの問題が、ふたりの間で違う形に見えるかもしれない」「違う形に見えたら、そこから突破口が見えるかもしれない」というトライアルをしてきたことだけは間違いない。そして、そのトライアルに乗ってくれた人と、結果として長く仲良くつきあえてきた、ということなの。ま、その人は9年前に亡くなってしまったわけですが。

そして現在、アタシにはとても仲のいい、ダンナ的な存在がいますが、9年前に亡くなった彼と、いまのダンナ的な人は、何から何までちがう人よ。ただ、アタシは、生まれてから40年以上、「いろんな人のいろんな美点を探すのが、人生の醍醐味」と思って生きてきたところがあるし、現在のダンナ的な存在の彼にもそうやっていろいろトライはしているわ。

そう、アタシにとっては、「トロを捨てるのはもったいないし、かといって鯛や鮎の美味しさを否定するのも、とんでもないこと」なわけよ。あなたの歴代の彼氏、これからあなたが出会う彼、どちらも、もっともっと美味しいところが眠っている人たちかもよ。人間って、あなたが思うほど単純じゃないわ。

いろんな人のいろんな美味しさを味わえる人、または、ひとりの人の中にあるいろんな美味しさを味わえる人が、人生における「食の達人」である……。アタシは強くそう信じているの。その「貪欲さ」や「感受性の多彩さ」は、「妥協」なんて言葉とはいちばん遠いところにあるものだと、アタシは確信しているのよ。

だから最後にひとつ。あなた自身のことも、低く見積もらないで。あなたには、もっともっと眠っている能力があるはず。さまざまな人の美点を見出す能力、そして、さまざまな問題をポジティブな方向に持っていく能力……。それらを伸ばしていくことは、そのまま「幸せになる能力」を伸ばすことです。

「妥協」なんて言ってるヒマはないわよ。もっともっと欲張りになっていいんだもの。それは決して、子どもの欲張り方とはちがうもの。「お金持ちで私だけをお姫様扱いしてくれる、超イケメン」みたいな、もはや小学生くらいしか読まないようなマンガに出てくる王子様を探す……、という「欲張り」とは全然ちがうものです。大人が「欲張り」でいるためには、大人としての努力が必要なの。心から応援しているわ。頑張ってね。アタシたちの人生はこれからよ!

愛のカクテル

相手や自分の中に眠る「まだ見ぬ美点」を嗅ぎ当てる人が、
「幸せになる能力」の高い人なのよ!

おすすめメニュー

このご相談&回答が“刺さった”方々へ――。ちょっと年上のアタシから、同世代のお友達からは仕入れられない、懐かしくてすてきな歌や映画をご紹介。“キュンキュン”や“イケイケ”をチャージして、日々をもっと彩っちゃいましょう♡ って誰よ、「ちょっと年上? すごく年上の間違いでしょ」とか言ったのは? うふふ。

★日本のドラマ
「最高の離婚」(瑛太、小野真千子ら出演。2013年フジテレビ系列で放映)

3年半ほど前、フジテレビ系で放映されていた作品だから、懐かしいってのとはちょっとちがうけれど、見ておいてソンはない作品よ。「結婚までの盛り上がり」ではなく「結婚してからの、ささいな不満やすれちがいが大きくなっていく様子」にスポットを当てた良質な作品。幸福を嗅ぎ当てる才能、幸福になる能力について、観ているそれぞれの人たちの胸に「自分にとっては、どういうことなんだろう」と問いかける力を持った作品だったわ。

★日本のドラマ
「セクシーボイスアンドロボ」「野ブタ。をプロデュース」「Q10」(すべて木皿泉の脚本作品で、日本テレビ系列で放映)

前回のこのコーナーで「すいか」というドラマを紹介しましたが、「すいか」も木皿泉の作品なの。そう、アタシは日本の脚本家の中で木皿泉をもっともリスペクトし、信頼しているのです。このコーナーも最終回だから、オススメ作を一気に放出しちゃったわ。人が、誰かと生きていくこと……。その難しさや美しさを、しかしどこまでもさりげなく描くことにかけて、アタシは木皿泉の右に出る人を知りません。どの作品かは言わないけれど、「人は試すものではなく、育てるものだよ」という名セリフを探してください。探す過程の中で、宝物のような言葉にたくさん出会えるはずよ。

★お店の人気メニュー★

恋愛がらみ。: 不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ

『恋愛がらみ。 不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』(小学館/1404円)

女性ファッション誌「Oggi」(小学館)で、10年にわたり読者のさまざまなお悩みを鮮やかに解決してきた高山さんの大人気連載が、「恋愛」に特化したものを書籍化。相談者だけでなく、本を読むすべての女子に“刺さる”名言・金言が満載の、超新感覚の幸福論です。目からウロコのものの見方や考え方、男子がなかなか教えてくれない「男ゴコロ」の詳細な解説、すぐにでも実践できそうなかけひきテク、そして、女子たちのハートに寄り添い、背中をやさしく押してくれる愛情……。人気コラムニストのジェーン・スーさんも「知的ゲイは悩める女の共有財産」と絶賛する1冊です。

(文/高山真 イラスト/あべさん)

今回を持ちまして「マコトねえさんの恋愛相談バー」は閉店よ。
期間限定のお店オープンだけど、いかがでしたかしら?
またどこかでお目にかかったら、愛のカクテルを味見してね! うふふ♪

>>>「マコトねえさんの恋愛相談バー」バックナンバーはコチラから

※この記事は2016年06月30日に公開されたものです

高山真

女友達でも絶対に言わない愛のある「本音アドバイス」に定評があるゲイのエッセイスト。ファッション誌Oggi連載の「マナー美人の心意気」を書籍化した『恋愛がらみ。: 不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』(小学館)は、マイナビウーマンのインタビューも好評だったジェーン・スー氏も、「知的ゲイは悩める女の共有財産」「辛気臭いのは御免。私たちはいつだって、華やかに叱られたい」と絶賛する一冊。

■公式ブログ 「高山真のよしなしごと」
http://d.hatena.ne.jp/makototakayama/

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