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たびたび起こる従業員による「非常識写真」問題! 法的にどうなる?

アディーレ法律事務所の刈谷龍太弁護士飲食店などでアルバイトしている人が厨房などでいたずら写真を撮影し、それをネットにアップして炎上。そんな事件が続いています。こういうことを起こすと、法的にどんな処分を受ける可能性があるのでしょうか。アディーレ法律事務所の刈谷龍太弁護士にお話を伺いました。

■民事、刑事、両面での法的手段がある

――「飲食店でのいたずら写真」がネットにアップされて炎上、こういった事件が続発しています。従業員がこういう事件を起こした場合、お店側は、どういった法的手段を取ることができるのでしょうか?

刈谷弁護士:大きく分けて、
・民事上の請求
・刑事告訴
をすることが考えられます。

このうち、民事上の請求の内容は、「損害賠償」ということになるでしょう。刑事事件となる「刑事告訴」が行われた場合、「名誉毀損罪」や「各種業務妨害罪」が成立する可能性があります。

――なるほど。民事と刑事、その両面があるのですね。損害賠償はどのようになるのでしょうか。

刈谷弁護士:まず、そもそも企業が「従業員に損害賠償を請求することができるのか」を考えないといけません。なぜこのような話をするかというと、従業員が大きな利益を上げるとすべて企業のものになるのに、損害が出たときだけ従業員に損害賠償を請求できるのでは不公平だからです。

――確かにそうですね。

刈谷弁護士:従業員は企業の手足となって働くわけですから、手足が利益を上げれば「企業のもの」、手足が損害を発生させれば「企業の損害」となるのが普通の人の感覚にも合うところでしょう。

しかし、このような考え方は、従業員が企業の手足として機能している場合に限られます。問題になっているようなケース、「業務と無関係な行為」を故意に行った場合には、手足だという理屈は通用しないということです。

――業務であるかどうかが重要なのですね。

刈谷弁護士:はい。従業員が従業員として行った行為ではないので、損害賠償は制限されない可能性が高いといえます。

■企業側の責任はどう考えるか?

――企業側の責任というのもあるのでしょうか?

刈谷弁護士:企業には従業員を管理監督する責任もあります。

従業員は企業の手足ですから、企業は、普段から手足がミスを犯さず正常に機能するようにメンテナンスをしておかなければならず、メンテナンス不足で手足が異常動作をして損害を発生させた場合には、それは企業が負担すべきでしょう。

――その従業員が正社員かアルバイトか、といったことは影響しますか?

刈谷弁護士:問題を起こした従業員が、未成年者のアルバイトである場合、人件費を抑えるために、社会常識が欠けていたり、情動が未発達であるなどのデメリットがあることを織り込んで雇っている側面もあります。

たとえば、監視役がいないような状態で学生のアルバイト2人だけの状態にしておくなど、「シフト編成にも問題がある」と判断されたような場合には、責任が一部制限される可能性があります。

ただ、あくまでも企業は被害者ですから、このようなケースでは責任の制限がそこまで問題とされることはないでしょう。

■法的手段で量刑はどうなるか?

――上記のような法的手段が取られて、有罪となったら量刑はどうなるのでしょうか?

刈谷弁護士:刑事告訴で「名誉毀損罪」「業務妨害罪」が成立した場合、それぞれ法定刑が異なっています。

・名誉毀損罪

法定刑は、3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰金

・業務妨害罪

法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

このようになっています。

量刑を決定するには、それ以外に行為者の年齢や行為の態様、意図等の周辺事情を総合考慮することになります。

一概にはいえませんが、こうした悪質ではあるもののイタズラの域を出ないようなケースでは、よほど被害が甚大であり、社会的に制裁を加える必要のない限り、執行猶予が付くことが多いように思います。

■多くの場合、親にも迷惑がかかる!

――民事の「損害賠償」が成立するとどうなるでしょうか?

刈谷弁護士:たとえば、冷蔵庫で問題を起こした場合を考えてみましょう。民事上の損害賠償では、

・企業の社会的評価の低下
・冷蔵庫の洗浄、商品の交換費用
・売上の減少
・閉店による逸失利益等

などが考えられるところです。

これらの内容は事案ごとに異なるでしょうけれども、いずれもその賠償額はそれなりに高額になると考えられますし、その中でも店舗が閉店したケースがもっとも高額な賠償金になると思われます。

ただし、従業員個人には支払い能力がないことが多いので、こうしたケースでは、身元保証人として名前を書いた方(多くの場合は父親)が代わりに賠償することになるでしょう。親にも迷惑をかけることになってしまいますね。

いかがだったでしょうか。ちょっとしたイタズラだと思ってやっても、大ごとになってしまうようです。

⇒アディーレ法律事務所
http://www.adire.jp/

(高橋モータース@dcp)

 

※この記事は2013年09月07日に公開されたものです

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