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【日本初】東京大学の柏キャンパスになぜかすし屋がある件

『お魚倶楽部はま』の濱 弘泰さん。男気ある大将です。

『お魚倶楽部はま』の濱 弘泰さん。男気ある大将です。

東京大学の柏キャンパスは、本郷、駒場に続く東京大学第3の主要キャンパスです。千葉県柏市柏の葉にある、この広大な敷地には最先端の研究棟が並んでおり、大気海洋研究所もここにあります。筆者は取材でこの大気海洋研究所を再三訪問しているのですが……あるとき、ふと気付きました。「ん!? なぜすし屋があるの?」


■日本初の大学内すし屋です!

おすし屋さんがある大学キャンパスというのも珍しい! というわけで取材しました。柏の葉キャンパス内のおすし屋さん『お魚倶楽部はま』の濱 弘泰さんにお話を伺いました。

――大学のキャンパスにおすし屋さんがあるのは珍しいと思うんですが。

濱さん そうそう。日本初ですよ(笑)。

――日本初なんですね! なぜ大学内にお店を出そうと思われたのですか?

濱さん それはね、公募があったんですよ。もともと、東京大学大気海洋研究所が、ここに移転する前に中野にあったの。うちもそのときには中野で、ご近所ですし屋をやってたんですよね。

――なるほど。移転前から、大気海洋研究所とはご縁があったんですね。

濱さん そうなのよ。先生方とか学生さんもよく来てくれてたし。で、「大気海洋研究所が今度移転する」ってことになってさ。冗談で「一緒に行くよ」なんて言ってたんだけどね(笑)。そしたら、飲食店の入れるスペースがあるってわけ。入るお店が公募されてたから手を挙げたんですよ。

――中野から柏ですと、ずいぶん遠いですが……。

濱さん 思い切りだね(笑)。

『東京大学大気海洋研究所 50年史1962-2012』には、以下のように記述されています(P.43)。

(前略)エントランスの脇に準備したそのスペースにはトイレも用意してあり、飲食店が入ることも可能なように設計してあった。

2010年度になると、ここに飲食店を導入するための公募手続きが進み、審査の結果、中野時代からなじみのあった寿司店の「はま」が「お魚倶楽部はま」として7月に開店することになった。

「はま」は同月に開催された「東京大学大気海洋研究所設立・新研究棟竣工披露式典」でその腕をふるった。

その後、所員の昼食、あるいは客人を交えての夕刻の懇親などに、大いに活用されている。

柏キャンパス内の他部局の人たちの来店や出前注文も増えてきており、キャンパス全体の福利厚生にも貢献しつつある。

さらに最近では近隣の市民の利用もさかんになってきており、新棟ははからずも地域と大学との交流の場としての機能も発揮することとなった。

「安くておいしい!」のが「はま」

――移転で、中野(東京)から柏の葉(千葉県)と、築地市場からも遠くなってしまったのですが、ネタの仕入れは大変ではないのですか?

濱さん いや、うちはもともと産直だから。魚が揚がった産地から直接送ってもらってるんですよ。今では珍しくはないけど、うちは20年も前からそのスタイルなの。

――どういったところからネタを入れているんですか?

濱さん 岩手県の宮古、島根県の和江(わえ)、静岡の沼津、八丈島などですね。いいのが入ったらすぐ連絡もらって、送ってもらうの。

――それはおいしそうですね。

濱さん おいしいですよ(笑)。

――ただ学生さんの懐を考えるとあんまり高価にはできないですよね。

濱さん そこはね、やっぱり工夫です。最高級でなくてもいいもの、おいしいものはたくさんあるんですよ。例えば、カニで脚折れのものとかね。見栄えはよくなくて高値はつかなくても、中身は同じでおいしいんですよ。

そういったものを安価に仕入れるとかね。ほかにも高級魚じゃなくても地の魚でおいしいものもたくさんある。できるだけ、本当においしい、いいものを食べてほしいと思ってやっていますよ。

――ランチのお値段も東京都内のおすし屋さんから比べたらずいぶん安価ですよね。

濱さん 努力のたまものかな(笑)。ワンコイン丼といって500円で新鮮な魚を食べられる丼をやっているんですけど、これに使う魚もいろいろ吟味しています。昨日は生ビンチョウマグロを刺身にしたし。明日はアジのいいのが入ってくるよ。

――聞いてるだけでおなかがすきますね。

取材日・5月14日(火)に看板に記載されたメニュー

にぎり(コーヒー付) 780円
十二カンにぎり 980円
サーモン・イクラ丼 680円
ネギトロ丼 680円
ばらちらし 680円
海鮮ちらし(コーヒー付) 780円
あなご丼 780円
鉄火丼 780円
レディースセット 680円
 バラチラシ・百円メニュー
 アイスクリーム又はコーヒー
日替わり定食 780円
お刺身定食 780円
ワンコイン丼 500円
*全品みそ汁付き
シャリ大盛り 百円
ネタ大盛り 二百円
百円ビールもあるよ!!

――中野にあったお店はもうないんですか?

濱さん そこはもう閉めちゃったから完全移転だね。ただし中野でもう1軒、回転ずしのお店はやってますよ。

*……回転ずしのお店『お魚倶楽部すし丸』は中野区弥生町にあります。

大学内にあることの楽しさ!

――大学の中で営業していることの面白さってありますか?

濱さん 楽しいですよ。学生さんや本当に偉い先生やらが来てくれて。なにせ日本の最高学府だからね(笑)。ここは外国からの留学生の人も多いから、外国人も多いですよ。「中途半端なことはしない」が信条です。

お客さんみんなに本当に「おいしい」って言ってほしい。先生方は「魚の生態のプロ」かもしれないけど、こっちは「作るプロ」だから。

――メニューを拝見すると、あまり見ない魚もありますね。

濱さん そう! でもね、みんなが知らないだけで、そういう魚がおいしいのよ。例えば「コショウダイ刺」「キントキ刺」「赤イサキ刺」なんて、あんまり食べたことないでしょう?

――はい。

濱さん コショウダイは沼津のものだけど、そりゃあうまいから。こういうおいしい魚をみんなに食べてほしいんですよ。

大将がシュモクザメをさばく!

――大学ならではの出来事なんかはありますか?

濱さん オープンキャンパスのときにはイベントで面白いことをやるんですよ。ぜひ一度いらっしゃい。昨年(2012年)はシュモクザメをさばきましたよ。1.5mぐらいもある大きなやつ。

――シュモクザメって頭がトンカチみたいになってるヤツですよね。

濱さん そうそう(笑)。

――あれって食べられるんですか?

濱さん 食べられるよ。煮付けにするとおいしいです。網から上げたらすぐに冷凍しちゃうんだよ。放っておくとにおいが出てきちゃう。すぐに冷凍したのを解凍してさばくんです。

――それは見てみたかったですね。


濱さんはいかにも職人という感じの、「にかっ」と、いい笑顔が印象的な大将でした。こんなすてきな大将のいるすし屋がある東京大学柏キャンパス。ちょっとうらやましいですね。

●『お魚倶楽部はま』
〒227-0882 千葉県柏市柏の葉5-1-5
東京大学 大気海洋研究所 内

(高橋モータース@dcp)

※この記事は2013年05月24日に公開されたものです

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