【新連載】今は仕事が一番! なのにイケメンと出会ってしまって……
Story3★酒と男と仕事の話
「それでこの砥材と結合剤の微妙な割合が、
強度と削りやすさを決めるわけです」
実は会う前はどんなデートになるのか、
少し心配していたけれど、
加山さんが選んだお店は、アットホームで、
なおかつ品の良いフランス料理店。
お料理もおいしく、わたしは大満足だった。
それに加山さん自身も、
最初は言葉も少なめだったけれど、
ワインを一杯飲み干す頃には、
ずいぶん饒舌に変わっていた。
今、彼はずっとわたしに、
自分のしている工業用砥石製造の仕事を、
説明してくれている。
「で、削る物によって、
その割合もぜんぜん違ってくるわけなんです」
普通なら理系のむずかしい仕事の説明を、
延々されたら女子は嫌がるだろう。
だけどわたしは加山さんが一生懸命話している、
そのことがとてもうれしくて、
ずっとニコニコと相槌を打ち続けた。