【新連載】壊れたスマホに入っていたのは、昔の彼のメールアドレス……
Story1 ★なつかしメールアドレス
「それでさ、あいつ別れぎわに
『ぼくは、キミにはふさわしくない』
とかいっちゃって。逆でしょ。
あんたが新しい彼女作ったんだろうって」
あさみが自分と彼の別れ話に
「ぎゃっはっは!」と笑ったので、
わたしも悪いとは思いながら、
つられて小さく笑ってしまった。
金曜、居酒屋の個室の赤い間仕切りの中、
人目の気にならない空間で、
女子高時代の友人と飲むと、
心はすぐにあの頃に戻って、
テンションがものすごく上がる
……と思ったら。
「あっ!」
ワイングラスにひじをひっかけ、
こぼれた赤い液体が、
テーブルに置いたスマートフォンを直撃した。
「うそっ、マズい!」
すぐさま取り上げておしぼりで拭いたけれど
……スマートフォンは電源が入っているのに、
ボタンにもスイッチにも反応しない。