求人が増えても、失業率がゼロにならない理由は?
この4月、有効求人倍率が1.08倍となり、バブル崩壊後の最高水準と報じられた。いくら有効求人倍率が増えても、完全失業率とは統計のしかたが異なるので、失業率はゼロにならないのはご存じだろうか。
求人の増加は好景気のあかしでもあるが、現在の就職率は8%程度しかない。求人1件あたりの就職率は、リーマンショック後の2010年のほうが、はるかに高い水準なのだ。
求人が増えても失業率は減らない?
就職/転職の状況をあらわす値として、「有効求人倍率」と「完全失業率」が使われる。それぞれの特徴を抜粋すると、
●有効求人倍率
・公共職業安定所(ハローワーク)のデータ
・求人/求職ともに、ハローワークを利用した件数
・パートタイムを含む
・新卒者は含まない
●完全失業率
・総務省のおこなう「労働力調査」のデータ
・15歳以上
・ランダムに選んだ約4万世帯/約10万人が対象
・就職する意志はあるが、仕事についていない人の割合
だ。
この4月の調査結果は、どちらも季節調整法による補正後の値で、
・有効求人倍率 … 1.08倍
・完全失業率 … 3.6%
これをもとに単純計算すると、1人あたり1.08件の求人があるので、えり好みをしなければ全員が職につけることになる。だが100人中およそ4人は職を探している状態なのは、有効求人倍率と完全失業率は、統計方法も分母となる対象者も異なる、まったく別のデータだからだ。
職種によって6倍の差も!
景気が悪くなれば求人が減るのは当然だろうが、就職率も下がるのか? 総務省「労働力調査」から、有効求人倍率(実数)と完全失業率(実数)、求人/求職がかみ合って就職できた場合の充足率、有効求人倍率1倍あたりの充足率の推移をみると、
・1990年(平均) … 1.40倍 / 2.1% / 8.76% / 6.26%
・2000年(平均) … 0.59倍 / 4.7% / 6.26% / 10.51%
・2010年(平均) … 0.52倍 / 5.1% / 6.63% / 12.74%
・2014年1月 … 1.09倍 / 3.7% / 7.05% / 6.47%
・2014年2月 … 1.12倍 / 3.6% / 7.85% / 7.01%
・2014年3月 … 1.10倍 / 3.6% / 9.76% / 8.87%
・2014年4月 … 1.00倍 / 3.6% / 8.76% / 8.76%
となり、バブル期と呼ばれる1990年以降、有効求人倍率も充足率もたしかに向上している。だが、1倍あたりの充足率は、リーマンショック後の2010年よりも低いスコアになっている。つまり、求人が増えたわりには、就職にまで至らないケースが多いことを意味しているのだ。
その理由は「職種」だ。2011年4月~2014年3月の求人/求職件数から、おもな職業の月平均件数、有効求人倍率をあげると、
・専門的・技術的職業 … (求人)45万人 / (求職)35万人 / (倍率)1.28倍
・生産工程・労務の職業 … (求人)34万人 / (求職)69万人 / (倍率)0.49倍
・サービスの職業 … (求人)25万人 / (求職)18万人 / (倍率)1.32倍
・販売の職業 … (求人)22万人 / (求職)28万人 / (倍率)0.77倍
・事務的職業 … (求人)16万人 / (求職)68万人 / (倍率)0.22倍
と、職種によって差が激しく、機械や電気のエンジニアなら1人あたり1.28件の募集があるのに、事務職になると5人に1件の割合となってしまう。トータルで見れば求人件数は増えているのだろうが、求める/求められる職種が異なれば、雇用が成立するはずがないのだ。
まとめ
・有効求人倍率は、ハローワークを利用した際のデータ
・完全失業率は、総務省の労働力調査の結果
・対象が異なるので、この2つは完全に連動しない
・職種によって、有効求人倍率は雲泥の差がある
事務職や生産は過当競争ぎみなので、転職を考えているひとは相当な覚悟が必要だ。
時代のニーズに合わせて、方向転換するのも一手だろう。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年06月29日に公開されたものです