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【彼の不可解な行動8】世の中みんな草食系? 恋愛をしない男が多いのはなぜ?

ぐっどうぃる博士/恋愛カウンセラー・理学博士(生命科学)

朝井麻由美

男性と女性では脳に違いがあるために、考え方や行動が異なるとよく言われています。理解不能な彼氏の行動や、好きな男性の態度は、単なる脳の違いによるものなのか、それとも何か隠された事情があるのか? そんなわけで、オトコが本当に考えていることを知るため、おひとり様代表・朝井麻由美さんが恋愛カウンセラーのぐっどうぃる博士に疑問をぶつけます!

今回の相談者:27歳、専門職、実家暮らし

最近は、「彼女がほしくない」という男性がすごく多くてビックリしました。どうしてなのか、理由が知りたいです。

朝井麻由美(以下朝井):世の男性が草食系とか、絶食系とか言われ久しいですよね。この悩みの方の言うように、彼女がいらないって男性多いんですか?

ぐっどうぃる博士(以下博士):たしかに5年前くらいから、「彼女がほしくない」という男性が本当に増えたと言われていますね。

朝井:どうしてなのでしょうか?

博士:でも、そのまえに言っておかなくてはならないのが、この悩み相談の女性の周りにいる男性が、この女性に近づいてほしくないから言っている可能性があるということです。

このように言われた女性はまず自省しよう!

朝井:この女性に問題があるということですか?

博士:そうです。なぜこの話をしなくてはならないかといえば、利用可能性バイアスという人の認知の歪みがあるからです。これは専門家を含め誰もが陥りがちな認知の罠です。

朝井:利用可能性バイアス?

博士:人は思いつきやすい理由に引っ張られて原因を考えやすいということです。たとえば、ここ数年テロのニュースが多いですよね。その結果、電車で異臭がすれば、すぐにそれがテロだと予想してしまうとか。

また、何か犯罪があった時、遺伝学者は遺伝的な原因を考えがちになり、社会心理学者は、環境に原因があったのではないかと考えるというような。

朝井:でも、実際はそうとは限らないんですね。

博士:そうです。で、僕は5年ほど前に、5つくらいの媒体から、「最近恋愛をする気がしない。どうすれば恋愛する気になれるの?」という取材をうけました。

なぜそれらの媒体がそのような特集を組んだかといえば、それぞれの媒体で読者アンケートを行ったところ、「そもそも恋愛をする気がしない」という回答が多かったからなのだそうです。

朝井:なるほど。

博士:で、今回のような悩み相談があると、僕の頭にピンとこの5年前の情報が頭に浮かぶわけです。ところがこれは利用可能性バイアスかもしれない。

朝井:確かに。でも、まあ、他の可能性はおいといて、いったん博士の仮説に基づいた「ここ5年ほど、男性が恋愛する気がしなくなっている」という話をお願いします。

博士:そうしましょう。さきほどの「恋愛する気がしないのはなぜ」という取材を受けた5つの雑誌のうちの4つは女性誌でした。女性誌が多かったのは僕の恋愛指南書のほとんどが女性向けに書かれていることが理由かもしれません。

朝井:男性だけじゃなく、女性も恋愛する気がしなくなっているのですね?

博士:ええ、そうです。ちなみに残りひとつの男性誌の編集者は、「これまでうちの雑誌では、どうやったらモテるかとか、どうやって女の子を落とすかという特集ばかりやっていました。恋人を作る気がしないというのは初めてです」と言っていました。

朝井:なぜ、そんなふうになったのでしょうね?

博士:ここからは、先ほど言ったように僕の仮説なのですが、男が恋愛をするのを邪魔する3つの要素が関係していると思います。

朝井:ぜひ、教えて下さい。

「男の恋愛を邪魔する」3つの要素

女性に合わなければならない環境でなくなった

博士:一つ目は、「きっかけ」がないこと。人は具体的なものに強く感情を動かされます。男性の恋愛であれば、「目の前にいる女性」がそれです。ここ5年、男性が女性に会わない環境になったから、男性は恋愛をしなくなったと僕は考えています。

朝井:自然と出会える機会が減ったということでしょうか?

博士:最近は、経済的な余裕がなくなり、遊びも習い事もしなくなり、会社と家の往復だけになっている男性が多いと感じます。暇つぶしは、スマホなど無料のゲームで十分になる。すると、朝起きてから寝るまで、現実の女性に会わずに、1日が終わる。現実の女性に会わないので、恋愛する気が起きない、ということです。

朝井:女性も似たようなことを言っている人は少なくないですよね。

博士:元FDA(米国食品医薬品局)長官で医学博士でもあり、アメリカのタバコの規制に大きく貢献したデヴィッド・ケスラーによって書かれた『過食にさようなら』によると、1970年くらいからアメリカ人の肥満が増えたそうです。

その原因が誰にもわからなかったのですが、実はこのころからアメリカで庶民にとって身近なレストランが増え始めたということです。今やファミリーレストラン、コンビニ、ファーストフード、ドライブスルーなど、どこに行っても手軽に何か食べられる環境になっています。なんならスポーツジムでも食べ物が売られるようになったと、『過食にさようなら』に書かれています。

朝井:いつでも目に触れるところに食べ物があるので、食べすぎる人が増えたということですか?

博士:ええ、そうです。コンビニはそれぞれ決まった店構えをして、見ただけでそのコンビニだとわかります。すると、それがきっかけとなり、食べたくなるということです。

朝井:前回、チャールズ・デュヒッグ著『習慣の力』という本を参考に「きっかけ」について説明されていましたね。きっかけがあるから食べすぎる、一方で、現実の女性と出会うきっかけがなくなったので、男性は恋愛をしない。そういうことですか?

博士:そうです。ネットの出会いサイトやアプリは昔よりも充実していますが、これらも、使うにはまず出会いたいという意思が必要ですから。だからいつも女性のことで頭がいっぱいであるセックス至上主義には、女性に会うチャンスが増えている。他方、女性への興味が二の次である非セックス至上主義にとっては、一切のきっかけがない。

「報酬」が得られなくなった

朝井:能動的に動かなければならなくなった結果、出会いたい意志がある人とない人とで、二極化しているんですね。2番目の要素は?

博士:報酬が得られないことです。合コンに行って、お金と時間を使っても恋人が得られる可能性は低い。それどころか、結局フラれたり、相手にされなかったりして、傷つけられる可能性すらある。合コンじゃなくても、恋愛を成就させるのはいつでも難しい。

やっとの思いで付き合った恋人は、自分が思った女性と違ったりする。すると、恋愛をする気がしなくなってくる。

朝井:『習慣の力』によると、物事が習慣化するには、「きっかけ」と「報酬」が必要とのことですが、その両方が得られないということですね?

博士:そう。とにかく恋愛は、たくさんのコストを必要とし、なおかつほとんどが外れるギャンブル。一方で、世の中のサービスはお金をさえ払えば確実に報酬が得られます。

朝井:たしかに、CDを買えばアイドルと握手ができるとか、お店に行くと女性と話せるとか、お金を払えば確実に報酬が得られますもんね。

博士:しかも最近では、サービスの価格は下がり、サービスの質は向上し続けている。アダルト動画なんて無料で見られます。そうなると、現実の女性と付き合うというギャンブルをする気が無くなる。

実際には、「疑似恋愛サービスや性的なサービスより、現実世界の恋愛の方がよい」と思っていても、無理ゲーとなってしまい、その努力を先延ばしにしてしまう。

朝井:無理ゲーって、ようは、現実世界の女性を得るというのをゲームに例えると、そのゲームをクリアするのが難しすぎてやる気をなくすということですね?

博士:そう。アメリカの人気セックスセラピスト、マーティ・クレインが著したベストセラー『セックス・センス』は、セックスレスなど、男女の様々なセックスの問題に対して、新たな視点から解決の糸口を示している本です。その本にはセックスレスになる一つの要因として次のようなことが書かれています。

我々がセックスに求めているものは、性的な快感だったり、親密さだったり、コミュニケーションだったりするのに、実際のセックスではそれを得られることが少ない。

自分が相手からどう見られているのかを気にしたり、アダルト動画にあるような、完璧な自分じゃないとダメだと思ったりする。また快感はお互いの体調にも左右される。だから、セックスそのものも、確実に報酬が得られるわけでないギャンブルだったりする。

朝井:ということは、恋愛というのは、出会いから体の関係まで、コストが高い割に、リターンの少ないギャンブルなんですね。

博士:相手がサービスではなく、人間だからどうしてもそうなります。

恋愛をしない「罪悪感」がなくなった

朝井:3つめの要素はなんでしょう?

博士:恋愛をしないことを誰も咎めなくなったことです。ある時代までは「恋愛をしないと恥ずかしい」「誰とも付き合っていないのは人としてどうなのか」という風潮がありました。でも今は違う。恋愛をしないことに何の恥ずかしさもない。多くの人に指示される考えは、「恋愛はしたい人がすれば良い」というものです。結婚も同様ですね。

朝井:たしかに、それだと恋愛は始まりませんね。ただ、これまでの3つの要素をまとめると、自分の意志で出会わないことを選択して、リターンの少ないことには手を出さず、それが誰にも咎められないのだから、別にそれでいいのでは……、と思ってしまいますね。

ただ、今回の相談者さんは、この状況のせいで恋愛が始まらないことを嘆いているんですよね。どうすればいいのでしょうか?

女性が魅力的でないと「恋愛したい」男性は近づいてこない!

博士:一つ目は、男性と出会うことです。出会いがなければ始まりません。
二つ目は、その女性が魅力的であることです。

朝井:女性が魅力的になる?

博士:最近、恋愛記事を書いているある女性作家が「私の周りにいる男性のほとんどが肉食系だ」と言っていました。

朝井:それはもしかして、どんな男性も積極的にさせるほどその女性が魅力的だから、という話でしょうか?

博士:そうです、その女性の見た目はとてもいいんです。見た目の良い女性の周りには何とかしてそれを手に入れようとする男性が群がります。

だから、女性は、自分の出来る範囲で魅力的になる努力をしないとなりません。

朝井:でも、その方のように生まれつきの美人なら良いですが、そうでないと辛いですよね。努力では限界があります。

博士:ええ、まあそうです。ただ、世の中いろいろな趣味の男性がいます。だから女性が自分の見た目や立ち居振る舞いを女性らしくしていて、自分を最大限綺麗に見せるようにしていれば、案外男性からアプローチをしてきます。

朝井:結局、美人で女子力の高い人が勝つという話になるのか……。

博士:重要なことは、魅力的だと感じた女性の前で、男性は魅力的であろうとするということです。魅力的な男性に会う頻度は、その女性の魅力に相関するだろうということです。

朝井:ははあ。

博士:出会いがあり、自分が魅力的であれば、恋愛は自然に始まります。彼がやさしくしてくれたり、会話で楽しませてくれたり、映画に誘ってくれたりして、いつのまにか、女性も彼を好きになるということが起こるでしょう。

チップ・ハースら著『スイッチ』では、人間の感情を象と象使いで例えています。象という動物は、動かない時はテコでも動かないけど、暴走すると止まらない。人間の感情はそれに似ているとその本には書かれています。

朝井:象?

博士:恋愛が始まらないのは、象が座って動かないでいる状態です。そういう時は男性も女性も恋愛をする気がしない。これが魅力的な異性と出会い、楽しい時間を過ごし、映画を見てとしているうちに、お互いの象が立ち上がり、徐々に歩き始め、やがて暴走するでしょう。まあ、それが恋愛です。

朝井:なるほど。悩み相談の女性が魅力的になって、いろいろな男性と出会えば、男性がその女性を手に入れたくなるってことですね?

博士:さしあたって、この問題も解決ですね。

朝井:解決っていうか、……身も蓋もない話でした!(笑)

博士:本当に「周りに恋をしたいと思っている男性がいない」と悩んでいる女性がいたとして、その女性がこの状態から抜け出したいと思うなら、その身も蓋もないと感じる努力をしなくてはいけないのでしょうね。

ただ、一部の女性は、ほんの少しやり方を変えるだけで、状況は大きく好転するかもしれないのですけどね。また、それは機会があれば、いつかお話ししましょう。

【まとめ】

1)彼が草食系に見えるのは、その女性に魅力がないからかもしれない。
2)利用可能性バイアスと言って、人は簡単に思いつくことをその原因として考えがちなので、何かの原因を考えるときは要注意。
3)恋愛をしない男性が増えたのは、女性と出会う機会がないからかもしれない。
4)恋愛をしない男性が増えたのは、女性と恋人になるのが難しいからかもしれない。
5)恋愛をしない男性が増えたのは、女性と恋人になっても思ったほど良いものではないからかもしれない。
6)女性が見た目や立ち居振る舞いを磨き、男性と出会うようになれば、男性が恋愛を始める可能性が高まる。

(構成:ぐっどうぃる博士、朝井麻由美)

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※この記事は2016年05月17日に公開されたものです

ぐっどうぃる博士/恋愛カウンセラー・理学博士(生命科学)

自身の体験と生命科学の視点から確立した、独自の恋愛理論で、多くの女性たちの支持を集める。過去にカウンセリングした女性は延べ11000人以上。恋愛や結婚に悩む女性たちに答える日本最大級の恋愛サイト『恋愛ユニバーシティ(http://u-rennai.jp)』主催。 著書に『モテの定理』『恋愛マトリックス』(ソフトバンククリエイティブ)、『恋で泣かない女になる61のルール』(講談社)など。
http://u-rennai.jp/goodwill/

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朝井麻由美

ライター・編集者。著書に『「ぼっち」の歩き方』、『ひとりっ子の頭ん中』。
Twitter:@moyomoyomoyo

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