【新連載】神さま、どうか今年こそあの人と縁を切れますように……

Story2 ★切なくて切れなくて

のろのろと進んでいた人ごみは、
江島神社の鳥居をくぐり、
階段に差し掛かるあたりでピタリと止まった。
たぶん入場制限がかかったのだろう。
周囲は親子連れや友だち同士、
それに仲のよさそうな恋人たちが、
みなはしゃぎながら話をしている。
わたしはそれを聞きたくなくて、
うつむいて小さくため息をついた。

ひいき目もあるかもしれないけれど、
石井施設長はいい男だと思う。
レンタルスペースは割と新しいビジネスだから、
顧客とのアクシデントにもマニュアルは乏しい。
その中で施設長のとっさの判断は、
トラブルが大きくなるのを何度も防いできた。

わたしとの関係が続くようになっても、
仕事上ではまったく態度は変えない。
他の部下にも厳しさも情もある、いい上司だ。
わたしもいつかあんな風に、
仕事ができるようになれたらと思う。

だから……切れないんだろうな。
施設長と関係を続けることで、
将来への不安や今の寂しさをごまかしてる。